2015 Fiscal Year Annual Research Report
Towards Next-Generation Aromatic Chemistry: Development of Synthetic Methods, Theory and Novel Functionalities
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24229001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内山 真伸 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (00271916)
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Project Period (FY) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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Keywords | ロイコ色素 / 近赤外光 / ローダミン / メカノクロミズム現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、『近赤外芳香族分子の合成』として、ロイコ色素の開発に取り組んだ。クオリティ・オブ・ライフの観点からこれまで以上に非破壊・非侵襲の手法が強く望まれているが、中でも可視光と赤外光の間に位置する近赤外光は人体・物質をよく透過し、有害性も低いことから、「迅速・安価な3次元画像診断法」や「光熱・光線力学療法」への応用が期待されている。しかしながら、近赤外光に応答する有機色素は未だ数少なく、次世代の近赤外医療に向けた新分子・薬剤の創製は喫緊の課題である。このような条件を満たす新世代の有機色素を開発すべく、可視光線の吸収・発光において優れた性質を示すローダミン類に着目し、これを二つ融合させて近赤外色素を得る着想に至った。ローダミンを2量化させたABPX は、酸度に応じて異なる色調(無色、赤色、紫色)を示し、異なる色の蛍光発光(緑色、無色、赤色)を示した。精査したところABPXは酸度に応じて三つの分子構造に変化することを突き止めた。この機構を利用することで、銅イオンの有無と濃度を色で識別するセンサーを開発することに成功した。色調を用いることで目視により濃度を識別でき、迅速かつ安価な検査法を実現するABPXは色素として高い価値を有する。さらに発光性の改善を目指し、窒素上の炭素鎖を環化した誘導体を設計・合成することで高い発光効率を実現した。また、物理的な力(引っ張り、すり潰し、加圧など)に応答して物質の色彩や発光色が変わるメカノクロミズム現象を見いだし、固体状態で青色発光と近赤外発光を切り替えることが可能であることを明らかにした。分光学と理論計算の両輪で、二段階変化の機構とその閾値について明らかにし、酸との応答性を向上させて生体イメージングに適した誘導体も得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の成果の一部を特許として出願したところ、筆記具に色素を利用している化学企業や、太陽電池を扱う研究機関などから複数の問い合わせがあり、本研究で開発した分子群を提供し応用研究が始まっている。「近赤外吸収/発光」と「二段階のスイッチング機能」を併せ持つ有機色素はこれまでに例が無く、当初目的としていた医療分野だけではなく、筆記具・太陽電池・カットフィルターなどの幅広い産業分野への波及効果が見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は以下のプロジェクト「新しい芳香族反応の開拓」「芳香族の起源にせまる」「金属含有芳香環の創製」「太陽電池・分子イメージング・光化学療法を指向した低 HOMO-LUMO ギャップ芳香環のテーラーメード設計と合成」を合成化学・理論化学・物理化学・分光学を駆使し、新反応開発や新奇芳香族化合物設計および合成法の確立を目指す。 「新しい芳香族反応の開拓」では、芳香環の直接的水酸化・アミノ化反応の開発、C-N 結合切断型 Stille カップリングの開発に取り組む。 「太陽電池・分子イメージング・光化学療法を指向した低HOMO-LUMOギャップ芳香環のテーラーメード設計と合成」では、反芳香族化合物に着目した近赤外光利活用分子の開発に挑む。化合物の安定性を損なわないように、HOMO 準位を上げずに LUMO 準位を効果的に下げるため、計算化学とこれまでの我々の知見をもとに効率的に遂行する。
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Research Products
(20 results)
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[Journal Article] "Cation-Stitching Cascade": exquisite control of terpene cyclization in cyclooctatin biosynthesis2015
Author(s)
Hajime Sato, Kazuya Teramoto, Yui Masumoto, Noriyuki Tezuka, Kenta Sakai, Shota Ueda, Yusuke Totsuka, Tetsuro Shinada, Makoto Nishiyama, Chao Wang, Tomohisa Kuzuyama, and Masanobu Uchiyama
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 5
Pages: 18471-18476
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Reversible Near-Infrared/Blue Mechanofluorochromism of Aminobenzopyranoxanthene2015
Author(s)
Masaru Tanioka, Shinichiro Kamino, Atsuya Muranaka, Yousuke Ooyama, Hiromi Ota, Yoshinao Shirasaki, Jun Horigome, Masashi Ueda, Masanobu Uchiyama, Daisuke Sawada, and Shuichi Enomoto
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Journal Title
J. Am. Chem. Soc.
Volume: 137
Pages: 6436-6439
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] 高歪みアルキンの重合2016
Author(s)
岡田 侑己, 水越 祥英, 巳上 幸一郎, 宮本 和範, 内山 真伸
Organizer
日本薬学会第136年会
Place of Presentation
パシフィコ横浜、神奈川県横浜市西区
Year and Date
2016-03-26 – 2016-03-29
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