2014 Fiscal Year Annual Research Report
嗅覚受容体のナチュラルリガンドの同定とその生物学的機能の解明
Project/Area Number |
24227003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東原 和成 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (00280925)
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Project Period (FY) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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Keywords | 嗅覚受容体 / 匂い / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生体内組織や外分泌腺で作られるマウス嗅覚受容体のナチュラルリガンドを同定し、その匂い物質が生物学的・生理学的にどのような機能をもつかを明らかにすることを目的として行っている。昨年度は、卵巣で発現する嗅覚受容体MOR-O1の内在性リガンドを、メス生殖器官の抽出液から精製したところ、物質Aが同定された。本年度は、物質Aの生理的機能の解明を目指した。まず、卵子の成熟過程に関与しているのではという仮説のもとに実験を行った。MOR-O1の転写産物は、成長期卵から受精後6hの胚にかけて検出された。この遅延は、減数分裂を制御する遺伝子に特徴的な発現プロファイルである。そこで、物質Aを卵細胞に投与したところ、第一減数分裂の再開に伴う卵核膜の消失のタイミングを遅らせることがわかった。この遅延がMOR-O1を介しておきていることを検証するために、MOR-O1のノックアウトマウスを作製した。現在、ノックアウトマウスにおいて、卵核膜消失への影響を調べている。また、精巣に発現する嗅覚受容体MOR-S1の内在性リガンドの同定に着手した。MOR-S1は外分泌腺、胃、精巣などの抽出物に応答を示した。本活性の化学的性質を調べたところ、低分子および高分子画分両者に活性が見られるという興味深い結果を得ており、現在精製をおこなっている。また、バイオインフォマティクスの手法を用いて、哺乳類で高度に保存された嗅覚受容体MOR18-1, MOR18-1, MOR103-1の3つを発見した。これらの受容体は様々な組織に発現していることがわかった。そして、これらの受容体の合成香料リガンドを同定することに成功した。現在、ナチュラルリガンドの精製に着手している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトの大きな目的は二つあり、鼻に発現している嗅覚受容体のナチュラルリガンドの同定と、鼻以外の組織に発現している嗅覚受容体の内在性リガンドの同定である。前者に関しては、第一報をNature Chemical Biology誌に発表し、後者に関しては、ノックアウトマウスの解析を待って投稿予定である。大きなテーマであるだけでなく、難しい実験系でもあることから、発表論文は現時点では少ないが、社会から注目を集める成果として発信しつつあるという点と、両者の目的が達成されつつあるという点では順調に進捗しており、予定どおりの成果が見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
MOR-O1に関しては、ナチュラルリガンドおよび内在性リガンドを同定することに成功し、嗅上皮および卵巣における生物学的役割を明らかにすることができるので、当初の目的は達成されると考えられる。また、MOR-S1や哺乳類で保存されている嗅覚受容体についても、アッセイ系は確立しているので、ナチュラルリガンドの精製および同定は達成されると思われる。また、CRISPR/Cas9を用いたノックアウトマウス作製系が確立したことで、当初よりも格段と早いスピードでノックアウトマウスを得ることができるようになったので、生理的意義の解析についてもこれから2年間で目標を達成できると期待される。一方、当初の最終目標として掲げた大規模スクリーニングであるが、精製と構造決定が当初予想されたよりも時間がかかることが判明したので、ランダムスクリーニングから標的嗅覚受容体を絞ったスクリーニングに軌道修正したので、こちらのほうも目標達成は現実的になっている。
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Research Products
(10 results)