2013 Fiscal Year Annual Research Report
地域分散型のエネルギーシステムへの移行戦略に関する研究
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24241016
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
大島 堅一 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (00295437)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上園 昌武 島根大学, 法文学部, 教授 (00314609)
植田 和弘 京都大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (20144397)
歌川 学 独立行政法人産業技術総合研究所, エネルギー技術研究部門, 研究員 (40356572)
稲田 義久 甲南大学, 経済学部, 教授 (50148607)
竹濱 朝美 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (60202157)
安田 陽 関西大学, システム理工学部, 准教授 (70268316)
高村 ゆかり 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (70303518)
金森 絵里 立命館大学, 経営学部, 准教授 (70330016)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 再生可能エネルギー / 地域分散型エネルギー / 移行戦略 / 省エネルギー |
Research Abstract |
(1)分散型エネルギー普及政策研究班は、日本のFITの運用面で表面化している問題、特に回避可能費用に関する検討を行うとともに、FIT開始後の太陽光発電のコストについても検討した。これと平行して、ドイツにおける分散型発電システムと風力発電の系統連系を実現する条件について検討を進めた。 (2)節電グループは、地域のエネルギー需給実態を可能な業種について業種別に調査し、年間消費量総量と業種別用途別原単位の両方を掘り下げた。また データを入手しやすい業種を優先し、対策余地と費用対効果の検討・整理を行った。 (3)電力供給体制グループは、再生可能エネルギー導入促進のための電力系統の計画・運用を分析するため,各国の電力統計データを用いて比較分析を行った。 (4)電気事業経営グループは、①日本において原発を即時ゼロにした場合の経営シミュレーションをおこない、②2020年および2030年に原発をゼロにする場合の経営シミュレーションをするための準備及び必要条件の整理をおこない、③廃炉会計見直しについて検討した。 (5)経済モデルグループは、エネルギー制約を考慮した関西経済モデルをすでに開発した。本モデルを用いて関西の電力需要の将来予測を行うが、その際、家計と企業の節電行動をアンケートベースに基づく情報を用いて予測の精緻化を行った。 (6)政策・総括グループは、研究代表者(大島)の統括の下で全体の進捗を管理しながら、特に(1)から(4)のグループと連携して、地域分散型エネルギーシステム移行のために有益な政策・措置の実践例と思われる日本国内の実践や諸外国の政策実践などの事例を収集し、分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自己評価の理由は、以下のような達成がみられたことにある。 (1) 分散型エネルギー普及政策研究班では、日本において回避可能費用が低く設定されているため、国民負担が必要以上に増えていることが明らかとなった。また、ドイツについては、ドイツ国内の配電会社,送電会社,風力発電事業者,ドイツ太陽光発電協会に分散型発電の需給調整の問題点と系統連系の実情をヒアリングした。 (2)節電グループでは、地域のエネルギー需給を、統計を中心に業種別に点検、業種別原単位分布についても統計や計画書制度などをもとに調査した。過去の省エネ対策の優良事例、典型事例について調査した。 (3)電力供給体制グループでは、主に各種電力設備の設備容量に関する静的な分析を行った結果,欧州や北米では再生可能エネルギーの変動性を吸収するための「系統柔軟性」を増強方法に多様性があることが明らかになった。 (4) 電気事業経営グループでは、電力会社の経営を、日本全体のマクロ経済モデル及び関西経済モデルにおける予測やシナリオと統合して分析するための基礎的な整理が完了した。(5)経済モデルグループでは、大阪と東京の専業主婦(家計の電力多消費者)に焦点を当て、家計の節電行動のアンケート調査を行うことができた。2年分の蓄積があり、結果については整理中である。また、関西経済モデル開発途中で、関西2府4県の府県民所得の早期推計の方法を開発した。 (6) 政策・総括グループでは、①気候変動分野における地域分散型エネルギーシステムへの移行を促す国際的な制度・政策について最新の交渉の動向を把握するとともに、②エネルギーの環境的価値の取り扱いを明らかにするという観点から、気候変動の悪影響により生じる損失と損害(気候変動のコスト)に関する制度・政策の到達点と課題について検討を進めた。また、③特に原子力事故に関わる国際規制に焦点を置いて検討を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 分散型エネルギー普及政策研究班では、地域の再エネ普及ポテンシャルについて引き続き検討するとともに、FITによる普及効果と課題について定量的に評価を行う。また、引き続き、ドイツ等欧州諸国の再エネ普及政策について詳しい検討を行う。 (2) 節電グループでは、地域分散型エネルギー化を活かすための地域の省エネポテンシャルと費用対効果について検討するため、データを入手しやすい業種を優先し、過去の省エネ対策事例とりわけ最近の省エネ技術進展と初期投資コスト低減を反映した事例、2011年以降の省エネ傾向を反映した同業種内事業所・施設の原単位・分布、特徴的なエネルギー多消費設備の現状とトップ効率の差異情報などの実態把握を行う。 (3) 電力供給体制グループでは、系統時系列データを元に動的な発電・送電情報の分析を行い,欧州や北米ではなぜ再生可能エネルギーの導入が進んでいるのか,日本ではどのようにすれば再生可能エネルギーの導入が進むのかについて考察を行う。 (4) 電気事業経営グループでは、2020年および2030年において原発ゼロとした場合の経営シミュレーションをおこなう。(5) 経済モデルグループでは、前年度に開発したモデルを用いて、20-30年程度のタイムスパンで関西の電力の需要予測とシナリオ分析を行う。家計の節電行動アンケート調査から得られる知見を用いて、家計の電力需要予測の精緻化を図る予定である。 (6) 政策・総括グループでは、引き続き①気候変動分野における地域分散型エネルギーシステムへの移行を促す国際的な制度・政策について最新の動向を把握し、情報を収集して分析を進めるとともに、②エネルギーに関わる国際的な法政策に関して、とりわけエネルギーに関わるリスクに対する国際規制と再生可能エネルギーの促進策について、日本と諸外国との比較などによりさらに検討を進める予定である。
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Research Products
(66 results)