2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23KJ2228
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石井 悠 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2023-07-03 – 2026-03-31
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Keywords | サンゴ / 褐虫藻 / 共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、熱帯・亜熱帯海域の一次生産者として大きな役割を担うサンゴやイソギンチャクなどの刺胞動物と単細胞藻類である褐虫藻との細胞内共生が成立するメカニズムを明らかにすることを目的としている。今年度は主に、①2022年に発表した論文データの再解析、②サンゴ幼生の画像データの解析方法の検討、③褐虫藻の比較ゲノム解析を行った。①サンゴ成体の蛍光は褐虫藻を誘引する。サンゴ幼生発生時の遺伝子発現量データを蛍光タンパク質に着目して再解析し、褐虫藻との共生のタイミング制御に関わる蛍光タンパク質を探索した。結果、11の蛍光タンパク質遺伝子の発現量が変動しており、これらを候補遺伝子とした。これらの遺伝子は配列の類似性から大きくAとBに分かれた。ただしグループBはBaとBbに細分化できた。これらの配列グループAとBは発現パターンが異なり、異なる蛍光タンパク質が異なる役割をもつと予想された。②これまでに撮影した幼生の画像データを用い、画像解析ソフトImageJでの蛍光波長・蛍光強度を評価する系の完全自動化を目指した。蛍光強度の個体差により蛍光写真だけでは輪郭抽出が難しかったが、蛍光画像と明視野画像と組み合わせることで評価することが可能であり、明視野画像と蛍光画像が完全に重なる状態で撮影することが評価に必須であることを見出した。③共生時、褐虫藻は宿主と炭素や窒素のやり取りをする。このやり取りは、宿主幼生の発生初期養分供給としての利点が指摘され、褐虫藻の細胞内共生の成立に関与する可能性がある。そこで、炭素および窒素の代謝および輸送に関わる遺伝子に着目し、褐虫藻内の共生・自由生活の表現型を活用し、比較ゲノム解析を行った。結果、窒素や炭素の代謝に関わる遺伝子が共生・非共生種で変化していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
発現変動遺伝子の解析から、配列と発現パターンが関連することを示すことができた上、来年度につながる画像解析法の確立を行うことができた。また、褐虫藻の比較ゲノム解析の結果では、刺胞動物との物質のやり取りに関わる可能性がある遺伝子が得られ、本結果は論文投稿準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
①次年度はこれらの蛍光タンパク質の分光特性を明らかにするとともに、発現パターンと褐虫藻走光性データを組み合わせ、共生制御蛍光タンパク質遺伝子を特定する。②次年度はプラヌラ幼生を採集し、褐虫藻との共生実験と今年度検討した蛍光波長・蛍光強度の評価法を組み合わせて、プラヌラ幼生の自家蛍光と褐虫藻数の間の関係を明らかにする。③次年度は、本結果をまとめ論文として発表する。
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Causes of Carryover |
採用開始日を変更した都合上、サンゴ幼生の採取ができなかったため、それに関連する旅費・消耗品費を次年度に使用することとなった。次年度は本目的のため使用する計画である。
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