2014 Fiscal Year Annual Research Report
次世代芳香族科学に向けた新化学、新骨格、新理論、新機能、新技術の創出
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24229001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内山 真伸 東京大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (00271916)
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Project Period (FY) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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Keywords | 芳香族科学 / 近赤外光 / 計算化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、次世代芳香族分子を「生み出す・創り出す」「理解する・設計する」「応用する・活用する」の3チームに分け、綿密な連携をとりながら進めている。 芳香族分子を「生み出す・創り出す」プロジェクトにおいて開発した反応は、「触媒非存在下でのカップリング反応」(ACIE2015 の VIP paper)、「ホウ素官能基の自在導入法」(JACS 2014)、「初めてのベンザインの重合法の開発」(JACS2015)は ACS C&EN にも取り上げられた。他にも、複数の論文が SYNFACTS に採択されるなど高い学術的評価を得ており、開発した反応が多くの新たな科学へと繋がると期待されている。 また、芳香族分子を「理解する・設計する」プロジェクトでは、物性や反応の選択性の発現に重要な情報を有している分子の電子状態や反応遷移状態を「理解し・設計する」ため、理論化学・物理化学に挑んだ。独自の芳香族性理論を開発し、カーボンナノチューブの部分構造 (CPP) が、「面内芳香族」というユニークな芳香族性と分子物性の関係を明らかにした (JACS2015)。本手法はこれまで勘や経験に頼ってきた合成化学に、理論計算という「予言性」を組み合わせることで、機能性芳香族化合物を効率的に生み出そうというものであり、その学術的価値や応用分野などへの波及効果は非常に大きいと考えている。 さらに、芳香族分子を「応用する・活用する」プロジェクトでは、「酸化還元により応答する近赤外光色素(JACS2015)」、「溶媒の極性に応答する近赤外光色素(ACIE 2014)」を開発し、各種化学系企業との共同研究がスタートした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
芳香族分子を「生み出す・創り出す」プロジェクトにおいて開発した反応は、そのほとんどが当初の目的を超える意外性と有用性を備えた「ものづくり」の道具となることが判明した。これらの新反応を基盤に、機能性芳香族分子創製に繋げていきたい。本研究において開発した反応は、JACS、ACIE の Very Important Paper、CEJ のHot Paperに選ばれる他、複数の論文がSYNFACTSに採択されるなど高い評価を得ており、これらは開発した反応の学術的価値を示すものと考えている。 芳香族分子を「理解する・設計する」プロジェクトでは、従来法である環内の p(または π)軌道数を数える芳香族性の有無の判別法には限界があることを見いだし、その代替法として理論計算を利用した分子軌道解析法を提唱した。本法は、芳香族、反芳香族、非芳香族の迅速判定に有効であり、ホモ/メビウス/非ベンゼン系の芳香族性に広く応用可能な方法であることが判明した。今後様々な分子、状態の解析に利用可能である。 芳香族分子を「応用する・活用する」プロジェクトでは、上記芳香族解析からいくつかの近赤外光を利活用できる有機分子を生み出すことに成功した。近赤外光の大きな特徴として、ほとんどの物質と相互作用せず、たいていの物質を透過することができる。この性質を利用してバイオイメージングで生体組織の深部まで可視化したり、がんの光線力学療法に応用することが近年注目されている。一般に、有機化合物は、紫外~可視光を利活用するのは得意であるが、近赤外光を利活用できる有機分子となるとほぼ存在しない。 以上の研究の過程で、意外な成果も数多く得られている。「芳香環をオルト位で連結させる新たな重合法」(JACS 2015)は、芳香環を3次元で繋ぐ新たな方法であると同時に、芳香環をらせん状に積載させる手段にもなることがわかってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、次世代の芳香環の化学を切り拓くべく以下の4つの課題を中心に取り組みます。 1. 新しい芳香族反応の開拓(超強酸、超強塩基、触媒、環化反応の開発) 2. 芳香族(ホモ/メビウス/非ベンゼン系芳香族、反芳香族、非芳香族)の起源にせまる 3. 金属含有(有機-無機ハイブリッド型)芳香環の創製 4. 太陽電池・分子イメージング・光化学療法を指向した低HOMO-LUMOギャップ芳香環のテーラーメード設計と合成 目標の1.ならびに2,に関しては順調に成果を挙げることができている。3.に関しては今後の検討が必要であるが、4.もいくつかの成果を既に挙げることができた。したがって、当初の目標に向かって順調に研究が進んでいると考えている。この間、J. Am. Chem. Soc. 誌 8報、Angew Chem. 6誌に代表される化学の主要一般誌への掲載からも、本研究の基盤研究は順調に進んでいると考えている。そのほかにも、Nature Chem.誌、Nature Commun. 誌それぞれ1報ずつ応用研究を掲載することができた。残りの期間においても、「生み出す・創り出す」「理解する・設計する」「応用する・活用する」グループ間の互いに密接に連携した研究を推進し、新たな芳香族概念の提唱から、近赤外有効活用といった応用研究まで「生命科学研究に新しい“学”と“術”を生み出す」化学へと発展させたい。
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Research Products
(52 results)
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[Journal Article] Ambipolar organic field-effect transistors based on solution-processed single crystal microwires of a quinoidal oligothiophene derivative2015
Author(s)
J. C. Ribierre, L. Zhao, S. Furukawa, K. Tomoka, D. Inoue, A. Muranaka, K. Takaishi, T. Muto, S. Matsumoto, D. Hashizume, M. Uchiyama, P. Andre, C. Adachi and T. Aoyama
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Journal Title
Chem. Commun.
Volume: 51
Pages: 5836-5839
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Non-volatile Organic Memory with Sub-millimetre Bending Radius2014
Author(s)
R. H. Kim, H. J. Kim, I. Bae, S. K. Hwang, D. B. Velusamy, S. M. Cho, K. Takaishi, T. Muto, D. Hashizume, M. Uchiyama, P. Andre, F. Mathevet, B. Heinrich, T. Aoyama, D.-E. Kim, H. Lee, J.-C. Ribierre and C. Park
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Journal Title
Nature Commun.
Volume: 5
Pages: 3583-3594
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] オルトアラインの重合2014
Author(s)
水越 祥英, 巳上 幸一郎, 内山 真伸
Organizer
第4回CSJ化学フェスタ2014
Place of Presentation
船堀
Year and Date
2014-10-14 – 2014-10-16
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