2012 Fiscal Year Annual Research Report
周期表第14族元素(Si、Ge)の低次元ハニカムシートの創成と物性開拓
Project/Area Number |
24241040
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高木 紀明 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (50252416)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒船 竜一 独立行政法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 研究員 (50360483)
塚原 規志 東京大学, 新領域創成科学研究科, 助教 (80535378)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | シリコン / ハニカム / シリセン / Dirac電子系 / ランダウ準位 |
Research Abstract |
Ag(111)基板にSi原子を蒸着することで、シリコン原子からなる二次元のハニカムシート(シリセンと呼ばれる)ができることを明らかにした。蒸着時間と蒸着時の基板温度をかえながら、表面構造を低速電子線回折により観察した。蒸着量が1層以下の少ないとき、4x4構造が観察される。その後、√13×√13構造など様々な回折パターンが重なった複雑なパターンに変化する。2層以上の蒸着量では、多層シリセン層に対応するパターンも観測された(構造がハニカムかどうかは定かでない)。シリコン原子間の結合は、グラフェンの炭素原子間の結合と比べると、柔軟性に富んでおり、シリコン原子が同一平面にないバックリング構造をとることができる。このため、蒸着量に応じて多様な構造をとることができると考えられる。このことは、第一原理計算による4×4構造の構造最適化において、バックリングした構造が最安定であることからも支持される。4x4構造について、強磁場極低温STMによりランダウ準位の観測を試みた。ハニカム構造から理論的に期待されるDirac電子系特有のスペクトルが観察されることを期待したが、そのようなスペクトル構造は観測されなかった。並行して行ったバンド構造計算からは、Dirac電子系特有のバンド構造は観察されず、シリコン原子と基板銀原子の間に電荷移動を伴う化学結合が形成され、バンド構造が大きく変調されていることがわかった。この結果は、ランダウ準位が観測されなかったこととも一致している。シリセン層と基板との相互作用を抑えることが、Dirac系のシリセンを作製するには必須であることを示唆している。基板探索やゲルマニウムハニカム作製のために、薄膜蒸着用の真空システムを設計・建設した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の目的は、シリコンとゲルマニウムについて、(1)ハニカムシートの作製と生成機構の解明、(2)ハニカムシートの電子物性の解明、(3)ハニカムシートの格子物性の解明、(4)ハニカムシートの物性制御の探求、である。シリコンのハニカムシートであるシリセンについて、Ag(111)基板上に合成したシリセンの構造と電子状態を世界に先駆けて明らかにすることができた。理論計算で予測されているDirac電子系/トポロジカル絶縁体の兆候は捉えられていないが、シリセン研究にとって大きな成果であると考えている。従って、上記研究目的の(1)(2)をシリセンについて達成したと考えている。順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)シリセンの化学的安定性を、高分解能電子エネルギー損失分光と走査トンネル顕微鏡を使って調べる。 (2)シリセンのハニカム構造は、第一原理計算とトンネル顕微鏡像との比較から決めているが、個々の原子の位置を実験によって決定したわけではない。電子回折による構造決定を進める。特に、Dirac電子系が実現されていると期待される多層シリセンについて、ハニカム構造をユニットとする2次元構造なのか、という問題に取組む。 (3)Ag以外の基板で、シリセン合成を試みる。また、ゲルマニウムによるハニカム構造体の可能性を探る。
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