2023 Fiscal Year Research-status Report
オーロラトモグラフィとEISCAT_3Dレーダーによる電離圏電流3次元構造の解明
Project/Area Number |
23KJ2145
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
吹澤 瑞貴 国立極地研究所, 先端研究推進系 宙空圏研究グループ, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | 電離圏電気伝導度 / 電離圏電場 / 電離圏電流 / コンピュータトモグラフィ / EISCAT_3D / オーロラ / ベイズ推定 / イオン速度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では最終的にオーロラ発光に伴って電離圏で駆動される電流系の3次元構造を再構成することを目的としている。電離圏電流の3次元分布を求めるためには、電離圏における電気伝導度と電場の3次元分布をそれぞれ求めることが必要不可欠である。そこで、本年度は電気伝導度の3次元分布の再構成手法の確立と電場の3次元分布の推定手法の検討を行った。 まず電離圏電気伝導度については、地上多地点に設置された全天カメラによって撮像された2次元のオーロラ画像からオーロラ発光強度の3次元分布を復元し、既存の中性大気モデルと組み合わせることで電離圏電気伝導度の3次元分布を再構成する手法を確立した。本結果は査読付きの投稿論文として出版済みであり、国内の学会や研究集会で口頭発表や招待講演を行った。 また、電場の3次元分布については、北欧に新たに建設された大型大気レーダー「EISCAT_3D」を用いて観測された電離圏イオン速度データから再構成することを計画している。EISCAT_3Dの観測は2024年中に開始される予定であるが現時点ではまだ準備段階であり観測が開始されていない。そのため、本年度はEISCAT_3Dによる観測を想定した人工的なデータを作成し、そのデータを用いて電離圏電場の3次元分布を再構成する手法の検討を行った。具体的には、観測データに加えていくつかの制約条件を与えることで劣決定問題を解き、高度200 kmでのイオン速度ベクトル場の再構成手法の検討を行った。その結果、平均で約5%の精度で人工的に作成したイオン速度ベクトル場や電場を再構成できることが確認された。この結果について、国内外の学会や研究集会で口頭発表やポスター発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、コンピュータトモグラフィを用いた電離圏電気伝導度3次元分布の再構成とEISCAT_3Dレーダーによる観測データを用いた電離圏電場の推定を本年度に行う予定だった。前者については計画通りに手法の開発を行い、査読付き投稿論文の出版に至った。一方で、後者についてはEISCAT_3Dレーダーによる観測開始時期が当初の予定よりも遅れており、実際の観測データを使った電離圏電場の推定は行えていない状況である。そのため、本年度は実際の観測を模擬した観測データを作成し、そのデータを用いて電場の推定手法の開発を行った。これにより、次年度にEISCAT_3Dレーダーによる観測が始まった際にいち早く電離圏電場の3次元分布の推定を行える準備を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
EISCAT_3Dレーダーによる観測は2024年中に開始される予定であり、観測が開始された際には本年度開発した手法を用いて電離圏電場の3次元分布の再構成を行う。そして、コンピュータトモグラフィを用いて再構成された電離圏電気伝導度の3次元分布と組み合わせることで、オーロラ発光に伴い電離圏で駆動される電流系の3次元構造の復元を行う。 懸念事項としては、EISCAT_3Dレーダーによる観測開始時期が遅れることである。その場合には、本年度開発した電離圏電場推定手法を基に、さらに精度よく時間分解能の高い推定手法や観測手法の検討を行う予定である。具体的には、現在の手法では27本のビームによる観測を想定しており、1ビームあたり2秒の積分時間を必要とするため時間分解能は54秒となっている。しかし、オーロラに伴う電離圏電場の時間変化はこれよりも早いため、不要なビームによる観測を減らして時間分解能を上げることが重要である。その方法として、"Adaptive sampling" と呼ばれる手法を取り入れることで、リアルタイムでビームの観測方向や本数を変化させながら精度良く観測を行う手法の開発を行うことを検討している。
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Causes of Carryover |
(g)の前倒し支払請求額は3年分を今年度に一括で請求したものであるため、残り2年分が次年度使用額として残っている。また、夏と冬の2回の北欧出張の内、夏の出張は他予算で補填できたため、その分旅費の支出が少なくなっている。近年は国際学会の参加費なども高騰しているため、今回生じた次年度使用額を有効に使って、海外の学会などにも積極的に参加していきたいと考えている。
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[Journal Article] Three-dimensional ionospheric conductivity associated with pulsating auroral patches: reconstruction from ground-based optical observations2023
Author(s)
Fukizawa, M., Tanaka, Y., Ogawa, Y., Hosokawa, K., Raita, T., and Kauristie, K.
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Journal Title
Ann. Geophys.
Volume: 41
Pages: 511-528
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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