2013 Fiscal Year Annual Research Report
高次機能半導体ナノフォトニックデバイスとその光RAMへの応用
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24226011
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
河口 仁司 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (40211180)
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Project Period (FY) |
2012-05-31 – 2015-03-31
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Keywords | 半導体レーザ / 先端機能デバイス / 偏光双安定 / スピントロニクス / 光RAM / 偏光無依存高屈折率差サブ波長回折格子 / 低消費電力光フリップ・フロップ / スピン緩和時間 |
Research Abstract |
平成25年度は以下の研究項目で大きな研究成果を得た。 1.高次機能ナノ半導体レーザ 偏光双安定VCSELと、我々が考案した偏光無依存高屈折率差サブ波長回析格子(HCG)を組み合わせることにより、発振偏光により出力光導波路の切り換えが可能なデバイスを考案した。SOI基板上に偏光無依存HCGと導波路を作製し、外部から直線偏光をもつ光を入射し、偏光により出力導波路を切り換えることができることを実験的に実証した。又、偏光無依存HCG-VCSELを作製し、室温で光励起レーザ発振に成功した。又、電子スピン緩和時間が長い (110)GaAs/AlGaAs量子井戸(QW)への電気的スピン注入をめざし、Fe/AlOxトンネル電極をもつLEDを作製し、1 kA/cm2の高電流密度においてスピン注入を実現し、40 Kで7%程度の注入スピン偏極率を実現した。さらに、(110)GaAs/AlGaAs QWに電界を引加し、室温で37 μmとデバイスで用いるのに十分な距離のスピン偏極電子の輸送に初めて成功した。 2.偏光双安定VCSELとその応用 偏光双安定特性を用い、全光型フリップ・フロップ動作やANDゲート動作が可能であるが、システムへの応用にはこれらの動作のビット誤り率の評価が必要である。全光型フリップ・フロップ動作で1 Gb/sまで、ほぼデジタル信号エラーのない1E-10オーダーの誤り率を実現した。又、ANDゲート動作を含む全光型フリップ・フロップ動作のビット誤り率を評価し、誤り率6E-7を得た。さらに、偏光双安定VCSELによる、全光型フリップ・フロップ動作を利用して、全光型ヘッダ識別を実現した。光パケットのヘッダ部を4ビット500 Mb/s RZ信号、ペイロード部を40 Gb/s 11段PRBS NRZ信号とし、ヘッダの2ビット目の信号によりペイロードの出力先を切り換えることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
それぞれの課題の進捗を自己評価すると次のようになり、総合して冒頭の判定とした。 ・半導体マイクロレーザとHCG-VCSEL:導波路結合型HCG-VCSELを集中的に検討した。特性の解析や、偏光無依存HCG-VCSELの作製・レーザ発振が実現でき、将来有望な素子であると考えている。(自己評価◎) ・スピン注入LEDと円偏光間高速スイッチ:Fe/AlOx MOS構造電極をもつ(110) GaAs/AlGaAs LEDを作製し、1 kA/cm2 の高電流密度においてスピン注入を実現し、40Kで7%程度のスピン偏極率を実現した。(110) GaAs/AlGaAs量子井戸をマイクロポスト状に加工することにより、電子スピンのスイッチングを用いて20-30 GHzの高速な円偏光間スイッチングが可能なことを示したこと、室温で37 μmにわたるスピン偏極電子の輸送を実現したことなど、スピンVCSEL実現の基礎が形成できたと考えられる。(自己評価◎) ・光フリップ・フロップ動作のビット誤り率評価:全光型フリップ・フロップ動作や、ANDゲート動作を含むフリップ・フロップ動作のビット誤り率を初めて評価した。その結果、実用に耐えうることが初めて明らかになるとともに、デバイスや動作条件の最適化の良い指標として、今後用いることができるようになった。(自己評価◎) ・光パケットスイッチへの応用:全光型ヘッダ識別により、ペイロードの出力光を切り換えることに成功した。この方式はヘッダのビット長を制限なく長くすることができる特徴をもつ。(自己評価◎) ・偏光双安定VCSELアレイ:新しい酸化狭窄VCSEL構造の導入により、0.98 μm帯VCSELの二次元アレイ作製が可能になった。又、1.55 μm帯VCSELアレイも試作が終わり、平成26年度にレーザ特性の均一性等の評価が可能になった。(自己評価◎)
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Strategy for Future Research Activity |
11.現在までの達成度に記載したように、現在まで当初計画以上に進展しており、平成26年度は以下の研究を実施し当初目標を達成する。 1.高次機能ナノ半導体レーザ 偏光無依存HCGを共振器とするVCSELを作製し、偏光スイッチや偏光双安定スイッチが生ずるか検討する。又、導波路結合型HCG-VCSELを作製し、VCSELの発振偏光が切り換わることにより、出力導波路がスイッチするかどうか検討する。又、Fe/AlOxトンネル電極をもつ(110) GaAs/AlGaAs LEDをひきつづき検討し、電子スピン注入による円偏光発光を室温で観測し、スピンVCSEL実現に向けた知見を得る。 2.偏光双安定VCSELとその応用 高速動作のため、DBR共振器の反射率を低下させ、大きな離調を用いた時に生ずるスイッチング光入力の急激な増大を防ぐ。ウエハを成長した後、表面側DBRの一部をエッチングにより除去することにより、共振器の反射率を系統的に変え、共振器の反射率低減による偏光スイッチングの高速化をはかる。又、ひきつづき全光型ヘッダ識別を用いた光パケットスイッチングを検討する。4ビットのヘッダの中から、2ビット同時に識別し、4つの出力ポート間のスイッチングを行う。ペイロードは40 Gb/s, PRBS NRZ信号とし、このペイロード信号へのスイッチングの影響をビット誤り率から評価する。安定なANDゲート動作が得られる入力光の条件などを検討し、偏光双安定VCSELを用いたサブシステムの実用に向けた知見を得る。さらに、新しいVCSEL構造を用いて0.98 μm帯の2次元アレイを作製し、レーザ発振特性や偏光双安定特性の均一性を評価する。又、1.55 μm帯VCSELアレイを用い、偏光双安定特性の均一性の評価を行うとともに前記光ヘッダ識別の並列動作等を行う。
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Research Products
(20 results)