2023 Fiscal Year Research-status Report
脳卒中片麻痺者の異常歩行に対する下肢用筋電・姿勢制御電気刺激装置の開発と評価
Project/Area Number |
23KJ2046
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
金賀 駿 早稲田大学, 人間科学学術院, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
|
Keywords | 姿勢推定 / 大腿傾斜角 / 下腿傾斜角 / 慣性センサ / IMU / Madgwickフィルタ |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度前半は装置や回路の作製に取り組み,4chの筋電計測,2chの電気刺激,IMU(慣性計測ユニット)による2chの加速度・角速度計測を実装した.これにより,筋活動や筋緊張異常のモニタリング,電気刺激による筋収縮,姿勢情報の取得が可能となった.2023年度後半には,2chのIMUによって計測される加速度と角速度から姿勢角(大腿傾斜角,下腿傾斜角,膝関節角度)を推定することに取り組んだ.姿勢推定手法としてMadgwickフィルタを使用し,歩行時の姿勢角を推定した.姿勢推定ではカルマンフィルタが主流であるが,Madgwickフィルタは計算負荷が小さく,マイコンでのリアルタイム処理に適していると考えため,Madgwickフィルタを採用した.そして,本装置で推定した姿勢角データを,モーションキャプチャ(MAC3D)で計測した姿勢角データと比較することで,Madgwickフィルタの姿勢推定精度について検討した.姿勢角は矢状面(進行方向に並行な面)と前額面(進行方向に垂直な面)のみを対象とし,推定精度はMAC3Dを比較データとしたときのRMSE(二乗平均平方根誤差)と相関係数で評価した.その結果,矢状面での姿勢推定精度は高く,概ねMAC3Dの姿勢角波形と一致しており,カルマンフィルタを用いた先行研究に匹敵する推定精度であることが明らかとなった.ただし,正常歩行時の前額面姿勢角の推定誤差が大きいことが示され,センサ装着位置のずれが影響している可能性がある.また,歩行タイプによる推定精度の違いを検討するため,正常歩行と脳卒中片麻痺者特有のぶん回し歩行(健常成人が模した歩行)時の姿勢角推定精度を比較した.その結果,動作範囲を考慮すると,ぶん回し歩行時は正常歩行に比べて推定精度が低い傾向にあった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では関節角度や歩行フェーズ,筋電により大腿部・下腿部の電気刺激の強度やタイミングを制御し,痙縮を抑制しながらの歩行を可能とする電気刺激装置の開発を目的している.2023年度は,IMU(慣性センサユニット)で加速度と角速度を計測し,姿勢角や関節角度を推定する段階であり,2023年度の終盤には歩行フェーズの推定に取り組むという計画であった.2023年度はMadgwickフィルタによる正常歩行・異常歩行時の姿勢推定まで実施できたため,計画していた研究の9割程度の進捗状況である.
|
Strategy for Future Research Activity |
センサ装着位置のずれや接地時の衝撃等の影響により,正常歩行時の前額面姿勢角の誤差が大きくなることが示唆された.これはIMUによる姿勢角推定において重要な課題であり,今後の研究にも影響すると考えられるため,2024年度に予定していた歩行フェーズ推定の前に,センサの最適な装着位置やキャリブレーション方法を検討していく予定である.また,2024年度は加速度や角速度による歩行フェーズの推定をメインに行う計画であり,マイコンにニューラルネットワークを組み込み,ルールベースでの歩行フェーズ推定よりも様々な歩行に対応できるような汎用性の高いアルゴリズムの構築を目指す.
|
Causes of Carryover |
おおむね順調に研究が進んでいるが,若干の遅れが生じているため,計画当初必要となると想定していた電子部品代や基板発注費用が次年度に持ち越しとなったことが理由である.さらに次年度では,センサ装着位置を検討する必要性が新たに出てきたため,次年度使用額で部品等を購入してまかなう計画である.
|