2023 Fiscal Year Research-status Report
A Social Historical Study on the Sick and Medical Care in Japanese modern city, Osaka
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23KJ1839
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
井ノ元 ほのか 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | 医療の社会化 / 病者 / 方面委員 / 『大阪府方面委員事業年報』 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の夏には、近代大阪の「貧民窟」を含む地域である旧豊崎村について、住民の疾病構造を労働・居住などの生活状況と絡めつつ分析したうえで、彼・彼女らに施された救療事業の実態を明らかにした論文を学術誌に寄稿し、秋に掲載された。これは、特定地域住民の健康状態の推移を、救療との関係のなかで把握するとともに、既に研究成果をまとめた日本橋地域との比較も兼ねており、都市のなかでも地域ごとに異なる疾病構造や救療環境が現れてくることを指摘したものである。 また、専門分野における最新の研究成果について、自身の関心に惹きつけつつその成果の意義を整理し、さらに残された課題の一部を特別研究員がどのように解決し得るか展望を述べた論文も秋に掲載された。 さらに、冬には都市問題をテーマとする国際シンポジウムに参加して、国内外の歴史学・社会学・映像学などの研究者に向けて口頭発表を行った。1920年代から30年代における都市大阪の貧困病者の生活実態や、救療を行うための制度や機関とこれらの推移について、いくつかの方面委員の救療活動事例の紹介を交えて発表した。これは、都市下層社会の病者と救療の具体相を解明するとともに、方面委員制度の歴史的意義を実態に即して検討する意味も持っている。 以上のような特別研究員として当初から計画していた研究活動のほか、当該年度の夏には、感染症と人間社会の関係について学際的に考究するプログラムに発表者として応募し、秋に行われたセミナーに参加する資格を得て口頭発表を行った。歴史学や文化人類学の研究者に向けて、近代都市大阪の貧困家庭における感染症罹患の事例をいくつか紹介したうえで、主に感染と看病の観点から、感染症罹患が本人だけではなく家族全体の問題であったことを論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、①都市下層社会における病者と救療の実態を解明すること、②病者を取り巻く医療環境を多角的に分析すること、③近代大阪における実質的な「医療の社会化」の歴史像を提示すること、以上三点を課題としている。【研究実績の概要】に記した成果は、主に課題①に着手した結果であり、この進捗状況は当初の計画通りに進展していると言える。これらの成果は、博士論文の序論と三章分に充てる予定である。また、当初は当該年度のうちに課題②の一部の成果も出す計画だったが、こちらはやや進捗が遅れており、現在成果をまとめている途中である。なお、課題③については、令和6年度に着手する予定である。したがって、総合的にみて、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本研究の二つ目の課題である、病者を取り巻く医療環境の多角的分析をさらに進めたうえで、研究成果を令和6年夏までにまとめる。これは、博士論文の二章分に相当する。次に、三つ目の課題である、「医療の社会化」の歴史像の提示に着手し、博士論文の一章分として成果をまとめる。 以上のような研究計画に即した研究遂行に加えて、近代大阪の感染症罹患者の具体相を人間社会との関係も踏まえて解明する補論を、新たに博士論文に組み込もうと構想している。こうした変更が生じた理由は、【研究実績の概要】に記した当該年度秋の口頭発表を経て、感染症の罹患は、通常の疾病罹患とは別の問題を含むものとして考える必要があると再認識したためである。
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Causes of Carryover |
当該年度の3月上旬に、研究用の資料集を物品費を使用して購入する予定だったが、予定していた時期に体調を崩してしまい、発注が間に合わなかったため。次年度使用額は、次年度6月末を目途に研究用の資料集および備品の購入を物品費にて、また研究調査の際に発生する電車・バス料金を旅費にて使用する計画である。
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