2023 Fiscal Year Research-status Report
Study on the toxin selectivity of marine pufferfish and freshwater pufferfish, and the related molecular mechanism
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23KJ1761
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
朱 鴻辰 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | フグ毒 / 麻痺性貝毒 / 投与試験 / 浸透圧 / トリブチルスズ結合タンパク質(TBT-bp) / TBT-bp2ノックアウトメダカ / 曝露試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はまず、課題1では海水と汽水に馴致したオキナワフグ無毒養殖個体を用いてテトロドトキシン(TTX)/サキシトキシン(STX) 投与実験を行い、異なる浸透圧下における本種のTTX/STX蓄積様式について検討した。試験魚40個体を20個体ずつ「海水群」と「汽水群」に分け、TTX/STX混合毒(用量はともに7.5 nmol/匹)を直腸内に投与後、一定の時間経過時に各区5個体ずつ取り上げて、部位別にTTX/STX含量を定量した。試験魚の各部位に移行・蓄積した毒量は、海水群・汽水群ともに総じてTTXよりSTXの方が多かった。海水群と汽水群を比較すると、①汽水群の方が腸でのTTX減少が速く、STX保持量が多い、②汽水群の方が肝臓に一過的に移行するSTX量が多く、その減衰に伴って汽水群のみ筋肉のSTX量が一時的に増加する、などの差異が認められた。したがって、オキナワフグは潜在的にはTTXよりSTXsに対する蓄積能の方が高く、特に低浸透圧下ではSTXsをより蓄積しやすいものと推察された。 また、課題2ではトリブチルスズ結合タンパク質(TBT-bp2)の魚類体内におけるTTX/STXに対する輸送・蓄積・排泄機構解明のため、TBT-bp2ノックアウトメダカを用い、TBT-bp2の有る無しがTTXに曝露されたメダカに及ぼす影響を調べた。ワイルドタイプメダカとTBT-bp2ノックアウトメダカは36尾ずつを用い、給餌なしの状態で各濃度の水槽に入れて、実験を始めた。実験が終わった後、生き残りのメダカを使って行動観察を行った。さらに、画像解析ソフトでメダカの平均遊泳速度などのパラメーターが算出された。今回はTBT-bp2遺伝子の有る無しがTTXに曝露されたメダカの行動に及ぼす影響が少し見られたが、P = 0.08 (t-test)となった。そのため、今後はSTXを用い、同様に実験を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はフグにおけるTTXとSTXsの選択的取り込み・蓄積に関わる分子機構解明を目指し、令和5年度では海水と汽水に馴致したオキナワフグ無毒養殖個体を用いてTTX/STX投与実験を行い、異なる浸透圧下における本種のTTX/STX蓄積様式について調べたことにより、オキナワフグは潜在的にはTTXよりSTXsに対する蓄積能の方が高く、特に低浸透圧下ではSTXsをより蓄積しやすいものと推察された。また、TBT-bp2ノックアウトメダカを用い、TBT-bp2遺伝子の有る無しがTTXに曝露されたメダカに及ぼす影響を調べた。今回の結果は、将来的にPSTBP/TBT-bpアイソフォーム群のTTX/STXs結合性を明らかにするための道を開くものである。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、各種フグの毒性や遺伝子に関する情報を収集のうえ、既得情報を併せてTTX/STXs分布マップを作成し、これをPSTBP/TBT-bpアイソフォーム遺伝子の分布/発現プロファイルと照合する。一方、オキナワフグおよび本種とは異なる毒選択性をもつ種で組織切片培養実験/トランスクリプトーム解析を行い、TTX/STXsの選択的取り込み・蓄積に関わる候補遺伝子を探索する。他方、前年度に確立した実験系を用いて、トラフグなどから得られたPSTBP/TBT-bpアイソフォーム群のTTX/STXs結合性を明らかにする。以上で得られた結果を総合的に解析し、フグの毒吸収・輸送・蓄積に関わる分子機構の全容、あるいはその分子進化について包括的な考察を進める。
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[Presentation] カンボジア産淡水フグPao属2種の毒性プロファイル2023
Author(s)
竹岡 順史, 朱 鴻辰, 和田 実, 井口 恵一朗, 宇都宮 譲, 大庭 伸也, SOKRA In, NGY Laymithuna, 土井 啓行, 山田 明徳, 高谷 智裕, 荒川 修
Organizer
令和5年度日本水産学会秋季大会