2012 Fiscal Year Annual Research Report
希土類添加窒化物半導体における赤色発光機構の解明/制御による高輝度発光素子の開発
Project/Area Number |
24226009
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤原 康文 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10181421)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 博 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (30133929)
寺井 慶和 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (90360049)
小泉 淳 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30418735)
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Project Period (FY) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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Keywords | 希土類元素 / エネルギー輸送機構 / 局所構造 / オプトロニクス |
Research Abstract |
研究代表者は、従来の発光ダイオード(LED)とは全く発光原理が異なる、ユウロピウム(Eu)添加GaNを用いた窒化物半導体赤色LEDの開発に、世界に先駆けて成功している。本研究では、究極のナノテクノロジーである、半導体への原子レベル制御Eu添加手法を基盤とし、計算機ナノマテリアルデザイン手法との強力な有機的連携のもとに、Eu励起機構の解明と制御に立脚して、日本発オリジナルである「Eu添加窒化物半導体を用いた赤色LED」の高輝度化を達成することを目指す。 今年度は既に実績のあるEu添加GaNに関して、【課題1:励起・緩和に関わるエネルギー輸送機構の解明】に取り組み、次年度以降の制御やデバイス作製の基礎とした。(1)励起波長を連続的に変えながらEuイオンを直接、共鳴的に励起(直接励起)するCombined Excitation-Emission Spectroscopy (CEES)法により、周辺局所構造の異なる8種類のEu発光中心が共存することは既に明らかにしている。個々の発光中心の発光寿命や励起断面積を評価することにより、それらの相対濃度を調べた結果、励起されたGaN母体からのエネルギー輸送が起こりやすいEu発光中心(OMVPE7)は全体の数%であることを明らかにした。(2)今年度導入した「顕微発光分光装置」を用いて、それら発光中心の空間分布を調べたところ、発光中心毎に空間分布が異なることを示唆する結果が得られた。(3)Eu,Mg共添加試料においてCEES測定を行ったところ、Mg共添加に起因するEu発光中心の新たな形成が観測され、熱処理や電子線照射により大きく変化することが可視化された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Eu添加GaN中に形成されるEu局所構造を明確に評価するCEES法と、空間分解能サブumを有する顕微発光分光法を組み合わせた独自の評価装置を研究室で立ち上げることに成功した。その結果として、本研究課題で取り上げる「GaN 母体からEu へのエネルギー輸送機構と不純物添加効果の解明」を進める上で、結晶成長・不純物添加条件との関連について定量的な指針を得ることができるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降は、平成24年度の研究課題を継続的に発展させながら、その知見を活用して研究のフェイズを「エネルギー輸送機構の制御と実デバイスでの実証」へ移す。 【課題2】不純物共添加(同時ドーピング)効果の解明: 【課題1:励起・緩和に関わるエネルギー輸送機構の解明】で明らかにしたGaN母体からEuイオンへのエネルギー輸送機構を制御し、Eu発光の高輝度化を達成する。我々は既に、マグネシウム(Mg)をEuとともにGaNへ共添加することにより、Eu-Mg複合発光中心(Eu原子の周辺にMgが配置した局所構造)に起因する新しいEu発光が生じることを明らかにしている。また、そのEu発光強度が単なるEu添加GaNに比べて、10倍程度、増大することを見いだしている。さらに、窒素雰囲気での熱処理により、新しく観測されるEu-Mg発光が消失する一方、アンモニア雰囲気熱処理により回復することを明らかにしている。以上の結果は、Mgに束縛された水素がEu-Mg発光中心の励起機構を支配していることを示唆している。本研究では、計算機ナノマテリアルデザインと連携して、水素の役割を解明するとともに、水素に変わる、別の元素をさらに共添加することによりEu-Mg発光中心の安定化を目指す。さらに、Mgに比べて、よりエネルギー輸送が促進される元素の探索も併せて行う。一方、GaNへEuと不純物を共添加することにより、エネルギー輸送過程の鍵を握るバンドギャップ内でのトラップ深さが変化することが予測される。その様子を定量的に評価するためにDLTS測定を行う。また、成長面方位によるEu局所構造の制御についても検討する。本課題で得られた成果を基に、実際にLEDを作製し、その高輝度化を確認する。
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