2013 Fiscal Year Annual Research Report
錯体水素化物における原子・イオン輸送機構の解明ー中性子散乱と陽電子消滅の相補利用
Project/Area Number |
24241034
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
大友 季哉 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (90270397)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榊 浩司 独立行政法人産業技術総合研究所, エネルギー技術研究部門, 研究員 (20392615)
中村 優美子 独立行政法人産業技術総合研究所, エネルギー技術研究部門, 研究員 (50357670)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 水素 / 量子ビーム / 燃料電池 |
Research Abstract |
NaAlH4 やLiAlH4 などの錯体水素化物は、金属イオン(Na+やLi+)と錯イオン( [AlH4]-)から形成され、軽量かつ高密度で水素を貯蔵しているため、車載用水素貯蔵材料としての研究が進められている。ただし、触媒を添加しても水素貯蔵・放出反応速度が遅い事が欠点であり、錯イオン欠損を経由する原子拡散が律速と推測されている。一方、これらの錯体水素化物は超イオン伝導を示し、欠陥の増減によっても伝導率が変化する。つまり、錯体水素化物においては、空孔や欠陥の制御が材料としての特性改善に直結すると考えられる。 本研究では、可逆的な水素吸蔵放出反応が知られており、かつ金属イオン伝導特性が発現するNaAlH4およびNa3AlH6を重水素化し、構造解析を行う。重水素ガス雰囲気下で試料中の重水素量と温度を制御することで、反応生成物の割合を制御しながら中性子全散乱実験を行った。また、放射光を用いたX線吸収微細構造(XAFS)測定およびX線異常散乱(AXS)の予備測定を実施した。Al原子およびTi原子の化学状態や周辺構造の解析を進めている。陽電子消滅(同時計数ドップラー幅広がり測定)により、空孔サイトの元素分析の準備を進めた。中性子回折、XAFS、AXSおよび陽電子消滅結果を反映した構造モデルを構築することで、錯体水素化物における水素放出・吸蔵反応及びイオン伝導に伴う原子・イオンの輸送機構を明らかにすることを目指している。 【連携研究者】高エネルギー加速器研究機構 池田一貴 試料合成・中性子回折実験、東北大学 折茂慎一 試料合成
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度までの研究により、中性子回折による構造解析から、TiはAlサイトに2%程度置換していること、及び水素の欠損が示唆される結果が得られた。またXAFS測定から、AlのK吸収端のエネルギーは、NaAlH4と水素を放出させたNa3AlH6で異なっており、Na3AlH6の方が吸収端エネルギーが高いことが明らかになった。Alの回りに水素が6配位しているAlH3のAlのK吸収端のエネルギーは、配位数が同じであるNa3AlH6に近いと予想されたが、配位数が4であるNaAlH4の方が近いことがわかった。つまり、NaAlH4とNa3AlH6Alの違いは、水素の配位数だけでは説明できない。また、Ti原子添加により、Al K吸収端近傍のスペクトルが顕著に変化しており、Alの化学状態に何らかの変化があると予想される。ただし、0.5 ~ 2 atom %でも大きな変化があり、Al化学状態解析は非常に重要であり、鋭意解析を進めている。 なお、平成25年度までに、 ・NaAlD4およびNa3AlD6の合成の最適化(不純物相に最小化) ・中性子その場測定環境の構築(最高ガス圧力10MPa、最高温度200℃) を完了していたが、J-PARCの利用実験がハドロン事故により停止したため、その場中性子回折実験は実施できなかった。J-PARCは、平成26年2月に復帰したが、中性子その場観測に使用するバナジウム容器が、NaAlD4の水素放出・吸蔵過程で水素化し、ガス漏れを起こす可能性があることが判明したため、平成25年度にはその場回折測定を実施できなかった。年度内に、容器表面の酸化皮膜の形成などの容器改良を行ない、その場観測を実施する準備が完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、下記の測定を実施し、触媒効果を含む水素吸蔵・放出特性の構造的起源を明らかにすることを目指す。 1) 中性子によるその場測定の実施(Al-H相関の観測、水素欠損の同定) 2) XAFSによるAlおよびTiの化学状態の観測、およびX線異常散乱によるTi位置の決定 3) 陽電子消滅による空孔同定 1)については、平成25年までの準備を踏まえ、実験を実施する。2)のXAFSについては、これまでのAlに加えて、Tiの化学状態の観測とともに、異常散乱によりTI位置の構造情報取得を目指す。異常散乱の予備測定は終了しているが、十分な統計精度が得るための改良が必要な状況である。3)の陽電子消滅についても、実施準備が整っており、中性子の構造解析結果と合わせ、NaAlH4中の空孔の解析を行なう。
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Research Products
(6 results)