2012 Fiscal Year Annual Research Report
医薬副作用に特徴的な化学構造マイニングと早期シグナル検出
Project/Area Number |
24240025
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
岡田 孝 関西学院大学, 理工学部, 理工学部研究員 (00103135)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鷲尾 隆 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (00192815)
猪口 明博 関西学院大学, 理工学部, 准教授 (70452456)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 副作用 / データマイニング / シグナル検出 / 化学構造 / 医薬品 |
Research Abstract |
本研究の目的は医薬品の副作用に及ぼす化学構造の重要性を明らかにすることである.日本で販売されている医薬品の添付文書をもとに副作用毎に特徴的な医薬品の構造をマイニングし,また,それらがシグナル検出においても有効であることを示す点にある.本年度は,下記の3点について研究を遂行した.以下,それらの内容について説明する. 1. 基本データの整備:医薬品の構造と副作用に関するソースデータとしては,JAPICが発行する2012年度の日本国内医薬品の添付文書データベースを用いた.このHTMLファイルから医薬品一般名を抽出し,一般名からKEGGとPubChemデータベースを用いて医薬品の化学構造式を取得し,SMILES表記にてデータベース化した.なお,KEGG非収載の化合物については,別途手作業で構造式を取得した.この際,無機物質や高分子化合物,混合物を除去している.また,取得した構造式群から塩の除去やプロドラッグの本来の構造への変換,光学異性体の認識等の前処理作業を行った.その結果,1138化合物について基本的なデータの整備を完了した. 2. 肝臓関連副作用に特徴的な構造のマイニング:添付文書HTML中の重大な副作用記述から肝機能の異常に関する副作用を抽出し,それらを例えば肝炎と黄疸にグループ化して,これら副作用の有無をターゲットに設定した.構造式データからの副作用に特徴的な構造マイニングは,カスケードモデルによる方法とAcGM法によるグラフマイニングの2種類で行った. 3. 上記で得られた部分構造群をPMDAから公開されているJADER自発報告データベースへ試験的に適用し,シグナル検出において化学構造による予測が有効に機能するか否かを検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の研究では,データベースの整備から始めてシグナル検出に至るまで期間の延長が必要ではあったが,当初計画どおりの研究を遂行することができた.特に国内医薬品のデータベース整備と化学構造マイニング法開発に関しては,これまでの経験もあり,順調に進んだと考えている.ただし,シグナル検出においてシグナル強度を自動的にグラフ化して表示するシステムの開発には取りかかれていない. 研究の最終目的は,副作用予測において化学構造による特徴づけが有効であることを示す点にある.この点で最大の問題点は,ターゲットとして設定した肝臓関連副作用が添付文書において多岐にわたる自然言語で表されており,明確なグループ化が困難なことであった.毒性学の専門家の参加をお願いし3種類ほどのグループ化を試みて,それぞれについてマイニングを遂行した.しかしながら,それぞれの場合に得られた部分構造群は少しずつ異なっており,しかもそのどれを採用すべきかの規範を定めることが困難であった.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究によって,副作用発現において化学構造が重要であることを立証するためには,2種の大きな問題点の存在が明確となった. 第1点は,マイニングした化学構造が有効であることを示すためには,ターゲットとなる副作用の範疇自体が明確なものでなければならないことである.そのために次年度以降は,横紋筋融解症や無顆粒球症のように,誰が診断しても同一の疾患となるような副作用をターゲットに選定することとした.このような明確な対象に対して,本研究で提起する方法論が有効であることが確認された後では,肝臓関係副作用のような不明瞭な対象でもマイニング結果を活用できると想定できる. 第2点は,副作用に対して特徴的な化学構造が得られたとしても,薬効での特徴的構造のような明白なものとはならないことである.遺伝要因や環境要因が影響するのは当然であり,化学構造の影響を立証するには検証が必要である.対象となる市販医薬品が1000種類程度,特定の副作用を発現するものは100種程度であることを考えれば,通常の交叉検証法などは適用が難しい.そこで,本邦で市販されている医薬品からのマイニングによる副作用原因化学構造を確定後に,その結果を外国の医薬品に適用して検証することが適当であると考える.
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