2015 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ結晶効果によるエネルギー・環境適合デバイスの革新
Project/Area Number |
24000013
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
岸野 克巳 上智大学, 理工学部, 教授 (90134824)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大槻 東巳 上智大学, 理工学部, 教授 (50201976)
関口 寛人 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00580599)
光野 徹也 静岡大学, 工学部, 助教 (20612089)
江馬 一弘 上智大学, 理工学部, 教授 (40194021)
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Project Period (FY) |
2013 – 2016
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Keywords | 窒化物半導体 / ナノコラム / 三原色 / LED / フォトニック結晶 / 超細線化 / ランダムレーザ / 選択成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、規則配列GaNナノコラムのコラム径細線化で発現されるナノ結晶効果の学術的解明を進め、InGaN系窒化物半導体デバイスが直面する材料的課題を克服に挑戦し、可視域ナノコラム発光デバイスを開拓することを目的としている。 1. n型AlGaN(Al組成比<18%)ナノコラム規則配列化に成功し、GaN/AlGaN、p-AlGaNクラッド層を成長させ、紫外域で電流注入発光を得て、ナノコラムレーザ/LEDへのAlGaNクラッド層内在化の突破口を開いた。ナノインプリント描画とナノテンプレート選択成長によって、2インチAlN/Si基板上への大面積InGaN系ナノコラムLED成長法を開拓した。 2. ナノ結晶効果のコラム径依存性について、GaNナノコラム上InGaN臨界膜厚、光取出効率の定量評価、励起子多体効果に着目して研究を進めた。顕著な成果は、InGaN臨界膜厚が臨界コラム径Dc以下では無限大となることを実験的に示したことで、コラム状構造では厚膜InGaNでも不整合転位が発生しないことが明らかとなった。 3. 一定の格子定数でナノコラムを三角格子配列させつつ、コラム径は一次元方向で線形的に変化させて、一次元グレーデットナノコラム構造を作製したところ、スペクトル全幅が32nmと広く、ランダムレーザ的な発振特性を示し、スペックルフリーレーザの基礎特性を示した。また、ナノコラムレーザの長波長限界の拡大を進め、橙色域(601nm)までの光励起レーザ発振を得た。 4. 発光色の異なる4種類の微小発光域(10×10μ㎡)ナノコラムLEDを含む集積ユニットを7×7正方格子状に二次元的に配列して、高密度配列ナノコラムLED結晶を作製した。この結晶は、可視光全域に広がった電流注入発光スペクトルを示し、微小域発光色制御が実証された。発光色メカニズム理解の基礎パラメータとなるGaとInの表面拡散長を実験的に得た。 5. 赤色発光・希土類(Eu)ドープナノコラムで、組成比2%以上までの高品質ドーピングに成功し、ナノ結晶の優位性を示した。GaNナノコラム上に六角形状InGaNナノプレート(直径・700nm)を成長させ、そのレーザ発振機構を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1. デバイス研究が順調に進捗している。ナノコラムフォトニック結晶レーザでは、赤色域に迫る橙色域601nmでのレーザ発振に成功し、長波長限界の拡大が進んだ。スペックル雑音フリーの新構想ディスプレイ用レーザ開拓が実施計画書に予定されているが、一次元グレーデッドナノコラム構造の発想が生まれ、ランダムレージング現象に基づいた広い発振スペクトル幅が観測され、スペックル雑音抑制の可能性が示され、ディスプレイ用レーザの革新へのひとつの道筋が提起された。 2. 昨年度に開拓したナノテンプレート選択成長法を用いて、ふたつのデバイス研究が進んでいる。ひとつはナノコラムLEDの大面積化である。