2023 Fiscal Year Research-status Report
S界面偏析量と界面強度によるNi基単結晶超合金の耐酸化性評価
Project/Area Number |
23KJ2024
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田畑 千尋 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | Ni基超合金 / 不純物 / 耐酸化性 / 界面強度 / ナノインデンテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は計画にしていたナノインデンテーションを用いた,Al2O3酸化被膜-母材界面の強度測定手法について検討を行った.Ni基単結晶超合金の酸化被膜と母材界面に偏析する不純物Sが結合力をどの程度低下させるか定量的に評価するため,ナノインデンテーションにて界面部分を直接評価する手法を提案した.本研究では始めに2元系合金のNi-9.8 wt.% Al合金を使用した.合金組成が同じだが,S界面偏析量が多い試料と少ない試料をそれぞれ用意し,17回ずつ界面付近にて試験を行った.各試験において荷重―変位線図を取得し,試験後の試料をSEMにて観察した.全ての試験において,亀裂進展時と思われる際に荷重―変位線図上にpop-inという現象が確認された.この現象が初めて確認される際の荷重量Pc1を比較するため,ワイブル分布図を作成し,統計的な比較を行った.これにより,S界面偏析量が抑制された試料はそうでない試料に比べ,界面に亀裂を進展させるには650 μN程度大きい荷重が必要であることが判明した.これにより,S界面偏析量が大きいほど,界面強度が低下することを定量的に証明した. 本内容はまず2023年8月に北海道科学大学にて日本金属学会No. 82研究会「微小領域の力学特性評価とマルチスケールモデリング2023(第4分科共催)」にてポスター発表を行い,微小力学専門の先生方と議論した.また,2024年3月には東北大学にて開催された,「R054カーボンニュートラル実現のための耐熱材料委員会」で耐熱材料の権威ある先生方の前で口頭発表を行った.加えて,超合金分野において権威ある,4年に一度のみ開催されるSuperalloys 2024にて,査読付きかつ筆頭のプロシーディングスが受理された.なお,本学会は9月に開催予定であり,アメリカのピッツバーグにて発表予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
博士課程2年目ではS界面偏析量と酸化被膜の密着性および界面強度への影響について,ナノインデンテーションによる定量的な強度測定を行うことで明らかにした.1年目に予定していたS界面偏析量の異なる試料において,偏析量の差による相対的な大小関係を明らかにした.本内用は,超合金の最も権威ある学会にて,査読付き・筆頭プロシーディングスが受理されており,高い評価を受けつつ専門的な指摘も多く受けている.そのため,本手法の妥当性の検討や,実用合金における界面強度評価なども行う必要性があることが,研究を進めていく中で明らかになった.予定では他の合金元素の影響を主に明らかにしていくはずであったが,ナノインデンテーション試験を用いた界面強度評価方法の確立が優先事項であることが明らかになった.そのため,実用合金での評価を行いつつ,試験方法の妥当性もFEM解析などを用いて証明していく予定である.なお,予定していた3元系合金での評価も全く行っていないわけではなく,繰り返し酸化試験や定性的な耐酸化性の傾向は測定・確認済みである. 加えて,上記に挙げたナノインデンテーション試験の内容以外にも成果は挙げている.DC2課題開始前に開始した溶体化熱処理温度の違いによる合金の耐酸化性へ与える影響の研究においては,査読付き筆頭論文1報がMetallurgical and Materials Transaction Aにて掲載されている.また,国際学会IGTC2023で口頭発表を行い,研究会においても複数回発表を行っている.他にも共著論文2報(日本語,英語それぞれ1報ずつ)掲載されており,1年間の成果としては十分残せていると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
現在,横浜国立大学の尾崎伸吾先生と共同で有限要素法(FEM)を用いたナノインデンテーション法による界面強度測定時の応力分布解析を行っている.上記のナノインデンテーションを用いた評価方法において,界面亀裂進展時をin-situにて観測することはできていない.また,応力ではなくpop-in生成時の荷重にて比較をおこなっているため,亀裂進展メカニズムが不透明である.そのため,ナノインデンテーションを用いてNi-Al合金の強度特性を実測し,有限要素モデルに組み込むことで,実物に近しいモデルを作成することで,本試験方法の妥当性を検討可能であると考えた.応力分布および荷重―変位線図を取得し,実測値と解析値を比較することで妥当性の検討を行う予定である.加えて,実用合金かつS界面偏析量を測定済みであるNi基単結晶合金TMS-238においてもナノインデンテーション試験を行うことで,多元系合金への応用および手法の妥当性に関する評価を行う予定である.そして,前年度Ni-Al 2元系合金にて行った同様の試験に加え,FEMでの解析も実用合金にて同様の解析を行う予定である.なおこれらの研究について,共同研究者らとともに論文を執筆予定である.一年目にて酸化試験などを行った3元系合金の特性などにおいても,一部ナノインデンテーション試験やFEM解析を行うことで,合金元素の影響についても検討したとも考えている. なお,博士課程最終学年となるため,博士学位論文の執筆も進めており,8月末には審査に入る予定である.また,9月には上記のナノインデンテーション試験方法に関する内容は,アメリカのピッツバーグにて開催予定のSuperalloys2024にて発表予定である.
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