2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23KJ2008
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
宮島 舜 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | 想像力 / アラビア哲学 / 認識論 / スフラワルディー / シャフラズーリー / アンリ・コルバン |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画では今年度は下記のことを行なう予定であった。国内学会における二つの口頭発表、国内学会誌への論文の投稿、国際学会誌における論文発表、そしてトルコでの写本調査である。これらそれぞれについて基本的には履行ができた。学会での口頭発表については、「イブン=スィーナー哲学の批判と継承」と「照明学派における想像的境域とその存在論化とについて」とを発表した。前者では初期照明学派、ことにシャムスッディーン・シャフラズーリーにおける想像力の存在論的アプローチについて同学派の祖シハーフッディーン・スフラワルディーとの対比をつうじて論じ、後者ではポスト古典期、ことにアブルバラカート・バグダーディーの認識論について知性認識をめぐる彼以前の古典哲学の論争と文脈づけるかたちで論じた。前者の発表に関連する論文「初期照明学派における想像力の存在論的構造化の試み:シャムスッディーン・シャフラズーリー『主の真理の学知にかんする新樹の論攷』第五論攷・第二部・第 11 章翻訳・訳註」を投稿した(採録決定済)。ここでは主にシャフラズーリーの想像力概念をめぐる重要テクスト(『新樹の論攷』の一部)を翻訳しそれを訳註をくわえた。また、こうしたイスラーム哲学の想像力の概念を現代哲学の文脈で展開させた仏国の哲学者アンリ・コルバンの想像力論にかんする論文も執筆し国際誌上で発表した(“Henry Corbin and D.T. Suzuki: On Theophanic Imagination as Imaginatio vera”)。トルコへの写本調査も12月に赴いた。イスタンブルのスレイマニイェ・モスク附属図書館にて古典期神学と初期照明学派の諸テクストを調査するとともに、現地での資料蒐集も行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
あらかじめ計画していた研究・発表を上述のとおり履行しえたのに加えて、学会からの依頼に応じて二本の書評を執筆した(うち一本は発表済)。執筆したのは、一方はイスラーム学、他方はポスト古典期哲学にかんする書籍の書評であり、両者とも報告者自身の研究に直接活かしうる機会となった。こうした学術研究活動に加えて今年度は詩作品の共訳を発表(出版)したが、こちらについても詩的想像力について考察する私の研究課題に資するところが多かった。 申請時に樹てた計画をすべて履行したうえで、それに加えて研究課題にかかわる調査研究ならびに発表(書評と訳書)を行なう機会にも恵まれたこともあり、今年度の研究については「研究計画を大いに上回る研究の進展があった」と評価しうるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
照明学派の想像力にかんする仕事を複数発表しえたが、逍遙学派的文脈におけるその分析は次年度以降の課題として残っている。今後はイブン・シーナーの認識論を攻究するとともに、ポスト古典期におけるその認識論への批判と新たな認識論の特徴とを分析する仕事を行ない、それらを論文として上梓する。また、詩的想像力にかんしてもいまだ研究成果を発表できてはいないため、これを学会にて口頭発表する計画を立てている。また、国際的な発表をよりいっそう積極的に行なうことを予定している。
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Causes of Carryover |
特別研究員奨励費(雇用PD分)学術条件整備の次年度使用分。
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