2023 Fiscal Year Research-status Report
臨界構造を持つ消散-分散型偏微分方程式の解の解析性と大域挙動の解明
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23KJ1765
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
佐藤 拓也 熊本大学, 先端科学研究部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | 非線形シュレディンガー方程式 / 臨界指数 / 解析性 / 減衰評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
非線形消散効果(非線形オーム効果)を含む非線形シュレディンガー方程式に対して、解の質量が減衰する特別な非線形次数(臨界指数)のもと、実解析的なクラスにおける解の最適な質量減衰オーダーを導いた。臨界指数により解の挙動は自由解に漸近するものと非線形効果による位相修正が入るものとに分類されるが、本研究では特に臨界指数の状況で解の長時間挙動を考えている。先行研究により滑らかな解ほどその減衰オーダーは早くなることが知られているが、本研究は無限階微分可能な場合の解の長時間挙動に対応している。証明には方程式の対称性に基づいた擬等角変換を用いることで、従来得られていなかった下からの減衰評価を示した。この結果はAnn. Henri Poincar'e Vol.25, No.2, 1693-1709 (2023) に掲載されている。 北直泰氏とJ.Gerelmaa氏(熊本大)とともに消散型非線形シュレディンガー方程式に対する解の長時間挙動を初期値のサイズの制限なしに導いた。証明では方程式に基づくエネルギー評価式から、解の特異性が消失していることを確認し、エネルギー有界となる先験評価をもって解の長時間挙動を導いた。この結果はJournal of Mathematical Sciences Vol.279, 814-823 (2024)に掲載されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
消散型非線形シュレディンガー方程式の解の最適な質量減衰オーダーを解析的なクラスの枠組みで導くなど、当初の研究目標に沿った成果を得ている。研究対象としている非線形シュレディンガー方程式について、方程式の対称性に着目することで解の高階導函数に対する一様有界性を導くことができた。解の長時間挙動が複雑になる特別な非線次数の下では、非線形項を摂動として扱うために初期値にサイズの制限を仮定していた。しかし消散効果を考慮することでサイズの制限が取れつつあり、部分的な解決ではあるが、大きな初期値に対する解の長時間の挙動がわかりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は擬等角変換や可積分性など方程式に基づいた対称性を利用し、引き続き消散型非線形シュレディンガー方程式の解に対する高階導函数の制御と、解の実解析性による冪級数展開を援用した時間大域挙動の精密化を目指す。 さらに得られた解析手法をより一般の消散-分散型偏微分方程式や連立形の問題、初期値境界値問題、磁場付きの問題、離散型の問題に適用させる。また、常流体モデルである圧縮性流体方程式に対して、領域の形と消散効果との関係を探りながら、系に働く消散のメカニズムを対称性や幾何学的構造により特徴づける。その上で量子流体と常流体との混合2流体モデルに対する流れの挙動を数学的に理解する。
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Causes of Carryover |
前年度に海外の研究集会に出席する予定だったが、諸事情によりキャンセルになってしまった。今年度は2024年度使用額を用いて、海外の研究集会に出席し、自身の研究目標遂行のために海外研究者とコンタクトを取る予定である。
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