2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24240001
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
小柴 健史 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (60400800)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河内 亮周 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (00397035)
田中 圭介 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (20334518)
安永 憲司 金沢大学, 電子情報学系, 助教 (50510004)
ルガル フランソワ 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (50584299)
松本 啓史 国立情報学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (60272390)
小林 弘忠 国立情報学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 研究員 (60413936)
西村 治道 名古屋大学, 情報科学研究科, 准教授 (70433323)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 量子プロトコル / 量子暗号 / 対話証明 / 量子計算量理論 / 量子アルゴリズム / ゲーム理論 / 通信計算量 |
Research Abstract |
長年の未解決問題である1ラウンド量子対話型証明の能力の究明に向けて,量子計算量クラスにおいて困難である局所ハミルトニアンの冗長性問題について検討し,当該問題が多項式階層第2レベルの量子版に属さないと思われる証拠を与えるとともに適切な形に問題を再定義することで完全性を証明した. 量子暗号プロトコルに関しては,量子ブラインド計算と呼ばれるプロトコルが観測ベース量子計算モデルのもとで与えられているが,観測系と計算系が分けられていて観測は観測系だけでおこなうという補助キュービット駆動型に制限しても量子ブラインド計算が実現することを示した.また,サーバは量子状態を作成送信するだけでクライアントが観測を行うタイプの量子ブラインド計算は,任意プロトコル中で用いても安全性を保つことができるという性質を有することを示した. プロトコルの構築や解析に必要不可欠な行列積に着目し,その問題の複雑さを究明するための新しい代数的手法を開発し,従来の方法より高速に半環上の行列の積を計算する量子アルゴリズムの構築に成功した. 代表的なプロトコルであるコミットメントに対しゲーム理論的な枠組みによる安全性の定義を与え,既存の暗号理論的な安全性と等価であることを示し,安全性における利得関数を既存研究と比べもっとも一般的な形で与えることに成功した. 素体上多項式の低次性判定に必要な質問計算量の上界と困難性増幅への応用,耐量子計算暗号にも応用されるランダム線形符号の復号のための質問計算量解析のフーリエ解析的なアプローチを与えた.また耐量子性を持つ頑健な共通鍵暗号の鍵長の限界について既存方式が最適であることの証明も与えた. 通信チャネルのモデル化に関連して,参加者が通信の部分情報を知っているような状況に対応するグレーボックスモデルを対象に,ステガノグラフィーと呼ばれる情報隠蔽に関するプロトコルについて考察した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子計算量理論と量子情報理論の両者を本質的に必要とする量子対話証明や量子暗号プロトコルに関して,昨年度と同様一定の成果を上げることに成功している.また,プロトコルを構築・解析をするための基礎技術の開発を行うことができ,量子プロトコル理論の深化につながるものと期待できる.古典暗号理論の観点からも研究成果を創出しているが,量子プロトコル理論の構築に向けた新たな指針を与えるものとなっている.ゲーム理論的な考え方やステガノグラフィーなど新しい理論に関する考察も深められており,今後の有機的な結合へ向けた基盤整備を十分に進められたものと判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は,初年度同様,研究分担者にはそれぞれの得意領域(量子対話証明,計算量理論,暗号理論,ゲーム理論など)を活かし,「量子プロトコル理論の深化」を目指して,各要素技術を深めるための研究を遂行してもらった.昨年度に,プロトコル構築・解析のための基礎技術に関する成果が得られ,それを有機的に活かすために,研究分担者間の連携を密にするために,情報交換のためのミーティングの頻度を高める.また,研究代表者が参加している他の科研費(基盤研究A)プロジェクト「マルチユーザ型量子ネットワーク」(代表:林正人)とも連携していく.
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