2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24000009
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤田 誠 東京大学, 大学院工学系研究科, 教授
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Project Period (FY) |
2013 – 2017
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Keywords | 自己組織化 / 単結晶構造解析 / ホストーゲスト化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
溶液ケージと結晶ケージを統合した化学の展開において、1. 自己組織化空間内の溶液化学、2. 自己組織化結晶空間内での化学、3. 生体分子を用いた新たな展開、の3つの項目で研究を進めてきた。まず、1. の自己組織化空間内の溶液化学においては、自己組織化球状錯体のナノ空間を用いて2種類の触媒活性点を独立に働かせる「サイト・アイソレーション」を達成した。2種類の触媒は溶液中で混ぜ合わせると互いに反応し失活するのに対し、この球状錯体の空間を使うことで両者を同一の溶液中でそれぞれの反応の触媒活性を維持できることを見出し、これによって一つの基質に対して複数の反応を一度に効率的に実施するカスケード反応が可能となることを示した。このように、通常、固体触媒表面で試みられてきた「サイト・アイソレーション」の概念を溶液化学へもたらすことに成功した。2. の固相化学における研究では、結晶ケージ内への包接現象を利用した固相化学の研究をさらに推進した。揮発性の有機化合物を結晶性の自己組織化空間内へ包接させることが可能であることを見出し、気相と固相の間で働く分子認識を実現した。その揮発した微少量の有機化合物は自己組織化空間内へ包接されることで精密に配向するため、結晶構造解析によって微量揮発成分の構造解析が可能であることも示した。また、固相の自己組織化空間内に包接されたさまざまな有機分子の結晶構造解析を進めた結果、通常の溶液状態で議論される分子認識とは異なり、固相においては非常に弱い水素結合やファンデルワールスカによって分子認識が達成されることも明らかにした。さらに3. の生体分子を用いた新展開として、糖鎖やペプチド鎖を活用した新たなナノ空間を創出した。溶液状態で議論されるペプチドのフォールディング現象を結晶化の過程に組み込むことで、配座に基づいたユニークな自己組織化空間の構築が可能であることを明らかにした。このように、溶液化学と固相化学を、ナノ空間を通じて結びつけるという本研究の目的を実現し新しい化学を開拓したといえる。
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Research Products
(4 results)