2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23KJ2210
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
富原 健太 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所神戸フロンティア研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | Drosophila subobscura / Drosophila madeirensis / 婚姻贈呈 |
Outline of Annual Research Achievements |
ショウジョウバエの1種Drosophila subobscura (和名なし) のオスは、求愛の際に消化物を吐き戻し、メスに与える婚姻贈呈を行う。しかし、そのような高度な戦略は、他のショウジョウバエではこれまでにほとんど報告されていない。本研究は、どのようにしてD. subobscuraが婚姻贈呈という複雑な行動形質を獲得したか明らかにすることを目的としている。 <求愛行動の観察と比較> D. subobscuraと近縁な、subobscura subgroupに属する3種 (D. subobscura、D. madeirensis、D. guanche) の求愛行動を撮影し、観察・比較した。求愛時のオスの吐き戻し行動は、D. subobscuraだけでなく、D. madeirensisでも観察された。また、両種のF1 (D. madeirensisメス × D. subobscuraオス) のオスも吐き戻しを行った。D. subobscuraとD. madeirensisは、婚姻贈呈以外の求愛中の行動様式も類似していた。一方、D. guancheの求愛行動は、D. subobscuraやD. madeirensisと大きく異なっていた。 <ゲノム情報の整備> D. subobscuraとD. guancheのゲノム配列は公開されているが、D. madeirensisのゲノム配列は未解読である。そのため、D. madeirensisの参照ゲノム配列を同定するために、Pacbio Sequel IIを用いてロングリードシークエンシングを行った。得られたシークエンスデータをもとにde novo アセンブリを行った。これにより、染色体レベルの全ゲノム情報を得ることに成功した。また、RNAシークエンシングを行い、遺伝子モデルを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来は、D. subobscuraとD. madeirensisの雑種後代で順遺伝学的解析を行い、両種の婚姻贈呈行動の有無を決定する原因遺伝子を同定する予定であった。ただし、D. madeirensisが婚姻贈呈を行ったため、大幅な計画の変更の必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
オスが求愛時の吐き戻しを行う種について、Sophophora亜属昆虫を広く探索する。比較ゲノム解析を行い、ゲノム領域のいかなる変化によって、D. subobscura並びにD. madeirensisが婚姻贈呈を行うようになったか、明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初計画していた実験計画の一部を次年度に回したため、少額の差額が生じた。令和6年度に計画を遂行し、物品購入にて使用する予定である。
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