2014 Fiscal Year Annual Research Report
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24240001
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
小柴 健史 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (60400800)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河内 亮周 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 講師 (00397035)
田中 圭介 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (20334518)
安永 憲司 金沢大学, 電子情報学系, 助教 (50510004)
ルガル フランソワ 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (50584299)
松本 啓史 国立情報学研究所, 情報学プリンシプル研究系, 准教授 (60272390)
小林 弘忠 国立情報学研究所, 情報学プリンシプル研究系, 研究員 (60413936)
西村 治道 名古屋大学, 情報科学研究科, 准教授 (70433323)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 量子暗号 / 量子対話証明 / 秘匿情報検索 / 量子アルゴリズム / 通信複雑度 / 質問計算料 |
Outline of Annual Research Achievements |
量子プロトコル理論の研究成果としては,対話証明および秘匿情報検索に関するものに大別される.量子対話型証明の研究では,Mariott-WatrousのArhur-Merlin型量子対話型証明を一般化したモデルと計算量クラスを提案し,完全問題の存在やBabaiの崩壊定理の量子版などの計算量的構造を明らかにした.また,検証者が証明者に報酬を支払う仕組みをもつ合理的対話証明において,既存プロトコルでは悪意のある検証者が報酬を意図的に下げることができることを指摘し,それを防ぐための合理的対話証明の安全性定義を与え,それを満たすプロトコルを提案した.Broadbent-Fitzsimons-Kashefiによるブラインド量子計算の枠組みを一般化し,片側プライバシーを持つ暗号プロトコルを構成するための枠組みを与えた.この枠組みを利用して量子秘匿情報検索のプロトコルを与え,既存のプロトコルと比較して通信複雑度を著しく改善した. 量子プロトコル理論を深めるためには要素技術としての量子アルゴリズムに対する理解も重要である.理論計算機科学の基本的な問題である部分グラフ発見問題に着目し,量子ウォークに基づく既存の技法を発展させて,グラフ上の3クリーク及びハイパーグラフ上の4クリークに対して従来の方法より高速な量子アルゴリズムを構築した.また,古典の計算量クラスを量子的に再検討するため,ポストセレクションを持つ量子計算のサブクラスを考え,そのサブクラスが最悪時一方向性置換を特徴付ける計算量クラスを含むことを明らかにした.さらに,非適応的な質問計算についての情報理論的モデル化を行うことでその質問計算量の下界を証明するための新たな技法を得た.符号理論の重要な問題であるランダム線形符号に対するリスト復号問題の質問計算量の上界の新たなフーリエ解析的手法を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子対話証明研究は量子計算分野における中心的課題であり,未解決問題への本質的解決へ向けて着実に歩を進めていると考えることができる.また,対話証明にゲーム理論的なアイデアを導入したり,通信複雑度を議論するために量子ブラインド計算を用いるなど,新規なアイデアを創出しており,プロトコル理論に新しい展開を与えている.また,量子プロトコルを議論する上で欠かせない量子アルゴリズムの能力究明に対して,新しい量子アルゴリズムを見出すことが難しくなってきている状況においても,新しい手法を見出すことに成功している.近年,物理学的な観点から見出された計算モデルに対して計算機科学的なアプローチを導入し,新たな研究上の潮流を作りつつある.以上のことから,量子プロトコルに関して更なる発展をさせながら裾野を広げていると考えられ,プロジェクトとして順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
計画調書の段階では想定していなかった,量子プロトコル理論の発展に寄与すると期待される新規テーマの創出があり,広がった裾野に対して中心的なトピックになりうるかどうか検討する予定である.特に,今年度は研究成果として新たな技法の創出が数多くあり,それらの発展可能性についても検討する.検討すべき事項が増えた以外の特段の問題点はないが,研究速度を高めるために,国内外の研究者と連携して研究を進めていくことも検討する.
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