2023 Fiscal Year Research-status Report
Microbial and chemical approaches to enhance nitrogen fixation by compost application in paddy fields with iron-rich soils in the tropics.
Project/Area Number |
23KJ2164
|
Research Institution | Japan International Research Center for Agricultural Sciences |
Principal Investigator |
岡本 卓哲 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 生産環境・畜産領域, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
|
Keywords | 窒素固定 / 堆肥 / 水田土壌 / 酸化鉄 / 強風化土壌 / マダガスカル |
Outline of Annual Research Achievements |
養分供給力の低い強風化土壌が分布しているアフリカの中で、マダガスカルの水田に着目し、堆肥施用による水田土壌の窒素固定能の増強に向けた研究を進めた。 まず、マダガスカルの水田に生息する窒素固定細菌の群衆構造を明らかにするために、現地の水稲根圏土壌から採取されたDNAを用いて、窒素固定遺伝子を対象にしたアンプリコンシーケンス解析を行った。その結果、鉄還元細菌と鉄酸化細菌が高い相対存在量を示し、鉄の酸化還元に関わる細菌が窒素固定を担ってる可能性が示された。 次に、水田の窒素固定には遊離酸化鉄が影響しているとの仮説から、マダガスカルのおよそ350地点から採取された水田土壌の遊離酸化鉄含有量の測定を行った。その結果、マダガスカルは0.3-18%と幅広い遊離酸化鉄含有量を持つ水田土壌が分布していることが明らかになった。さらに、水田土壌での窒素固定細菌が用いる炭素やリンの供給源であると考えられる堆肥に着目した。マダガスカルの農家が作成した堆肥に含まれる植物由来炭素の組成分析を行った結果、リグニン、セルロース、ヘミセルロースの含有量の組成が堆肥間で大きく異なっていたことが明らかになった。デンプンを含んでいた堆肥も存在したことから、完熟堆肥のみならず、未熟堆肥が含まれた堆肥も農家が使っている可能性が示された。 今後は、鉄の酸化還元に関わる窒素固定に焦点を当て、遊離酸化鉄含有量や堆肥組成の異なる堆肥を用いて、マダガスカルの水田土壌の窒素固定能が増強される条件を明らかにすることを目指す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたマダガスカルの350地点以上のから採取された水田土壌の遊離酸化鉄含有量(DCB抽出)の測定を行うことができた。その結果、マダガスカルの水田は0.3-18%と幅広い遊離酸化鉄含有量を持つ水田土壌が分布していることが明らかになった。それらの中から選抜した土壌の培養実験の結果、酸化的な条件では、遊離酸化鉄含量の高い土壌で窒素固定能が高かったため、当初想定していた酸化鉄含量が窒素固定に関わる可能性が示された。還元的な条件では、遊離酸化鉄の含量よりもむしろ、施肥した炭素やリンの量によって窒素固定能が影響を受けることが示された。 また、マダガスカルの農家が作成した50点の堆肥を入手し、堆肥に含まれる植物由来炭素の組成を分析を行うことができた。その結果、リグニン、セルロース、ヘミセルロースの含有量の組成が堆肥間で大きく異なっていたことが明らかになった。デンプンを含んでいた堆肥も存在したことから、完熟堆肥のみならず、未熟堆肥が含まれた堆肥も農家が使っている可能性が示された。 さらに、当初予定していなかった、マダガスカルの水田に生息する窒素固定細菌の群衆構造を明らかにすることができた。現地の水稲根圏土壌から採取されたDNAを用いて、窒素固定遺伝子を対象にしたアンプリコンシーケンス解析を行った結果、鉄還元細菌と鉄酸化細菌が高い相対存在量を示し、鉄の酸化還元に関わる細菌が窒素固定を担ってる可能性が示された。これは、マダガスカルの土壌が遊離酸化鉄含量が高いという特徴を反映していると考えられた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度、マダガスカルの水稲根圏土壌を用いて行ったアンプリコンシーケンス解析の結果、鉄還元細菌と鉄酸化細菌が高い相対存在量を示したことから、当初の想定通り、マダガスカルの水田の主要な窒素固定細菌は鉄還元細菌と鉄酸化細菌であると考え、鉄に着目した窒素固定の増強を目指す。 まず、窒素固定の増強効果の高い土壌成分と堆肥成分をより詳細に明らかにすることを目指す。土壌については、本年度行ったDCB抽出遊離酸化鉄含量のみならず、フェリハイドライトのようなより酸化還元の影響を受けやすい鉄画分の抽出を含め、選抜した土壌でより詳細な化学分析を行い、どの抽出区分が最も窒素固定に影響していそうであったか明らかにする。さらに、本年度に測定した堆肥のうち、含まれる植物由来炭素の組成が大きく異なるものを選抜し、土壌培養実験を行うことにより、リグニン、セルロース、ヘミセルロースのうち、どの植物由来炭素成分が窒素固定に重要であったかを明らかにする。その際に、遊離酸化鉄やフェリハイドライト等の鉄の含量が異なる土壌を用いることにより、鉄の酸化還元と炭素の分解の関係性を見出すことを目指す。
|
Causes of Carryover |
年度末に行った海外出張について、不安定な航空運賃と急な為替変動のため、海外出張費が急に高騰する可能性を考え、余裕を持って海外出張費を概算していたため。想定の範囲内で海外出張を行えたために生じた次年度使用額については、本年度から次年度にかけて実施している土壌培養実験に関わる消耗品(試薬や抽出キット)の購入に充てる予定である。
|
Research Products
(3 results)