2012 Fiscal Year Annual Research Report
高精細3次元音空間情報のセンシングとディスプレイ技術の開発
Project/Area Number |
24240016
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 陽一 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (20143034)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩谷 幸雄 東北学院大学, 工学部, 教授 (10250896)
坂本 修一 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (60332524)
本多 明生 東北福祉大学, 総合福祉学部, 助教 (80433564)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 3次元聴覚ディスプレイ / 音空間知覚 / センシング / キルヒホッフ・ヘルムホルツ方程式 / 球面調和関数展開 / アンビソニックス / バイノーラル再生 |
Research Abstract |
コミュニケーション技術の高度化に極めて有効な3次元音空間情報の取得と再生を高精度で行うシステムの実現には,原理的に厳密な音場情報の取得・合成が可能であることと,迫真性や臨場感などの高次感性情報を高める上で重要な聴取者の動的挙動への対応が可能であることが必須である。本研究の目的は,これらの特性を持つキルヒホッフ・ヘルムホルツ方程式や球面調和展開に基づく方法と音伝搬伝達関数合成法を用い,3次元音空間情報のセンシングならびに聴覚ディスプレイを対象として,その高度化と合理的なシステム規模による実現技術を開発することである。 平成24年度は,聴覚ディスプレイ技術の最終段である聴取者への音提示デバイスについて,スピーカを使用したトランスオーラル型の提示デバイスを想定し,音空間聴取時の聴取者の動きに対応すべく,ステレオカメラを用いて聴取者の頭部の動きをセンスする新しい技術や,聴取者の微小な動きにも頑健に動作するクロストークキャンセラ用スピーカ配置について研究を進めた。これらの技術は,ごく少数のスピーカ数で聴取者に適切な音空間を提示するために必須の技術であり,高精度な音空間を合理的なシステム規模で実現する際の要素技術となる。本研究で確立した位相限定相関法を用いた聴取者の頭部位置センシング手法は,シンプルな処理ながら,聴取者の比較的はやい頭部運動にも充分に追従することができた。また,クロストークキャンセラ用スピーカ配置の検討では,新しい評価指標を提案することで,5度程度の聴取者の頭部位置変化にも頑健に対応することができるものであった。 これ以外にも,頭部運動中の音空間知覚に関する研究や,球状マイクロホンアレイを用いた頭部伝達関数合成手法の研究,音空間高精度提示により実現されるコンテンツから受ける高次感性情報の知覚機序の解明などにおいて,多くの成果が得られ,対外発表も積極的に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は,本研究プロジェクトの初年度であり,最終的な実現目標である3次元音空間情報のセンシングならびに聴覚ディスプレイ技術のシステム応用を念頭にした要素技術の洗い出し,検討が重要な課題となっていた。 このような状況の中,すでに研究実績で記載したとおり,最終的に聴取者に精度高く音空間を提示するために必須となる,頭部位置センシング技術,クロストークキャンセラ用スピーカ配置手法,頭部伝達関数合成法など,核となる要素技術について,すでに国内外で発表できる成果が得られた。また,システムが実現された際に視聴者が知覚する高次感性情報の知覚機序についても検討がなされ,システムにより再現される音空間の精度を評価する際の主観的指標としての適用可能性を秘めた知見も得られている。 以上の成果を総合的に判断し,当初予定通り順調に研究が推移していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は当初予定通り着実に成果が得られ,順調に研究が推移している。これらの要素技術は最終的にはシステムとして組み上げていく必要があるものであることから,今後は,平成24年度と同様に必要不可欠な要素技術の洗い出し,開発と平行して,3次元音空間情報のセンシング・聴覚ディスプレイシステムとしての統合に向けた研究を進めていく。特にHigh-order Ambisonicsを規範とした音空間収音・再生手法では,従来の球状配置だけでなく,不整形のマイクロホン・スピーカアレイを想定したアルゴリズムの改良,高度化を推進する。また,頭部伝達関数に関連した研究についても,頭部伝達関数の精密測定手法の確立や,頭部伝達関数の音空間知覚手がかりの解明に向けた研究を精力的に実施していく。 その一方で,これらシステムを作る上で基盤となる人間の音空間知覚についても,聴取者の頭部運動と音空間知覚の関係についてさらに継続的に研究を進め,人間の音空間知覚モデル構築に向けた知見を蓄積していく。
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