2023 Fiscal Year Research-status Report
青色光適応メカニズムから概日的遺伝子発現制御の意義を理解する
Project/Area Number |
23KJ2175
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
河本 尚大 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | 概日時計 / シアノバクテリア / 光合成 / RNA-seq / Ribo-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
1.シアノバクテリアにおけるトランスクリプトームおよびトランスレイトームの解析。RNA-seq、Ribosome profiling により、シアノバクテリアSynechocystis sp PCC 6803における転写産物蓄積量・翻訳動態の変化を解析した。さらに発現の明暗応答メカニズムを明らかにするために光合成阻害剤DCMU、DBMIBでの処理サンプルの解析を行なった。光合成阻害によって、光化学系遺伝子の光応答は主に転写レベルで抑制され、翻訳活性の変化はほとんど寄与しないことを明らかにした。真核藻類や高等植物とのメカニズムの相違と葉緑体の進化的起源について議論し、学会発表を行なった。 2.シアノバクテリア概日発現リズムと光化学系に対する青色光の影響の解明。青色光が概日リズムおよび光化学系に与える影響について発光レポーター解析およびクロロフィル蛍光測定解析を行なった。前年度までに得ていた生育と光合成活性解析のデータと合わせて、国際学術雑誌Plant and Cell Physiology に第一著者および責任著者として発表した。 3.シロイヌナズナにおける翻訳リズムの解析。シロイヌナズナ幼苗における翻訳の概日リズムについて、Polysome profiling により解析を行なった。恒明条件に置かれたシロイヌナズナは、主観的夕方ごろにポリソーム/非ポリソーム比のピークを示し、主観的明け方から昼にかけて最低値を示すことを発見した。翻訳の概日リズムが観察可能な条件を見出したため、個々の遺伝子およびコドンレベルのより詳細な概日翻訳動態を明らかにするために2時間ごとに計84時間の時系列サンプルのRibosome profilingおよびRNA-seqを実施中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シアノバクテリアの概日リズム制御と青色光適応に関し、光合成の視点から解析を行い、その成果がPlant and Cell Physiology 誌に掲載された。 藻類および植物の培養環境を整備し、RNA-seq、Ribo-seqを実施した。植物および真核藻類の葉緑体とシアノバクテリアの光合成遺伝子の制御が異なる段階で行われていることを検証することができた。加えて、また、植物の翻訳動態の概日リズムを検証し、網羅的解析を実施している状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、シアノバクテリアの概日時計を介した青色光応答に関してRNA蓄積量と翻訳の両面から調べる。また翻訳活性の概日振動に関して、シアノバクテリアと植物で調べられた実例がない。所属研究室が開発した96サンプルのライブラリ調整メソッドをいずれの種に対しても適用し、通常の白色光条件および青色光条件での網羅的な翻訳動態を明らかにする。
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