2013 Fiscal Year Annual Research Report
実行系機能の脳内メカニズム-最新技術で神経回路の構成と働きに心の動作原理を探る
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24223004
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
筒井 健一郎 東北大学, 生命科学研究科, 准教授 (90396466)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大原 慎也 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (10570038)
飯島 敏夫 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (90333830)
渡辺 正孝 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 特任研究員 (50092383)
櫻井 芳雄 京都大学, 文学研究科, 教授 (60153962)
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Project Period (FY) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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Keywords | 短期記憶 / 傍細胞記録 / 遅延ニューロン |
Outline of Annual Research Achievements |
頭部固定したラットに遅延反応課題を遂行するように訓練し、マルチユニット活動を記録する実験を行った。従来、げっ歯類における二次運動野、および帯状皮質とされていた領域の境界あたりに、遅延期間中に持続的発火活動を示す「遅延ニューロン」が多く存在することを見出した。遅延期間中の活動が、感覚情報(手がかりの位置)を反映しているのか、運動情報(運動の方向)を反映しているのかを検証するため、一部のラットについては、遅延順・逆反応課題(順反応:手がかり刺激と同じ方向に反応する、逆反応:手がかり刺激と逆の方向に反応する)を訓練し、順反応時と逆反応時の脳活動を比較した。その結果、記録領域には、感覚性・運動性のニューロンの両方が分布していることが明らかになった。 さらに、ラットの前頭葉背内側部において「遅延ニューロン」から記録を行い、蛍光タンパク質の遺伝子をコードするプラスミドを注入する実験を行った。慢性的に記録を行った後、組織標本を作成し、蛍光タンパク質を発現しているニューロンを蛍光顕微鏡下で観察した。その結果、遅延ニューロンの多くは他の領域に投射する錐体細胞であったが、一部は、その他の介在ニューロンであることが明らかになった。また、これらの細胞は、大脳皮質の特定の層に限局せず、一様に分布しているようであった。また、錐体細胞の投射は、Ⅱ・Ⅲ層からは、前頭葉内側部や頭頂連合野、Ⅴ層からは、背内側線条体が主なターゲットとなっていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
行動中のラットにおけるニューロン活動の記録および標識細胞の組織学的解析は、予定通り進んでいる。研究の進捗をスピードアップするために、直早期遺伝子を利用した解析法や、ウィルスベクターを使った経路選択的遮断など、神経回路の構成と機能を解析するための新たな手法の導入も準備しており、残りの期間内で十分な成果が得られることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、単一ニューロン活動の記録および、標識された細胞の組織学的解析を行い、短期記憶の背景にある局所回路の構成および機能の解析を行う。研究の進捗をスピードアップするために多角的な解析を行うこととし、これに加えて、以下の解析も多なう。遅延反応課題を遂行させたラットを速やかに sacrifice し、活動依存的に発現が増加する直早期遺伝子(c-fos など)を発現しているニューロンを、抗体染色によって同定する。Sacrifice の直前にラットが遅延反応課題を行っている間に、高頻度の発火を繰り返していた遅延ニューロンがこれによって同定されるはずである。こうして同定した多数のニューロンにおいて、遺伝子発現解析を行うことにより、遅延ニューロンにおいて特異的に発現している受容体のサブタイプ等が同定することができる。
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