2023 Fiscal Year Research-status Report
新しい結合概念を基礎とした電子構造理論の確立と金属触媒反応への化学的洞察
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23KJ2215
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
中谷 佳萌 東京都立大学, 理学研究科, 助教
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | 電子対結合 / 量子化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度には、ジェミナルと呼ばれる二電子関数を基に分子の電子波動関数を構築する理論、特に強直交する二電子関数を用いる理論について考察した。同理論の旧来の課題は相関の強い電子系において顕著になる電子対間相互作用の不正確な記述を補正することである。この問題に対してまず、ジェミナルの反対称化積という簡素な試行波動関数の型を維持した場合に、二電子関数自体の変分自由度を高めることでどの程度の改善がみられるのかを調べることとした。 最初の方策として、二電子関数を直交するスピン軌道関数の反対称化積の線形結合として表現しながら、そこに一重項型成分と3種の三重項型成分を混在させることでスピン混入と引き換えの変分自由度を持たせた。年度前にこの方法の定式化を完了し、4電子系における強い電子対間相互作用を部分的に記述することを示した。この数値結果を年度内に学術誌を通じて公表した。 続いて一電子関数として一般化スピン軌道関数を用い、その反対称化積の線形結合として二電子関数を表現することで上述の方法を改良した。この形式は、各ジェミナルとして一般化スピン軌道関数2つだけの反対称化積を用いれば、一般化Hartree-Fock理論に帰着する。この定式化に対して、二電子関数における線形結合の係数と一般化スピン軌道の両方を最適化することで試行波動関数の変分計算を行う手続きを考案した。この方法によって、スピン軌道関数の空間部分の直交性に関する制約条件を排した最適化計算を可能にした。同法を強く相関する数電子からなる系に対して適用し、大域的最適解の探索とその性質についての数値検証を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子の電子構造の表現に関して計画していた方法の定式化を完了し、概念実証のための数値計算を進めた。学術誌を通じて上述の第一の方法による計算結果を公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の電子構造計算の方法の数値検証を継続して行い、並行してより大きな分子系への適用を進める。同法の理論的側面に関して電子対間相互作用の記述の更なる改良を検討する。
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Causes of Carryover |
所属研究機関の変更に際して、助成金の使用計画に変更が生じた。当該助成金は主に計算機環境の拡充と出張に必要な費用に充てる予定である。
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