2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24241032
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
青木 勝敏 東北大学, 金属材料研究所, 上級研究員 (30356331)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 高典 独立行政法人日本原子力研究開発機構, J-PARCセンター, 研究主幹 (10327687)
松尾 元彰 東北大学, 金属材料研究所, 講師 (20509038)
町田 晃彦 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (70354983)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 鉄重水素化物 / 重水素組成 / 重水素サイト占有率 / 格子体積膨張 / 強磁性 / 磁気構造 |
Research Abstract |
超高圧中性子回折装置(PLANET、MLF、J-PARC)を使用して、昨年度開発した中性子回折測定用の重水素化セルの試験実験を実施した(第1回実験。25年5月)。試料は高温高圧下の状態図が詳しく調べられている鉄を選んだ。室温下、7万気圧まで加圧した鉄試料を高温下で重水素化したところ570℃付近から反応が開始し、約700℃で完了して鉄重水素化物が形成された。2分間の短時間の中性子回折測定によっても重水素化過程がその場観察できたことから重水素化セルが初期の設計通りに有効に働くことが確認された。 715℃、6万気圧で合成された鉄重水素化物の中性子回折パターンを解析することによって、高温高圧下でのみ安定な鉄重水素物の結晶構造解析に成功した。鉄原子がつくる面心立方格子の八面体および四面体サイトを重水素原子がそれぞれ0.532および0.056の割合で占有していることが明らかにされた。また、重水素原子の吸収に伴う鉄金属格子の膨張の割合が重水素組成0~0.64までの広い範囲で一定であることが、結晶構造解析から示された。 重水素原子の四面体サイト占有は面心立方格子を持つ遷移金属水素化物(重水素化物)では報告されていないことから、その機構を量子力学計算によって明らかにした。重水素原子は室温付近では八面体サイトのみを占有しているが、700℃の高温では熱励起によって四面体サイトに部分的に移動する。二つのサイトのエネルギー差は計算と実験で良い一致を示していることから熱励起モデルの妥当性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に実施した重水化セルの設計と放射光X線回折を利用した試験実験などの準備実験が周到に為されていたため、初の中性子回折実験にも拘わらず多くの成果が得られた。高温高圧下の重水素流体と金属との反応による金属重水素化物の形成過程、ならびに形成された重水素化物の結晶構造のその場中性子回折測定が開発された。さらに鉄の重水素化反応過程のその場中性子回折実験を実施し、試料のみからの回折パターンが測定されること、数分の測定時間でも構造解析が可能な回折パターンが測定されることが確認された。PLANETを利用した重水素化過程のその場中性子回折観測技術が開発されたことにより研究計画は概ね達成されたといえる。 第2回中性子回折実験(26年3月)では鉄重水化物の磁気構造測定を試みた。より高温高圧条件を要することから鉄試料体積を減量しての実験であった。目的の強磁性を示す鉄重水化物の合成に成功したが単一相が得られず、また、8時間の測定時間では磁気構造を解析するに十分な強度の回折パターンを得ることが出来なかった。これらの中性子回折実験結果に基づいて、重水素化セルの構造および重水素化反応温度、圧力を再検討することにする。 大型プレスを利用して安定に発生できる温度、圧力が当初の予測よりも低いことが実験を通して明らかになってきた。大型プレスの性能に合わせた綿密な重水素化実験計画の検討が要求される。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度の中性子回折実験はJ-PARC長期間閉鎖により、前後期それぞれ1回の短期間の実験に留まった。H26年度においても年2回の中性子実験を想定して、放射光X線回折実験による準備実験を織り交ぜながら中性子回折実験に向けての綿密な実験計画を作成して実施していく計画である。PLANETを利用した中性子回折実験としては引き続き鉄重水素化物を対象として、高温高圧下で出現する超多量空孔の形成過程のその場観測実験を実施する。また、ヨーロピウムの水素化物形成過程を放射光X線回折実験、あるいは振動分光測定により観測し、PLANETを利用した中性子回折実験の可能性を検討する。重水素化物の安定結晶構造、重水素組成の熱力学的あるいは量子力学的解釈を計算科学を援用して進めることにより、金属水素化物に特有な物理を明らかにしていく。 成果は論文発表ならびに口頭発表を通して迅速に発信していく。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] Neutron diffraction measurement on hydrogenation process of Fe at high temperature and high pressure2013
Author(s)
K. Aoki, A. Machida, H. Saitoh, T. Hattori, A. Sano-Furukawa, R. Iizuka, N. Endo,T. Watanuki, Y. Katayama, M. Matsuo, T. Sato, S. Orimo
Organizer
European High Pressure Research Group International Meeting (EHPRG51)
Place of Presentation
Queen Mary, University of London, London, UK
Year and Date
20130901-20130906