2023 Fiscal Year Research-status Report
Characteristics of rice rhizomicrobiota and carbon/nitrogen dynamics in alkaline paddy fields
Project/Area Number |
23KK0123
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
原田 直樹 新潟大学, 自然科学系, 教授 (50452066)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永野 博彦 新潟大学, 自然科学系, 助教 (40758918)
アシルオグル ムハンメットラシット 新潟大学, 自然科学系, 助教 (30870456)
鈴木 一輝 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (40801775)
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Project Period (FY) |
2023-09-08 – 2027-03-31
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Keywords | アルカリ水田 / 土壌還元 / 炭素窒素動態 / 微生物群集 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度末に日本側研究者3名がトルコに渡航し、アンカラ大学所属の海外共同研究者とともに、黒海地方のチャンクル県、チョルム県、サムスン県およびマルマラ地方のクルクラレリ県の水田計20圃場を巡検し、土壌試料を採取した。どの圃場も作付前・耕起後の状態で、土壌pHは8以上の値を示した。特に黒海地方では土壌表層に塩析出も認められた。なお現地で採取した土壌試料(各2 kg×20か所=40 kg)を、植防の許可を得た上で本邦に移送済みである。 また、現地での研究者及び農家を対象とした聞き取り調査の結果、次のような基本情報を得た。1)土壌特性、特に土壌pHは地域によって異なるが、水田管理についてはトルコ国内で地域差があまりない、2)ほとんどの水田は10年以上稲作にのみ使用され、田畑輪換は行われない、3)イネの作付けは散播による、4)水田は播種の数週間前から収穫の数週間前まで常時湛水され、中干しは行われない、5)使用されている肥料の種類は農家毎に微妙に異なるが、大半は化学肥料のみを使っている、6)収穫にはハーベスターが使われ、その時期は9月中旬~10月上旬である、7)調査対象地域のコメ収量は平均約700kg/10aである、8)収穫後の稲わらはしばしばその場で焼却される、9)トルコの水田からの温室効果ガス発生については、その放出過程や規模等を含め未検討事項が多い。その一方、他の農耕地の一部では、微気象学的手法を使った生態系スケールの温室効果ガス動態観測研究が始まっており、本研究への現地の期待は大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は3/16~24まで日本側研究者3名がトルコに渡航し、アンカラ大学所属の海外共同研究者4名(O.C. Turgay教授、M.O. Akca助教、H. Akca研究助手、E. Kucukel研究助手)とともに、黒海地方のチャンクル県、チョルム県、サムスン県およびマルマラ地方のクルクラレリ県の水田計20圃場を巡検し、土壌試料を採取した。どの圃場も作付前・耕起後の状態で、土壌pHは8以上の値を示した。特に黒海地方では土壌表層に塩析出も認められた。なお現地で採取した土壌試料(各2 kg×20か所=40 kg)を、植防の許可を得た上で本邦に移送済みである。 また、現地農業研究センターの研究員や協力農家への聞き取り調査の結果、次のような基本情報を得ることができた。1)土壌特性、特に土壌pHは地域によって異なるが、水田管理についてはトルコ国内で地域差があまりない、2)ほとんどの水田は10年以上稲作にのみ使用され、田畑輪換は行われない、3)イネの作付けは散播による、4)水田は播種の数週間前から収穫の数週間前まで常時湛水され、中干しは行われない、5)使用されている肥料の種類は農家毎に微妙に異なるが、大半は化学肥料のみを使っている、6)収穫にはハーベスターが使われ、その時期は9月中旬~10月上旬である、7)調査対象地域のコメ収量は平均約700kg/10aである、8)収穫後の稲わらはしばしばその場で焼却される、9)トルコの水田からの温室効果ガス発生については、その放出過程や規模等を含め未検討事項が多い。その一方、他の農耕地の一部では、微気象学的手法を使った生態系スケールの温室効果ガス動態観測研究が始まっており、本研究への現地の期待は大きい。 以上の通り、本研究の初年度の目標はほぼ達成されており、十分な情報も得られたことから「(2)おおむね順調に進展している。」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は次の調査・実験を行う予定としている。 1)逐次還元の進行と土壌マイクロバイオータの検討:本邦に移送した現地水田土壌20点を用い、新潟土壌を対照に湛水条件にて土壌培養実験(8週間)を行う。pHやECの他、Eh、NO3-N、Mn2+、Fe2+、SO42-、低分子有機酸の濃度やCO2、CH4およびN2Oガス発生量等を経時的に測定し、還元状態の発達を調べる他、土壌DNAおよびRNAに基づくマイクロバイオータ(細菌、アーキア、原生生物)の群集構造解析を実施し、逐次還元の進行プロセスと関連付ける。 2)イネ生育と土壌マイクロバイオータの関係:現地水田土壌5点を選抜して、アンカラ大学の温室内でイネのポット栽培を行う。この際、現地の圃場管理法にならって常時湛水とし、雑草・病害対策を行う。栽培期間中、イネの生育を逐次調べる他、ポットから土壌およびイネ根を採取してマイクロバイオーム解析を実施する。また、チャンバー法により水稲栽培期間中のCH4、CO2およびN2O総発生量を対象としたガスフラックス観測を実施する。 3)現地土壌の土壌有機物分析と温室効果ガス生成能評価:現地水田で採取した土壌について、有機物含量や土壌有機物特性(腐植物質組成、鉱物との相互作用、比重分画、安定同位体比等)を調べる。さらに湛水条件の異なる土壌培養実験(常時湛水条件と湛水・落水サイクル条件)を実施し、CO2、CH4およびN2Oガスの生成能を常時湛水条件と湛水・落水サイクル条件で比較する。また、現地土壌に多く含まれる炭酸塩の溶解性を土壌炭素貯留と関連付けて比較する。
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Causes of Carryover |
日本側研究者1名が急病のためトルコへの渡航ができなかったことから、次年度使用額が生じた。次年度の旅費は十分に確保されていることから、この次年度使用額は物品費(消耗品代)として使用する計画としている。
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