2012 Fiscal Year Annual Research Report
修復と排除:p53誘導性タンパク質MIEAPによる新規ミトコンドリア品質管理機構
Project/Area Number |
24240117
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
荒川 博文 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (70313088)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ゲノム不安定性 / p53 / ミトコンドリア / タンパク質分解 / 酸化ストレス / リソソーム / ミトコンドリア品質管理 / がん抑制 |
Research Abstract |
以下の4つの研究項目について実験を行っている。(1)MALMの解析、及び(2)MIVの解析: IP-2DICAL法を駆使して、MALM及びMIVに重要な働きを有するMieap結合タンパク質を同定する。同定されたMieap結合タンパク質は、遺伝子工学や細胞生物学及び生化学的手法を用いて、その機能解析を進める。(3)実験動物を用いたin vivo解析:Mieapによるミトコンドリア品質管理機構が、個体の発生及び出生後の生命活動にどのような役割があるかを調べるために、マウスを用いた実験を行う。マウスMieap抗体を作成して、野生型マウスにおけるMieapタンパク質の各組織発現状況について調べる。また、マウスMieap遺伝子をクローニングし、ヒト細胞において発見されたMALM及びMIVの機能が、マウス細胞においても存在するのか確認する。p53ノックアウトマウスと野生型マウスにおいて、Mieapの発現及び発現誘導の状況に違いがあるのかを解析する。Mieapノックアウト(KO)マウスを作成し解析する。(4)臨床がん組織における解析:がん臨床検体の収集と解析を開始する。国立がん研究センター・バイオバンクの国立がん研究センター中央病院で治療を受けたがん患者の余剰検体から、それぞれの癌腫50例程度の臨床検体を選定し、ゲノムDNAを抽出し、Mieap及びBNIP3のプロモーターに関してメチル化PCRにてメチル化の有無を、p53に関しては直接シークエンス法にて変異の有無を調べ、p53/Mieap/BNIP3経路の臨床がん組織における異常を解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)MALMの解析: Mieap結合タンパク質として、ミトコンドリア外膜タンパク質であるBNIP3とNIXを同定した。BNIP3やNIXの欠損によって、MALMの誘導がほぼ完全に抑制されたことから、これら分子はMALMの誘導に極めて重要な役割を果たしていることが示唆された。さらに、Mieap、BNIP3、NIXの3者の結合は、ミトコンドリア二重膜におけるporeを誘導すること、MALMはこのporeを介して発生する可能性が示唆された。(2)MIVの解析:Mieap結合タンパク質として、UVRAGを同定した。UVRAGは、Mieap-αと特異的に結合して、MIVの形成に重要な役割を果たしている事が示唆された。(3)実験動物を用いたin vivo解析:マウスMieap遺伝子をクローニングして、発現ベクターを構築した。一過性の強制発現系において、マウス細胞に於いてもMALMとMIVが、マウスMieapによって誘導されることを確認した。また、抗マウスMieap抗体を作成して、マウスMieapタンパク質の組織特異的発現を調べたところ、精巣に於いて高いレベルでMieapタンパク質の発現を検出した。p53-KOマウスの解析から、この精巣におけるMieapの発現は、p53と全く無関係であることが明らかとなった。Mieap-KOマウスの作成に成功した。(4)臨床がん組織における解析:大腸がん50症例の正常組織とがん組織からDNAを抽出して、Mieap/BNIP3/NIXのプロモーター領域のメチル化と、p53の変異を調べた。結果として、全症例の約80%以上の症例で、これらの分子のいずれかの異常を検出した。当初の予定より大幅な進展が達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、以下(1)~(4)の研究項目を推進する。(1)MALMの解析: MALMに重要な働きを有するMieap結合タンパク質を同定する。同定されたMieap結合タンパク質は、遺伝子工学や細胞生物学及び生化学的手法を用いて、その機能解析を進める。BNIP3及びNIXのMALM誘導における役割を、さらに明らかとする。(2)MIVの解析:同様に、IP-2DICALを用いたMIV形成に重要な働きを有するMieap結合タンパク質を同定していく。UVRAGのMIV形成における役割をさらに明らかとする。(3)実験動物を用いたin vivo解析:Mieap-KOマウスを、実験にたり得る数で取得するために大量繁殖を進める。Mieapによるミトコンドリア品質管理機構が、個体の発生及び出生後の生命活動にどのような役割があるかを調べるために、KOマウスを解析する。マウスMieapの発現の認められた精巣及び生殖機能について表現型を調べる。がんの発生進展における役割を調べるために、十分な数のMieap-KOマウスが取得できたら、発がんマウスとの交配や、p21-KOマウスとの交配を進める。(4)臨床がん組織における解析:膵がん・胃がん・食道がん・乳がんなどについて、それぞれの癌腫50例程度の臨床検体を選定し、ゲノムDNAを抽出し、Mieap及びBNIP3のプロモーターに関してメチル化PCRにてメチル化の有無を、p53に関しては直接シークエンス法にて変異の有無を調べ、p53/Mieap/BNIP3経路の臨床がん組織における異常を解析する。
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