2012 Fiscal Year Annual Research Report
ナノヘテロ界面制御に立脚する超酸素イオン伝導体の創出と革新的燃料電池
Project/Area Number |
24226016
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石原 達己 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80184555)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八島 正知 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (00239740)
萩原 英久 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30574793)
伊田 進太郎 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70404324)
|
Project Period (FY) |
2012-05-31 – 2017-03-31
|
Keywords | イオン伝導体 / ナノサイズ効果 / 燃料電池 / 界面 |
Research Abstract |
本研究では、ナノサイズの薄膜で生じる異常酸素伝導の向上の検討を目的に、Pr2NiO4系酸化物とSm添加CeO2からなる薄膜の積層体の酸素イオン伝導性について、18Oを用いて検討を行った。その結果、CuとGaを添加したPr6O11(PNCG)とSm添加CeO2(SDC)のナノサイズの薄膜の積層により、伝導度が大きく向上することを明らかにした。また、このような伝導度の向上が、酸素イオン伝導によることを検討するために18Oを拡散させた。その結果、18Oの拡散が確認でき、観測された酸素の拡散係数は薄膜化により向上することを見出したが、期待したような数桁におよぶ酸素拡散係数の向上は観測されなかった。このような理由を検討するために、酸素同位体の拡散方向を膜に平行な方向から、膜に垂直な方向に変えて検討した。その結果、表面においては酸素の拡散し易い点と酸素が拡散しにくい点があることがわかった。そこで、ラマン分光法で吸収波数の変化とその分布を測定した。その結果、ラマンピークは高波数にシフトしており、製膜した薄膜には引っ張り応力が発生していることがわかった。また引っ張り応力は均一に発生するわけではなく、基板に用いた多結晶のMgOの粒界部分に主に発生していることがわかった。そこで向上する伝導度は酸素イオン伝導度のようであり、このような酸素イオン伝導の向上はおもに大きな引っ張り応力の部分に発生するようであることが推定された。一方、おもにLaGaO3, Y2O3安定化ZrO2との複合膜についても、ナノ薄膜化の影響を検討した。その結果、酸素イオン伝導体のみから構成される積層膜では、ナノサイズの薄膜を作成しても、PNCGとの薄膜の様な酸素イオン伝導性の異常な向上は観測されなかった。そこで、混合伝導体と酸素イオン伝導体のみにおける現象であることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究でナノイオニクス効果の発現する薄膜としてPNCG/SDC膜で有ることを明確にした。酸素イオン伝導の向上機構として薄膜における引っ張り応力が作用していることを示すことができた。また、PNCG膜のSrTiO3やLaGaO3の単結晶膜上への製膜も行い、薄膜の作成に成功した。今後、伝導度の測定を行い、応力との関係を明確にする。一方、Sm(Sr)CoO3とSDCとの3次元膜に相当するダブルカラムナー構造の作成に成功し、膜界面ではナノ領域での機能傾斜ができていることを明確にした。このような傾斜機能と物性との関係を今後、明確にする。今年度は製膜とPNCG/SDC膜の酸素拡散性の測定に時間を要し、当初計画していたホール効果の測定や17O-NMR測定などが行えなかったので、一部、遅れが生じているが、ほぼ当初の計画に沿って研究は進捗している。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は作成した2次元膜の酸素の状態の分析をおもにS-TEM, FIB-SEM,17O-NMR,ホール効果測定装置など用いて行う。とくに今年度18Oを用いた測定で酸素イオン伝導の向上と引っ張り応力の関係が明確になっていることから、次年度は酸素の拡散性と応力の関係をさらに詳細に検討を行いたい。このために、高温の引っ張り試験器を用いて、実際にCeO2に応力を印加し、その伝導度の変化を検討しようと思っている。またこのような応力を発生させる方法として、Auなどの金属を分散したコンポジット材料を作成し、その応力の発生をラマン法で明確にするとともに、応力とラマン吸収波数との関係を求め、ラマンピークの波数から定量的な評価を行えるようにする予定である。 3次元積層膜に相当するダブルカラムラーでは引き続き構造の解析をFIB-SEMを用いて行うとともに、18Oの拡散を行い、酸素の拡散経路をTOF-SIMSで明確にするとともに、ホール効果を測定し、ダブルカラムナー構造によるホール濃度とその移動度の変化を明確にする。伝導度の変化を明確にし、界面構造とイオン・電子伝導の変化の関係を明確にし、また、応力の発生についても検討し、2次元膜との比較を行う。 最終的には作成した2次元および3次元からなる薄膜の燃料電池の電解質への応用の可能性の検討を開始するとともに、応用に伴う起電力の低下などの課題の検討を開始する。
|
Research Products
(7 results)