2012 Fiscal Year Annual Research Report
物質構造科学の新展開:フェムト秒時間分解原子イメージング
Project/Area Number |
24000006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Specially Promoted Research
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
谷村 克己 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (00135328)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
那須 奎一郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 名誉教授 (90114595)
楊 金峰 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (90362631)
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Project Period (FY) |
2012-05-29 – 2017-03-31
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Keywords | 光物性 / フェムト秒時間分解 / 電子回折 / 電子顕微鏡 / 光誘起相転移 |
Research Abstract |
本研究は、物質機能の根源的理解の基礎を提供する物質構造を、超高速で変化する非平衡過程に対して達成する為、世界に先駆けて、10-13秒の時間分解能を有する時間分解原子イメージング手法を開発し、それを駆使した固体の超高速構造変化・相転移現象の研究を推進して、物質構造科学研究の新展開を目指す。初年度に当たる平成24年度は、以下の研究を推進した。 1.フェムト秒時間分解原子イメージング装置の開発研究においては、本計画の核心の一つとなるフェムト秒時間分解電子顕微鏡の開発研究の基本方針として、①現有の相対論的電子ビームを用いた時間分解電子回折装置を原子イメージング測定装置へ転生させる事、②原子分解能を持つ電子顕微鏡にフェムト秒時間分解能を付与し、超高速時間分解原子イメージングを実現する事、の両者を相補的に推進する事を定め、その為の装置開発の検討、必要備品類の導入を行った。特に、上記①の課題達成に必須な、開発推進の為の実験室の改修、除振台などの基盤整備、および、電子ビームの単色化・安定化に必要な専用RF電源、クライストロン、レーザー装置等の基盤的大型装置を導入した。 2.凝縮物質系の超高速構造動力学の研究においては、凝縮物質系の超高速構造動力学を駆動する励起電子系の超高速・非線形緩和過程を、フェムト秒時間分解2光子光電子分光を用いて系統的に解明する為の研究を推進した。特に、半導体結晶に対して、励起電子系の電子分布関数をエネルギー、時間、および運動量空間において直接的に分離して観測し、画期的な結果を得た。 3.励起物質系における新規秩序形成過程の理論的研究においては、動的回折現象を再考察し、フェムト秒時間分解電子回折実験から得られる運動量空間情報から、構造秩序変化・相転移過程に対する原子レベルの知見を獲得する為に必要な、第一原理計算と分子動力学計算を組み合わせた一貫した理論体系を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、物質機能の根源的理解の基礎を提供する物質構造解明を、超高速で変化する非平衡過程に対して実現する為、10-13秒の時間分解能を有する時間分解原子イメージング手法を開発し、それを駆使した研究の推進を通じて、物質構造科学研究の新展開を目指している。その為の核心の一つとなるフェムト秒時間分解電子顕微鏡の開発研究の基本方針として、①現有の相対論的電子ビームを用いた時間分解電子回折装置を原子イメージング測定装置へ転生させる事、②原子分解能を持つ電子顕微鏡にフェムト秒時間分解能を付与し、超高速時間分解原子イメージングを実現する事の両者を相補的に推進する事を行う。 この研究戦略は、現在の世界の研究展開の趨勢と今後の展開方向を洞察し、予想される諸問題とその解決方向を総合的に検討して確立したものである。前者(S-UTEM)は、長期的視点に立ってシングルショットによる原子イメージングを実現する開発研究であり、後者(M-UTM)は、世界に先駆けて時間分解原子イメージングに基づく構造動力学研究を早期に実現・推進する為に必須な手法である。 新規かつ大型装置開発には、その特性決定、設計、試作・製作、諸調整を含めて長期の時間を要するが、関連研究者の努力によって、研究開始初年度に、基本的な概念設計、および大部分の大型装置の導入を終えることができ、計画は、当初の予定を上回って進行している。また、装置開発以外の研究遂行が可能な本研究の他の分担課題においても、多くの重要かつ世界に先駆けた成果が得られており、現在までの達成度は、極めて順調であると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.フェムト秒時間分解原子イメージング装置の開発 時間分解電子回折装置を原子イメージング測定装置へ転生させる課題について以下の計画で研究を進める。①25年度に引き続き、電子ビーム特性を向上させる為の諸調整と改良を行う。②時間分解電子回折法を用いて、気相分子の光化学反応動 力学の研究を展開する為の装置整備を行う。③上記の実験を通じて、シングル-ショット原子イメージング実現のために必要な、パルスあたりの電荷量、単色性、検出器の検出感度を定量的に評価し、次年度以降に行うイメージング測定への基礎データを獲得する。 2.凝縮物質系の超高速構造動力学の研究 25年度で実現するM-UTEMを用い、VO2や相変化記憶材料Ge2Sb2Te5等の可逆的変化を示す相転移・構造変化現象を対象とした研究を推進する。更に研究対象を、固体表面上に吸着した分子系の光化学反応、光触媒反応に展開し、超高速構造動力学を直接的な知見に基づいて解明する研究に着手する。更に、プローブ電子ビームの安定性と単色性を向上させたフェムト秒時間分解電子回折装置を駆使し、固体の光誘起構造相転移現象に対する研究を推進すると共に、気相分子系構造動力学研究の為の回折装置用ガス導入チャンバーを装着し、スチルベン分子等のシス-トランス異性化反応過程における時間分解分子構造決定を対象とした研究を進める。 3.励起物質系における新規秩序形成過程の理論的研究 前年度からの研究を継続・発展させると共に、結晶秩序の変換や崩壊を伴う結晶構造系の変化を適切に解析可能な、第一原理計算と分子動力学計算を組み合わせた一貫した理論体系を高度化し、電子系励起効果の記述が比較的容易な金属物質を対象として、warm dense matterの動力学特性・相転移現象を系統的に解明する。
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Research Products
(18 results)
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[Book] Nanoscale sp2 - sp3 conversion by visible light irradiation in graphite, "Graphite: Properties, Occurrences and Uses", ed. by Q. C. Campbell, Chap.32013
Author(s)
L. Radosinski, K. Nishioka,K. Nasu and D. Wojt,
Total Pages
46
Publisher
Nova Science Publishers, Hauppauge, NY, USA
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