2013 Fiscal Year Annual Research Report
医薬副作用に特徴的な化学構造マイニングと早期シグナル検出
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24240025
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
岡田 孝 関西学院大学, 理工学部, 理工学部研究員 (00103135)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪口 明博 関西学院大学, 理工学部, 准教授 (70452456)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 副作用 / データマイニング / シグナル検出 / 化学構造 / 医薬品 |
Research Abstract |
本年度は,対象副作用を横紋筋融解症と無顆粒球症に設定してマイニングを実施し,さらに外国医薬品とのデータベース統合を行って結果の有効性検証を可能とした.詳細について以下に述べる. 横紋筋融解症と無顆粒球症は,本邦市販医薬品1187種中92種,173種の医薬品で重大な副作用として記載されている.これらに特徴的な基本活性構造BAS群をマイニングした結果,それぞれ16種と13種の構造を得た.横紋筋融解症ではBAS群で54種の医薬品副作用を説明できたが,副作用を起こさない医薬品も70種存在し,BAS群は警告とみなすべきことがわかった.なお,採用した2種のマイニング法は本質的に同様の結果を与えた.無顆粒球症についても同様の結論である. 外国医薬品によるBAS群の検証のため,DrugBank v.2を利用した.approved, drawnの両カテゴリーにある1470医薬品を抽出し,化学構造と一般名を手がかりとしてJAPICとの比較により同一医薬品を検知し,2001医薬品を含む統合データベースを作成した.両データベースに共通して存在するものが703種,DrugBankのみが767種であった.共通医薬品での副作用頻度の比較から,DrugBankの記述基準が日本の添付文書に比して甘いことが判明した.そこで,副作用情報を集積したSIDER2データベースにおける副作用検索結果がDrugBankでの副作用有無を表すと仮定して,DrugBankでの外国医薬品について検証を行った.その結果,BAS群が副作用化合物の60%を検知し,p値も0.001以下となってマイニング結果の有効性を立証できた.なお,自発報告データベースJADERでBAS群を調べても,その多くで副作用alertとして有効なことが判明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の結果を踏まえて研究方針を大きく変更したが,新しい方針のもとではほぼ予定どおりに研究を遂行できた.これによりマイニング結果の検証を行うための道筋がついたことは大きな成果といえる.また,DrugBankと日本の医薬品との統合データベースはKEGG Drugと類似したものであり,実際に作成過程でその情報を利用した.しかし,20%程度の医薬品についてKEGG Drugでは日米医薬品の対応関係把握が不十分であると判明した.本研究で作成したデータベースは,プロドラッグの処理も完璧に行っており,また,日本の医薬品についても2013年のものまでを収載したため,このデータベースだけでも非常に有用なものが構築できたと考えている.なお,シグナル検出に関しては,前記統合データベースにおいて各年度の国内医薬品の上市状況を格納したことによりデータ基盤は完成したが,シグナル強度のグラフ表示機能開発には着手できていない.
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Strategy for Future Research Activity |
本年の研究で問題として残っている点は,DrugBank所載医薬品での副作用有無の判定で,SIDER2検索機能のみを利用した点にある.すなわち,副作用有と検索されたもの以外は全て副作用なしと仮定したことになる.実際は,若干であろうとSIDER2に収載されていない医薬品が存在すると想定されるので,次年度は,まず,1. SIDER2をも合わせた統合データベースの作成を完成させる予定である.その際,SIDER2自体は医薬品名称をIDとして採用しており,化学構造はPubChemへのリンクとしてしか記載されていないため,付与されたATC codeに基づいて統合を進める予定である.この情報を利用して,2. 国内医薬品からの横紋筋融解症と無顆粒球症のマイニング結果を外国医薬品で検証する.また,これまでのマイニング結果を見ると,抽出した化学構造にはスタチンなどよく知られた一群の医薬品が頻出している.そこで,3. 化学構造による特徴づけと一般的なATC codeによる特徴づけのいずれが副作用予測において有効であるかを比較する.この際,比較のためにはどのようなグループを副作用に関連するものとして採択するかが重要となる.通常のカイ二乗検定では不適当であるため,4. BASの採択とATC codeからの採択に共通して適用可能な統計的基準を設定する.
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