この選択成長法を活用することで、従来の電子ビーム描画の代わりにナノインプリント描画が活用できるようになり、2インチSi基板全面に規則配列ナノコラムを成長しながら、ナノコラムLED作製が進んだ。これとナノコラムLEDのフリップチッププロセスと融合させることで、上限配線と大面積化によって微小面積ナノコラムLED(ピクセル)の高密度二次元配列を行うことで、ディスプレイ用映像パネルへの突破口が開かれると期待される。一方、ナノテンプレート選択成長の考え方を従来のTiマスク選択成長法に適用して、AlGaNナノコラムの規則配列化を達成し、ナノコラムレーザヘクラッド層導入が可能となり、レーザ導波路作製の基礎技術が確立されてきた。 3. 異なる発光色の微細発光径(10×10μm2)ナノコラムLEDの高密度・2次元配列結晶の成長法が確立された。すべての発光色LEDの同時駆動では、青色~赤色域に広がった広い発光スペクトルとなり色再現性の高い高演色性LEDとして機能したが、独立駆動すればプロジェクションディスプレイ用映像パネルの基礎が与えられる。 4. 反応性プラズマ蒸着法によってグラフェン上に成膜した平坦なAlNバッファ膜を成長核形成層に用いて選択成長を行うことで、世界で初めてグラフェン/SiO2基板上の規則配列GaNナノコラム成長に成功した。この研究成果は、ナノコラムフリップチップ化を容易にし、誘電体多層膜反射鏡上のナノコラムLED/レーザ結晶作製への研究展開を促進する。
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Strategy for Future Research Activity |
1. コラム径を30-200nmの範囲で系統的に変化させ、GaN、InGaN、およびGaN/AlGaN、InGaN/GaN量子井戸ナノコラムアレイを成長し、光学特性評価を行い、ナノ結晶効果、In組成揺らぎの抑制、格子ひずみの抑制、量子ドット効果を分離して考察し、ナノ結晶効果の学問的理解を深める。ここではカソードルミネッセンス、時分解PL、PLスペクトル測定の温度および励起強度依存性を系統的に測定し、キャリア再結合ダイナミクス、内部量子効率、発光・非発光再結合を把握し、学術的理解を深め、デバイスの高効率化・多機能化に貢献する。 2. 集団ナノコラムの光局在・非局在効果では、コラム径と位置を精密に制御して、規則配列からわずかな揺らぎを入れた試料や、ランダム配列の位置を揃えたまま試料サイズを変えた試料などを作製し、ランダム配列と規則配列のクロスオーバー領域領域の研究を進める。 3. ナノコラム超細線化を進め、単一光子発生素子としての超細線InGaNナノコラムの有用性を示し、高集積・量子ドット単一光子アレイに向けた実証実験を行う。GaNナノコラムを用いて、バルクから1次元的な性質まで系統的に解明し、低次元物性物理に光をあてる。二次元電子(2DEG)系のAlGaN/GaNヘテロ表面上に規則配列細線ナノコラムを作り、ナノコラム帯電状況(電気的・光励起)で2DEG系に誘起される周期的変調を磁気抵抗で観測する。 4. GaN/サファイア基板上にAlGaN/GaN-DBRを成長させ、その上にpn接合型InGaN系ナノコラムムを作り、緑色域ナノコラムレーザの最適化を進める。 5. グラフェン/SiO2基板上のGaNナノコラム選択成長(SAG)法を完成させ、これを応用してSiO2/TiO2誘電体DBR上ナノコラムLED/レーザ結晶を作製する。 6. スペックル雑音フリーのナノコラムレーザ研究を深める。ランダム配置構造のランダムレージング性を学術的に把握するとともに、併行して微小領域に発振波長の異なる均一ナノコラム系を集積したレーザも検討する。 7. 将来の実用化を見据えて、2インチSi基板全面に規則配列ナノコラムLEDの作製技術を深めて、企業技術の力を得て微小ナノコラムの高密度2次元アレイの独立駆動を行い、ナノコラムLED画素パネル技術を探索する。 8. ナノコラムフォトニック結晶効果を発現させながら、三原色集積型ナノコラムLEDを設計し、指向性の高い放射ビーム特性を有するLEDの集積化法を確立する。 9. ナノコラム関連技術の新展開を深める。ウイスパリングギャラリーモードによるナノコラム微小共振器、ナノ結晶効果による希土類(Euなど)ドープ結晶の高品質化とデバイス化、光トポロジカル絶縁体の探索など、新分野を拓くナノコラム潜在性を探索する。
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Research Products
(74 results)