2012 Fiscal Year Annual Research Report
フロリゲン(花成ホルモン)の分子機能解明と植物改良への展開
Project/Area Number |
24000017
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
島本 功 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (10263427)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田岡 健一郎 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (00467698)
寺田 理枝 名城大学, 農学部, 教授 (30137799)
児嶋 長次郎 大阪大学, たんぱく質研究所, 准教授 (50333563)
大木 出 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (80418574)
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Project Period (FY) |
2012-05-29 – 2017-03-31
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Keywords | フロリゲン / 植物 / 発生・分化 |
Research Abstract |
フロリゲンは植物の花芽分化を決定づける因子として、約75年前にその存在が提唱された。我々はその分子実体がHd3a/FTと呼ばれるタンパク質であることを明らかにした。Hd3aは葉の維管束で発現した後、茎頂メリステムまで長距離移動して花芽形成を開始させる。さらに我々はフロリゲンの細胞内受容体が14-3-3タンパク質であることを見出し、またフロリゲンの活性本体であるタンパク質複合体「フロリゲン活性化複合体(FAC)」を同定した。フロリゲンは茎頂細胞内の細胞質で14-3-3と結合した後、核移行して転写因子FDとFACを形成して花メリステム決定遺伝子AP1ホモログの転写を活性化すると考えられている。このようにフロリゲンの分子機能は明らかになりつつあるが、その長距離輸送のメカニズムや茎頂メリステムの相転換の全体像など、多くの重要な問題が未解決のまま残されている。本研究ではフロリゲンの分子機能を明らかにし、植物改良への応用の可能性を探ることを目的にしている。 本年度は茎頂メリステムのトランスクリプトーム解析、花成リプレッサーTFL1の機能解析、フロリゲンの花成以外の器官形成機能等の解析を進め、フロリゲンは基本的にFAC形成に依存して多様な機能を発揮していることを明らかにした。またFACはモジュール構造を取っており、その構成因子を交換することによって植物発生の多様な局面で機能することを見出した。茎頂メリステムの相転換の解析に関しても、大規模転写解析やメチローム解析の主要な部分を実施した。さらにジーンターゲティングによって作出したフロリゲン機能のレポーター植物を用いて、フロリゲンの茎頂への到達の様子と下流遺伝子の活性化の様子を初めて詳細に捉えることができた。これらの解析を通じて、フロリゲンがFAC形成を介して機能するメカニズムに関する重要な知見を得ることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フロリゲンの分子機能の解析については、概ね計画通りに進展している。すなわち茎頂メリステムのトランスクリプトーム解析、花成リプレッサーTFL1の解析、フロリゲンの長距離移動に関する形質転換イネ作出等を計画通り実行した。さらに、新規な花成応答遺伝子の同定やTFL1の細胞生物学的な知見など、一部で当初想定を上回る成果も得られている。フロリゲンの構造生物学的な解析については、概ね計画通りに進展している。すなわちFACの構成タンパク質に関する発現系の構築や、花成リプレッサーTFL1に関する生化学的な解析などが計画通りに進行した。さらに、活性化複合体と抑制複合体の間の変換過程を生化学的に検討するなど、一部で当初想定を上回る成果も得られている。茎頂メリステムの相転換の解析については、当初計画した微量DNAによるメチル化DNAのシーケンシングを完了することが出来た。解析に十分な質のデータが得られたので、情報解析を進めている。またジーンターゲティングにより作出したOsMADS15-mOrangeイネは茎頂で強いmOrange蛍光を検出可能であったので、花成初期の詳細なイメージング解析を行うことが出来た。フロリゲンによるジャガイモ形成については、種々のプロモーターの制御下でイネHd3a及びジャガイモFTホモログを発現する形質転換ジャガイモを作出した。また変異導入したFTによる機能解析も計画通り進行している。フロリゲンによるイネの分枝形成についても、FACが関与することを明らかにした。 フロリゲンによる植物改良の可能性についても、これまでに作出したHd3aの発現量を変化させたイネをもちいて穂形質の調査をおこない、Hd3a量と穂の分枝の関連を明らかにした。ジーンターゲティングによるフロリゲン機能改変イネの作出も継続している。
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Strategy for Future Research Activity |
フロリゲンの分子機能の解析については、茎頂メリステムのトランスクリプトーム解析で見出した遺伝子の詳細な発現解析を開始する。花成リプレッサーTFL1の解析では、受容体との相互作用能の関与を形質転換の手法によって検討する。また、TFL1の長距離移動能についても、その発現部位と蓄積部位の詳細な比較を通して明らかにする。フロリゲンの長距離移動に関しては、FTIP1の細胞内局在やフロリゲンとの関連など細胞生物学的な解析を開始する。 フロリゲンの構造生物学的な解析については、標的DNAを含むFACの構造解析を継続すると共に、花成リプレッサーTFL1複合体の構造解析も行う。また、活性化複合体と抑制複合体の間の変換過程もNMRを用いてより定量的に進める。茎頂メリステムの相転換の解析については、メチロームデータの情報解析を継続すると共に、mRNA-seqやsmall RNA seqの結果との統合を試みる。茎頂メリステムのイメージングでは、OsMADS15-mOrangeイネに野生型や変異型のHd3a-GFPを2重に形質転換した植物を育成し、これらのメリステムの経時的な観察を試みる。フロリゲンによるジャガイモ形成については、前年度までに作出した多数の形質転換ジャガイモを材料に、フロリゲンによるジャガイモ形成がFACを介している可能性について検討する。 フロリゲンによる植物改良の可能性についても、昨年度のHd3aに加えて、これまでに作出したRFT1の発現量を変化させたイネを用いた穂形質の調査を開始し、フロリゲン量と穂の分枝の関連を明らかにする。ジーンターゲティングによるフロリゲン機能改変イネの作出も継続する。
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Research Products
(64 results)
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[Presentation] Activation of a Rho Family GTPase OsRac1 by the NLR Family Immune Receptor Pit on the Plasma Membrane Plays a Critical Role in Rice Innate Immunity.
Author(s)
Yoji Kawano, Akira Akamatsu, Keiko Hayashi, Yusuke Housen, Jun Okuda, Ayako Nakashima, Hiroki Takahashi, Hitoshi Yoshida, Hann Ling Wong , Tsutomu Kawasaki, Ko Shimamoto (島本 功)
Organizer
第35回日本分子生物学会年会
Place of Presentation
福岡国際会議場・マリンメッセ福岡
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