2014 Fiscal Year Annual Research Report
センシングで得られるプライバシー情報の開示に調和したユーザ利得の創出
Project/Area Number |
24240031
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
馬場口 登 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30156541)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | プライバシー情報処理 / センシング / ユーザ利得 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)プライバシー情報の収集提示におけるセンシング情報融合:HIFIでは、能動的なソーシャルセンシング(ソーシャルメディア、アップロード型画像・映像)と受動的な環境センシング(固定型監視カメラ、端末内蔵センサ)の双方を利用し、センシング情報の融合を図る。本年度は、携帯端末の使用を前提に、BlueTooth電波強度、固定型監視カメラ、端末内蔵の加速度・方位センサからの情報に基づく移動軌跡最適化法を提案し、有効性を検証した。また、ソーシャルセンシングに関しては、マイクロブログに含まれる単語の頻度解析に基づくイベント・位置情報検出手法を開発した。 (2) センシング情報の時空間データベース化:HIFI来場者を空間軸と時間軸で安定に追跡し、時間と空間のインデクスを付けられた来場者毎のプライバシー情報を集積化、保護して時空間データベースを構成する。そのための基盤技術として、観測スポットが点在するスポット間の人流を実時間で計測する手法を実現した。また、来場者のID種別を実名、仮名、匿名の3つに分け、ID種別に応じたプライバシー保護方法としてk-匿名化を取り上げ、属性情報と移動履歴(行動情報)に対するプライバシー保護の能力を調べた。 (3)情報エントリシステムの開発:HIFIと外部世界の界面である入退出ゲート部に情報エントリシステムを配備する。本システムは、HIFIにおける来場者のプライバシー情報管理のためのインタラクティブシステムであり、HIFI入場時の認証、ID種別選択やその説明を行い、HIFI内部で来場者の追跡、移動履歴獲得に必要なプライバシー情報(顔、服装の画像データなど)を本人同意のもとで獲得し、退場時に蓄積されたプライバシー情報を保持(次回利用)するか、破棄するかを選択させる機能を持つ。本年度は、その基本設計を行い、プロトタイプを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)環境センシングに関しては、携帯端末のセンシング機能を活用した新規の方式を開発し、良好な性能が得られることを確認している。しかし、固定型監視カメラ映像からの視覚情報を有効に利用しているとは言えず、今後、移動型のカメラ映像を併用するなどして一層の高精度化を図る予定である。加えて、ソーシャルセンシングとの情報融合が必須であるが、実験環境において、統計的処理に適した、多様で大量のソーシャルメディアデータ(ツイートなど)を収集する方策を検討中である。 (2)プライバシー情報管理のための情報エントリシステムは、本課題立ち上げ期には想定していなかったものであるが、現代的プライバシー権の考え方である自己情報コントロール権をHIFIに組み入れるときには、不可欠な要素である。今年度は、プロトタイプを構成して、来場者に対する主観評価からユーザ親和性に関する興味深い結果を得た。 (3)プライバシー情報の保護と利活用の情報基盤を構成するHIFIの考え方は、プライバシー情報を扱う社会システムとして重要性が認識されつつある。本年度は、招待論文1件(IEICE Trans)、招待講演2件(国際ワークショップ、国内学会FIT)を研究代表者が行い、関連研究に対し指導学生の受賞2件を得、順調に成果を残している。研究室サイトに開設したhttp://www2c.comm.eng.osaka-u.ac.jp/proj/hi-fi/index.htmlからの情報発信にも留意している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本課題の最終年度となるため、総まとめを意識して研究を進める。具体的には、HIFIを構成する要素技術である、a)プライバシー情報の収集提示におけるセンシング情報融合(環境センシングとソーシャルセンシングの融合)、b) 来場者の空間軸並びに時間軸での集積・構造化、c)インタラクティブ情報エントリシステム、d)時空間データベースの匿名化・難特定化、e)プライバシー情報活用型レコメンデーション、などに関して手法やアルゴリズムを具体化して、性能評価する。HIFIの要素技術の各々に関しては、独立した研究課題として、研究発表を重点的に行う。 最終的に、各要素技術をシステム化して接続することによりHIFIプロトタイプを構築する。実験室環境で、プロトタイプを動作させ、のべ100人程度の来場者を対象に動作検証実験を行う。特に、プライバシー情報のコントロールに中核をなす情報エントリシステムについて重点的に検証する。評価の観点からは、プライバシー情報の開示レベルの変化による来場者の行動や満足度の変化について調べ、プライバシー情報の開示とユーザ利得間の調和を測定することに挑戦する。
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