2023 Fiscal Year Research-status Report
Basic research to elucidate the mechanism of change in movement strategy resulting from proprioceptive dysfunction
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23KJ1789
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Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
川端 空 埼玉県立大学, 保健医療福祉学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | 細胞老化 / 感覚神経 / 脊髄後根神経節 / バイオインフォマティクス / コレステロール代謝 / CDKN2A / Srebf1 / Ctss |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢に伴う固有感覚機能の低下は、感覚受容器や感覚神経軸索の形態学的な変性により説明されてきたが、これらの変性を引き起こす詳細な分子メカニズムは明らかではなかった。そこで、まず初めに、加齢に伴い細胞老化をきたした細胞(=老化細胞)が増加することに着目し、感覚神経を構成する脊髄後根神経節(以下、DRG)の神経細胞における細胞老化メカニズムを探索することにした。具体的には、公共の網羅的遺伝子発現解析データを使用したネットワーク医学理論に基づくバイオインフォマティクス解析により探索を行った。 解析の結果、DRG神経細胞における細胞老化は、がん抑制遺伝子の一つであるCDKN2Aにより誘導されることを明らかとした。また、CDKN2Aの発現が上昇する背景には、加齢に伴う感覚神経軸索のコレステロール代謝・生合成機能の低下に対して、代償的にコレステロール代謝に関わる転写因子Srebf1の発現を上昇させることを明らかとした。さらに、加齢に伴う感覚神経軸索のコレステロール代謝・生合成機能の低下は、細胞増殖に関わるがん関連遺伝子Mapk3の抑制により誘導されることも明らかとした。この解析では、DRG神経細胞の細胞老化メカニズムだけではなく、細胞老化をきたしたDRG神経細胞の表現型(老化表現型)も明らかにした。近年、細胞老化をきたした老化細胞は、炎症性サイトカインやケモカイン、細胞外マトリクス分解酵素などを含む老化関連分泌表現型(Senescence-associated secretory phenotype: SASP)を分泌することで組織の慢性炎症を引き越すことがわかっている。しかし、DRG神経細胞の老化表現型では、プロテアーゼの一種であるCtssによりB細胞をはじめとした抗限提示細胞を活性化させることで、周囲組織の炎症環境維持に関わることを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
加齢に伴う固有感覚機能の低下は、固有感覚を司る感覚神経の加齢変性に由来する。本年度では、末梢の感覚神経組織の加齢変性に対し、細胞老化という切り口から検証を開始した。本年度までに、末梢感覚神経組織を構成する脊髄後根神経節(Dorsal root ganglia; DRG)神経細胞の細胞老化引き起こす分子メカニズムをバイオインフォマティクス解析より推察することができた。また、次年度に予定している、バイオインフォマティクス解析より推察された分子メカニズムの、in vivoおよびin vitroによる検証に使用する動物モデルおよび細胞培養手法に関して一部実験を進めることができた。当初予定では、一年度半をかけて、動物モデルや培養手法の確立を目指していたが、本年度では、当初予定に加えてバイオインフォマティクス解析を用いた細胞老化メカニズムの推察まで終えることができた。そのため、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度バイオインフォマティクス解析より推察された脊髄後根神経節(Dorsal root ganglia; DRG)神経細胞の細胞老化メカニズムに関して、in vivoおよびin vitroにおける検証を進めていく。具体的には、細胞老化誘導因子CDKN2Aの発現増加を誘導するコレステロール代謝に関わる転写因子Srebf1の活性化が、末梢感覚神経軸索におけるメバロン酸経路の不活性化に由来するかどうかを検証する。In vivoでは、メバロン酸経路を直接阻害することができるスタチン製剤を末梢感覚神経軸軸索である坐骨神経に直接投与することで、DRG神経細胞において細胞老化が誘導されるか検証する。また、In vitroでは、マイクロ流体デバイスを用いたDRG神経細胞と筋管細胞の共培養手法により人工の筋紡錘を作成する。そして、作成した人工筋紡錘を用いて、軸索にのみスタチン製剤を投与する条件を設定することで、細胞老化プロセスが開始するかどうかを検証する。また、DRG神経細胞の細胞老化が、人工筋紡錘の形態の変性を導くかどうかを検証する。 今後の課題は、末梢感覚組織で起きる老化プロセスが、脳や脊髄の中枢神経組織における固有感覚情報処理にどのような影響を及ぼすかを検証することである。申請研究では、中神経組織までの影響を明らかとすることを試みていたが、現状作成した人工筋紡錘は、末梢感覚神経組織を模倣したものであり、中枢への影響を調査するには新たな培養モデルの作成や動物モデルにおける新たな解析手法を確立する必要がある。
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Causes of Carryover |
前年度は、主にバイオインフォマティクス解析を用いた細胞老化メカニズムの探索を行った。解析に使用する物品は、解析機器(PC)にとどまった。そのため、本来使用する予定であった人工筋紡錘作成に用いる培養関連物品や生化学・組織学解析関連物品に使用する経費が少なく済み、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、人工筋紡錘を作成するための培養関連物品の購入や生化学・組織学解析関連物品の購入に補填する。また、バイオインフォマティクス解析の結果に関して、Society for Neuroscienceが主催するNeurosciecne 2024での発表を予定しており、学会参加における渡航費および宿泊費にも使用する予定である。
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