2023 Fiscal Year Research-status Report
災害経験の文化資源化と相伝の時空間的展開──災害をめぐる人-自然関係の「物語化」
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23KJ1847
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
松木 駿也 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | 災害文化 / ジオパーク / インタープリテーション / 防災学習 / 流域 / インターローカリティ / 歴史的砂防施設 / 人文地理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は自然災害の経験や対策が文化資源としての世代・地域を超えて共有・活用される過程について、以下の3つの研究課題を遂行した。 1つ目は島原半島ジオパークにおいて被災地の語り部/ガイドが災害経験を自身の語りにどのように組み込んでいるかの検討である。既に収集済みの情報をもとに追加調査(6月)を実施した。これらの結果により、ジオパークガイドが科学的知識の説明と自身の災害経験とを組み合わせることによって語りを構成していることを検討し、所属研究科の紀要『人文研究』に投稿した。 2つ目は高等学校における防災・減災フィールドツアーの実施である。長野県の高校生を対象に千曲川・信濃川流域の複数の防災インフラを巡るツアー(7~8月)を実施した。生徒は自身らの暮らす地域だけでなく流域内他地域の防災・減災の取り組みを学び、その後も半年にわたって調べ学習や追加インタビューなどを実施し、日本地理学会高校生ポスターセッション(3月)において自身らの学びの成果を発表した。この一連の活動を指導・記録したうえで生徒の成果物や感想の分析を行い、その途中成果は人文地理学会(11月)においてポスターにて発表した。 3つ目は歴史的砂防インフラの文化財化過程についての検討である。関西地区のいくつかの砂防インフラ管理担当者へのインタビューを実施し施設の維持管理について情報収集した(6月、9月)。また、長野県内の砂防インフラの維持管理や保全・活用について、関係者への聞取り調査、現場の保全活用状況の確認、長野県砂防課や砂防図書館での資料収集などを遂行した(10月、2月、3月)。これらの結果を文化人類学や科学技術社会論におけるインフラの「可視化」という議論を参考にしながら分析・考察し、この成果を日本地理学会において口頭発表した(3月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は1つ目及び3つ目の研究に関するフィールドワークや2つ目の研究に関する授業実践を精力的に実施することができ、その成果を論文や学会報告の形で複数件発表することができた。これらの活動により、次年度に予定している論文投稿へ向けた情報・資料収集が大幅に進んだ。論文執筆における理論的検討のための先行研究の渉猟についてはその途上にあり次年度に期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度取り組んだ研究のうち、2つ目の防災教育、3つ目の砂防インフラの研究について論文化を進め、学術雑誌に投稿する。特に、先行研究・理論研究の渉猟・整理をなお一層進展させることで、これらの研究内容を深化させる。
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Causes of Carryover |
調査旅費について宿泊費等の部分で抑えることができた。この次年度使用額については論文投稿へ向けた先行研究渉猟のための書籍購入費(物品費)に充てる。
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