2023 Fiscal Year Research-status Report
Forest resilience and degradation of soils and landscape structure in Bornean production forests
Project/Area Number |
23KK0120
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
青柳 亮太 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (20795132)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 伸夫 東京農業大学, 地域環境科学部, 准教授 (00722638)
竹重 龍一 京都大学, 農学研究科, 特定研究員 (60985266)
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Project Period (FY) |
2023-09-08 – 2028-03-31
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Keywords | 熱帯林 / レジリエンス / 土壌劣化 / 森林劣化 / ボルネオ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、伐採に伴う土壌(課題1) と景観構造の劣化(課題2)が樹木の生理生態、更新に及ぼす影響を明らかにする。調査地は、マレーシア・サバ州デラマコット・タンクラップ森林保護区(木材生産林)とその周辺地域を対象とする。
初年度は、研究実施に関わる基盤形成に尽力した。マレーシア・サバ州森林局に訪問し、セミナーを開くことで、研究の概要を現地協力者や森林管理者と共有・確認した。共同研究機関の化学実験室に訪問し、必要な薬品や機材の整備を行った。またデラマコット森林保護区を訪問し、過去の撹乱強度の異なる地域に植生プロットを作成し(20m半径、n=21)、土壌を採取した。土壌の理化学性を測定するため、リン(可給態リン、全リン)、窒素(無機態窒素、全窒素)、カチオン類(Mehlich 3溶液で抽出カチオン、全カチオン)、有機物量の測定を行う。これらのデータを元に回復の停滞した森林の土壌が回復しつつある森林とは異なる特性をもつことを解明する予定である。
また、景観構造と更新に及ぼす影響を明らかにするためドローンを飛ばし、プロット周辺(200m×200m)のRGBオルソ画像を作成した。個々の樹木の林冠を区分し、それぞれの林冠がどの樹種にあたるかを現地で確認した。これらの情報から、熱帯林の原生林の構成種であるフタバガキの巨木を同定する機械学習モデルを作成中である。これにより、ドローン画像からプロット周辺のフタバガキ科樹木の巨木密度が推定可能になり、巨木密度の低下と実生の更新量との関係を明らかにすることが可能になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していた、協力体制の確認や基盤形成を実施できた。さらに、今後の調査対象となるプロットの作成、ドローン調査や土壌採取なども進めることができたことから、「当初の計画以上に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、マレーシア・サバ州デラマコット・タンクラップ森林保護区(木材生産林)とその周辺地域を対象として、伐採に伴う土壌(課題1) と景観構造の劣化(課題2)が樹木の生理生態、更新に及ぼす影響を明らかにしていく。
課題1に関しては、さらに多くの劣化林で土壌を採取し、土壌特性と森林劣化の関係性を明らかにする。また、森林劣化と実生の生理生態の関係について調査を実施する。劣化林や原生林において実生の成長や死亡を継続観察するとともに、根の酵素活性を測定する。原生林や軽度劣化林では、(i)光強度が高まると、菌体バイオマスや成長速度が高まる、(ii) フォスファターゼ活性が高まるにつれ成長速度や植物体リン濃度が高まるのに対し、強度劣化林ではその様なパターンがみられないことを検証する。さらに、土壌の菌根菌の呼吸速度を測定し、森林劣化に伴い、樹木の成長にとって重要な菌根菌の活性が低下することを明らかにする。
課題2に関しては、まず継続的に森林動態を観測しているプロットにおいて再度毎木調査を行い、森林の回復速度を実測する。さらにこれらのプロットでもドローン調査を行い、周囲の景観構造を把握する。また、トランセクトを作成し、。もし一斉開花が起こった場合は、フタバガキの果実を採取し、周囲にフタバガキ巨木密度が高い地域と低い地域に植栽実験を行い、巨木密度が低い地域では極端に実生の更新が少なくなることを実証する。
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Causes of Carryover |
今回分担者の竹重はマレーシアに渡航しなかったため、関連した費用の支出がなくなった。来年度以降にマレーシアに渡航し、予定していたプロット調査、ドローン撮影、実生更新の実態調査を行う予定である。
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