2013 Fiscal Year Annual Research Report
次世代芳香族科学に向けた新化学、新骨格、新理論、新機能、新技術の創出
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24229001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内山 真伸 東京大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (00271916)
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Project Period (FY) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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Keywords | 芳香族化合物 / 亜鉛アート錯体 / ハロゲンーメタル交換反応 / ベンザイン / 大環状芳香環 |
Research Abstract |
本年度は、『新しい芳香族反応の開発』として、芳香環へのホウ素置換基導入反応を開発した。ホウ素化芳香族化合物は鈴木-宮浦クロスカップリング反応に利用されるなど、合成化学上重要な化合物群のうちの一つである。これまで遷移金属を用いた有機ホウ素化合物の合成法が開発されてきたが、ホウ素アニオン種を用いることができれば、より多様な有機ホウ素化合物の合成法へと繋がると期待される。本反応ではジボロンのホウ素ーホウ素結合の活性化を鍵として系中にて「ボリル亜鉛アート錯体」を発生させる手法を開発し、芳香環へのホウ素化反応を開発した。 まず、ホウ素亜鉛アート錯体の高い求核性を期待し、ハロゲンー亜鉛交換反応を鍵とする触媒的ホウ素化反応を設計した。種々検討の結果、ジボロン、ナトリウムアルコキシド、触媒量のジエチル亜鉛存在下、ハロゲン化アリール化合物が効率的にアリールボロン酸エステルへと変換されることを見いだした。本反応は遷移金属触媒を用いずにジボロンを活性化し、ホウ素化を行う初めての反応であり、種々の官能基との共存が可能であった。 次に、ベンザイン前駆体に対し、ジボロン、ジエチル亜鉛、マグネシウムアルコキシドを用いることで系中にて発生させたボリル亜鉛アート錯体により、ベンザインの生成と生じたベンザインへのホウ素亜鉛化反応が進行することを見いだした。特に、1位に配向基をもつ基質においては、2位に亜鉛、3位にホウ素を位置選択的に導入可能であった。 この他、『低HOMO-LUMOギャップ芳香環のテーラーメード設計と合成』として、フタロシアニン類縁体の合成を行った。分光学、計算化学を用いた詳細な解析を行い、芳香属性の変化についてなど新たな知見を見いだしつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに『新しい芳香族反応の開発』においては幾つかの芳香族反応を開発し、同時に計算化学を用いた詳細な解析を行うことで重要な知見を見いだしつつある。また、『芳香環のテーラーメード設計と合成』においても合成した芳香族化合物の種々の解析により、芳香属性の起源についてなど、新たな知見を見いだしつつある。この他、金属含有芳香環の設計指針や方法論についても進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は以下のプロジェクト『新しい芳香族反応の開発』『芳香族の起源に理論化学でせまる』『金属含有芳香環の創製』『低HOMO-LUMOギャップ芳香環のテーラーメード設計と合成』を合成化学・理論化学・物理化学・分光学を駆使して積極的かつ同時に推進し、芳香族科学の新たな展開に挑戦します。次年度も今年度に引き続き合成化学・理論化学を中心に展開し、新反応開発や新奇芳香族化合物設計および合成法の確立を目指します。 ・新しい芳香族反応の開拓 次年度は、今年度までに開発した新反応について、更なる基質適用範囲の拡大、反応の高効率化を目指し、反応条件の詳細な検討や、分光学・計算化学による遷移状態の構造を含めた反応経路の詳細な解析を行います。また、これらによって得られた知見をもとに、新規芳香族置換基直接導入反応の開発を目指します。 また、超強酸(超ブレンステッド酸、超ルイス酸)中により起きる有機分子の活性化によって発生する高度に電子不足なカチオン分子を利用することによる、概念的に新しい活性有機分子種の関与する新反応の開発と芳香族化合物合成反応としての応用を研究します。 ・低HOMO-LUMOギャップ芳香環のテーラーメード設計と合成 応用研究を指向した低HOMO-LUMOギャップ芳香環の実現には、化合物の安定性を損なわないように、HOMO準位をあまり上げずにLUMO準位を効率的に下げることが必要です。計算化学やこれまでに我々が合成した近赤外色素の知見をもとに、適切な位置へ適切な置換基(電子求引基、電子供与基)導入、適切な金属導入によるデザインと、合成化学を駆使した新たな近赤外色素開発を目指します。
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Research Products
(4 results)