2023 Fiscal Year Research-status Report
Exploration and application of outer membrane vesicle-producing bacteria for the development of novel nanomaterials
Project/Area Number |
23KK0110
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川本 純 京都大学, 化学研究所, 准教授 (90511238)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西山 雅祥 近畿大学, 理工学部, 准教授 (10346075)
豊竹 洋佑 立命館大学, 生命科学部, 助教 (60843977)
|
Project Period (FY) |
2023-09-08 – 2027-03-31
|
Keywords | 細胞外膜小胞 / 極限環境微生物 / Shewanella |
Outline of Annual Research Achievements |
細菌が放出するカプセル状のナノ粒子は、細胞外膜小胞(MVs)や外膜小胞(OMVs)と総称される。これらの細胞外微粒子は、細菌と宿主もしくは細菌間の情報伝達ツールとして機能し、細菌の生存戦略を支えている。一方で、細菌の MVs はワクチンや薬物送達、異種タンパク質分泌生産プラットフォームとしての応用が期待されている。細菌の MVs の応用が期待される一方で、これらの細胞外微粒子生産の分子基盤の多くが不分明であること、大腸菌などのモデル細菌の MV 生産性が低いことがボトルネックとなり、MVs の応用は現状、限定的である。本研究では、効率的な MV の応用と MV 生産機構の解明に資するモデル細菌の獲得を目指し、MV 生産性に秀でた新規の有用細菌の探索を主目的としている。本研究は、米国スクリプス海洋研究所 Douglas Bartlett 博士との共同研究体制で遂行する。今年度、1 月に米国のBartlett 博士の研究室を訪問し、当研究室が所有する海洋細菌単離株コレクションを確認した。これらのうち、深海や高塩濃度環境より採取された細菌種を対象に、今後の MV 生産性評価に供することとした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、細菌培養液を MVs を分離することなく簡便に MV 生産性を評価することができる曲率認識ペプチド nFAAV5 を基盤技術としている。さらに、米国スクリプス海洋研究所所属の Bartlett 博士の所有する海洋単離株コレクションから、 MV 高生産性細菌を探索し、これらの比較ゲノムやマルチオミクス解析から普遍的な MV生産に関連する因子を見出すことを目指す。今年度、米国スクリプス海洋研究所にて Bartlett 博士とワークショップ「Exploration and Application of Extracellular Membrane Vesicle-Producing Bacteria as a Basic Technology for Aquaculture Augmentation」を開催(2024年 1月26日)し、同研究所所有の深海試料より採取された細菌や高塩濃度環境より採取された細菌を今後の実験に供することとした。 本研究では、対象となる細菌群から効率的に MV 生産性に秀でた株を探索するため、上記の曲率認識ペプチド nFAAV5 を使用する。大腸菌、Pseudomonas 属細菌、HM13 の近縁種の Shewanella 属細菌 3 株を対象に nFAAV5 の有効性を評価した。各菌株について、細胞、MV、培養液(細胞+MV)の3画分を調製した結果、MV を除去した細胞画分の蛍光強度に比較し、MV を含む画分では顕著に蛍光強度が増加していた。本実験で使用した菌株間では、それぞれ莢膜多糖やリポ多糖の有無や構造が異なるが、いずれの MV についても MV を選択的に蛍光標識することが可能であることが示された。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度、共同研究者である Bartlett 博士とのワークショップ開催により、本研究で最初に対象とする海洋細菌コレクションを策定した。さらに、本研究の基盤技術である nFAAV5 について、表層構造の異なる多様なグラム陰性細菌由来の MV に対しても、本ペプチドは細胞存在下で MV を標識可能であることが示された。以降は、今期に選定した深海由来の細菌および高塩性細菌について、いくつかの培養条件で培養し、MV 生産性を評価する。対照として、我々が単離した MV 高生産性細菌 Shewanella vesiculosa HM13 をもちい、HM13 株と同等もしくはそれ以上の MV 生産性に秀でた菌株の探索に取り組む。nFAAV5 をもちいた1次スクリーニングから選抜された株は、ナノ粒子トラッキング法による粒径分布および粒子濃度測定、MV 画分の SDS-PAGE による夾雑タンパク質の有無から溶菌を伴って MV を生産している株を排除し、正常に細胞増殖しつつ MV を高生産する菌株の取得を目指す。得られた菌株は、全ゲノムを解析し、トランスクリプトーム解析やプロテオーム解析を行い、共通して MV 生産に関連して発現量が増加している遺伝子群を見出す。これらは MV 生産に関連するコア遺伝子もしくはアクセサリー遺伝子である可能性が高い。また、各株で遺伝子操作系を確立し、遺伝子破壊実験を行い遺伝子工学的に MV 生産の分子基盤の探索を試みる。
|
Causes of Carryover |
本研究では、海洋横断的な海洋サンプルから MV 生産性に秀でた細菌種の取得を目指すものである。効率的に細菌の MV 生産性を評価するために、本研究では MV 選択的に結合する曲率認識ペプチドを利用し、96穴プレートベースでの培養と本ペプチドをもちいた蛍光染色により MV 生産性を評価する。本研究の実施のため、当初、自動分注装置の購入を検討していたが、当初計画していた価格が大幅に高騰したため、今年度の購入を見送ることとした。そのため、次年度使用額が上記の通り発生している。
|