2015 Fiscal Year Annual Research Report
オンサイト・リアルタイム細胞分子計測によるスピーキング・セル・アプローチ
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24228004
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
野並 浩 愛媛大学, 農学部, 教授 (00211467)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平岡 賢三 山梨大学, クリーンエネルギー研究センター, 特任教授 (80107218)
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Project Period (FY) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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Keywords | 細胞・組織 / 植物 / 質量分析 / 農業工学 / プレッシャープローブ / スピーキング・セル・アプローチ / 探針エレクトロスプレーイオン化 / 植物工場 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、植物工場においてプレッシャープローブで採集した細胞溶液を探針エレクトロスプレーにより、直接、現場で質量分析を行うシステムを開発し、植物生理情報を制御要素として農業環境制御を行うスピーキング・セル・アプローチ(Speaking Cell Approach)(SCA)法を創成することを目的としている。栽培作物のリアルタイム質量分析を実行し、環境要素変化に伴う代謝変化を植物生理学(理学的)・栽培生理学(農学的)に基づき解明して、省エネを考慮したSCA を確立することによって、食料生産の効率を格段に増大させ、日本が迎えつつある食料危機の回避、食の安全性の確保により、国民を守ることを目指す。 プレッシャープローブに充填するシリコンオイルに電導性イオン液体を混合することで、以前使用していたエンジンオイルの代わりとして、エレクトロスプレーイオン化を実行することが可能となった。また、プレッシャープローブのキャピラリー内にタングステンワイヤーを挿入し、加電することでイオン化効率を従来の方法より1000倍以上向上させることに成功した。これらの改良で、ノイズレベルを従来よりも格段に抑えることが可能となった。実際にトマト植物体のトライコーム細胞で計測を行ったところ、タイプの異なるトライコーム細胞では異なった代謝物が含まれており、同じタイプのトライコームでも隣り合った細胞では、異なった代謝物質が含まれていることが明らかにできた。トマト植物体を破壊することなく、トライコーム細胞のみを対象として計測可能であるため、環境変動要因がどのようにトマト果実の肥大、トマト植物体の成長に影響を与えるのか、細胞レベルでの連続計測が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、プレッシャープローブを用いての細胞膨圧計測と細胞溶液採集を組み合わせた質量分析をエレクトロスプレーイオン化(ESI)法とマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)法で可能にすることができた。さらに、探針エレクトロスプレーイオン化(PESI)法を組み合わせることで、植物組織の表面、および、細胞内の代謝物の質量分析が可能となった。イオン化法が異なっているため、幅広い化学種の分子の質量分析が可能になった。また、サンプル量は細胞1個レベルで可能であり、植物体を破壊せずに連続して計測が可能となった。とくに、トマトトライコーム細胞は、トマト植物体の表面に分化している組織の細胞であり、同様のトライコーム細胞が多数あるとみなすことが可能である。環境変動要因の影響がどのようにトライコーム細胞の代謝に影響を与えるのか、代謝分子計測が可能となったため、実用的にスピーキング・セル・アプローチのための解析の実行環境が整ったとみなされ、おおむね順調に進展していると、判定した。
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Strategy for Future Research Activity |
プレッシャープローブ・エレクトロスプレーイオン化と探針エレクトロスプレーイオン化の質量分析法をオンサイト・リアルタイム細胞分子計測に応用し、環境要因と代謝生理を結びつけることでスピーキング・セル・アプローチによる環境制御法を確立することができる。 まず、トマトトライコーム細胞が環境ストレスに対して応答するのか、明らかにするためにグロースチャンバー内で水耕栽培されたトマト品種Micro-TOMをモデル植物として使用することにより、水耕溶液濃度の変動がどのようにトマトトライコーム細胞の水分状態に反映するのか、プレッシャープローブを用いた計測で明らかにし、浸透圧調節に関連する代謝物質の分析をプレッシャープローブ・エレクトロスプレーイオン化質量分析で明らかにする。水耕溶液の濃度変化を浸透圧調節に伴うインパルス応答、ステップ応答として解析することにより、水耕溶液濃度制御と代謝制御が関連しているのか、明らかにする。また、植物工場内で起こるトマト果実の尻腐れ病の生理異状果実での代謝異常について細胞分子計測で調査し、環境変動とトマト果実での生理代謝異常との関連性について検討する。 連携研究者の九州沖縄農業研究センターの和田との共同研究で、イネの環境ストレス応答をプレッシャープローブ・エレクトロスプレーイオン化質量分析を用いることで解明し、同位体ラベリングを用いることで、玄米における胚乳細胞での代謝と環境ストレスの関連性を明らかにすることにより、環境要因と代謝応答の関連性について検討する。 トマトとイネを用いた研究結果をもとに、プレッシャープローブ・エレクトロスプレーイオン化質量分析による細胞分子計測を詳細に検討したうえで、スピーキング・セル・アプローチを用いた環境制御法について新たな提案を行う。
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Research Products
(7 results)