2023 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of Luminescence Mechanisms in Carbon Dots and Their Application to Photonic-Structured Optoelectronic Devices
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23KJ2166
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
山田 博之 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノアーキテクトニクス材料研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | カーボンドット / エレクトロルミネッセンス / フォトルミネッセンス / 薄膜 / 蛍光寿命測定 / 低温蛍光寿命測定 / 熱蒸着 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、(1)カーボンドット(CDs)の物性解析及び、(2)CDsの薄膜形成について研究を実施した。以下、各項目について記述する。 (1)2種類のCDsについて透過型電子顕微鏡で観察したところ、環状及びシート状である事がわかった。当該CDsはフォトルミネッセンス(PL)ピークは620nm付近、PLスペクトルは400-750nmでブロードで、絶対PL量子収率は30%前後である事が判明した。次にシート状CDsについて低温PL測定を行ったところ、297Kでは620nm付近にあったPLピークが、5Kで640nm付近までレッドシフトする事が判明した。さらに250K-150Kの間ではPL強度が増大していったが、逆に100K以下ではPL強度が減少した。次にPL蛍光寿命測定を行ったところ、数ナノ秒である事が判明した。当該結果について、現在論文執筆中である。 (2)上記CDsについて、分散液の種類が薄膜形成に及ぼす影響をスピンコート法で調べたところ、エタノール分散液が下地との親和性が高く、次いでジクロロメタン+PVK溶媒の相性が良かった。エタノール分散CDs薄膜の膜厚は5~7nmと厚さが十分ではなかったため、当該手法で膜厚を稼ぐことは容易でないと判断した。次にジクロロメタン+PVK分散CDsでは20nm程度の薄膜形成が認められたため、当該薄膜についてデバイス作製したころ、PVK由来ELスペクトルが支配的であった。それゆえ、当該手法もCDs薄膜作製には不適当と判断した。次に熱蒸着法によるCDs薄膜形成を試みたが、当該手法では蒸着温度が700℃と高温で、さらに当該薄膜のPLピークは蒸着毎に450-550nm付近でバラついたことから、当該手法では元のCDs構造を保っておらず、蒸着過程で炭素結合が切断されて別構造になっていることが示唆されたため、熱蒸着法はCDsに適しないと結論づけられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、(1)CDsの水熱合成及び発光原理の解明、(2)CDs薄膜形成プロセス確立の二項目が当初の研究予定である。(1)について、CDsの低温PL測定及びPL蛍光寿命測定を行い、一定の成果が出た。また(2)についても、スピンコート法で分散液の種類が薄膜形成に及ぼす影響を詳細に調査し、また熱蒸着法による薄膜形成過程も明らかにしたため、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、(1)CDsの水熱合成及び発光原理の解明、(2))CDs薄膜形成プロセス確立を行うと同時に、(3)CDs薄膜のエネルギーバンドダイヤグラムの解明と最適な無機デバイス構造の設計及び(4)CDsを活性層に組み込んだ光デバイスの創製に挑戦する。(2)で作製した薄膜について紫外光電子分光法(UPS)を用いて第一イオン化ポテンシャルを算出し、さらにバンドギャップを光吸収スペクトルから見積ることで、CDs薄膜のエネルギーバンドダイヤグラムを明らかにする。次に当該ダイヤグラムに基づき、電子輸送材料及び正孔輸送材料を選定し、スピンコート法及び熱蒸着法を用いて光デバイスを作製する。 発光素子研究では、外部量子収率及びELスペクトルからCDs薄膜の膜厚最適化を行い、高性能な発光デバイスを目指す。CDsで十分な厚さの薄膜形成が困難な場合は、グラフェン量子ドットやシリコン量子ドットなど、重金属フリーナノ粒子に置き換えることで研究を進める。 受光素子研究では、CDs紫外吸収剤を電子輸送層及び正孔輸送層で挟み込み、紫外光を照射し電流-電圧測定を行うことで、CDs薄膜内での電荷分離を明らかにし、紫外光検出性能を明らかにする。次に当該デバイス光電流の紫外光出力依存性を明らかにすることで、デバイスの検出限界を明らかにする。次に紫外光を周期的に照射して光電流波形を測定することで、光応答時間を明らかにする。これにより、光応答時間が速いCDs紫外光受光素子の開発を目指す。
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