2014 Fiscal Year Annual Research Report
DNAバーコーディングを適用したユスリカ科昆虫の水質指標性と多様性の研究
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24241078
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
高村 健二 独立行政法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, フェロー (40163315)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今藤 夏子 独立行政法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 主任研究員 (10414369)
平林 公男 信州大学, 繊維学部, 教授 (20222250)
河合 幸一郎 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (30195028)
上野 隆平 独立行政法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 主任研究員 (60168648)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ユスリカ / DNAバーコーディング / 生物多様性 / 水質指標 / CO1遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
DNAバーコーディングの基礎となる種固有DNA塩基配列(DNAバーコード)を国内収集ユスリカ標本のミトコンドリアCO1領域について決定し、昨年度公開したユスリカ標本DNAデータベースに追加した。総計で64種400件標本のレコードが収録された。さらに、同じ収録内容でChironomid DNA Barcode Database(http://supiss.nies.go.jp/yusurika/en/index.html)を公開した。 ため池については、DNA配列にもとづき統計的に種区分する作業を改善した。標本DNA配列から系統樹を作成した上で、近年提案されたGeneral Mixed Yule CoalescenceとPoisson Tree Processの2手法に従って、種分化と種内合祖の過程を系統樹上で区分した。その結果を両手法の間で比較しながら最終的な種数を求めた。20面の調査池標本から71種が認められた。池毎の種数を集計したが、単純に、水質を表す全窒素・全リン濃度や生息環境を表す水草種数との相関関係認められなかった。 湖沼では、高山湖沼に分類される中綱湖、野尻湖におけるChironomus属のDNAバーコード解析を行った。主には、高地型のヤマトユスリカが同定された。 北海道から沖縄県に至る18道県内の標高・河川形態・水質等の環境条件の異なる45水系において、ユスリカ幼虫を含む底質サンプルを採取して実験室飼育羽化および灯火採集によって、少なくとも4亜科47属79種の雄成虫を採集し、エリユスリカ亜科についてCO1領域DNA配列を決定した。これらの結果から、低緯度から高緯度、平地から高地、貧栄養水域から富栄養水域、流水から止水、淡水から海水あるいは陸域の方向に属が派生したことが推測された。また、Orthocladius属では多くの隠蔽種の存在が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
種判別の基礎情報となるDNAバーコードは、既収集標本の精査と本年度新たに追加された標本の分析により、21種のDNAバーコードが確定され、既登録種で見つかった新たなハプロタイプと合せて64種400標本のレコードが整った。これらのレコードは昨年度公開のデータベースに追加された。さらに、同じレコードを元に英語版のデータベースが完成・公開されたことにより、DNAバーコーディングを適用した種判別基準の整備は国際的な広がりを持つ第2段階に移行した。 ため池の平成24年度採集幼虫標本についてCO1領域DNA配列により種区分の作業を進めた。2つの統計学的手法を併用することにより、より確からしい種区分の結果が得られた。環境の異なる池毎の種数が得られたたため、ユスリカ多様性と環境条件との関係を解析する準備が整った。 湖沼では、富栄養化指標種オオユスリカの分布する諏訪湖でにおいて湖産オオユスリカに新種としての位置づけが提案されているため、遺伝的系統解析を目的として調査を行った。複数のハプロタイプが見つかったため、他の富栄養湖においても採集を行い比較する。また、ヤマトユスリカChironomus nipponensisの解析も進みつつあり、両種の分布と水質との関係が明らかになりつつあ る。 河川では、 モンユスリカ亜科・エリユスリカ亜科・ユスリカ亜科については、流水性種を中心として国内記録種のかなりの部分の標本を収集することができたが、ケブカユスリカ亜科・オオヤマユスリカ亜科・ヤマユスリカ亜科については、現在のところ僅かな標本しか得られていない。Polypedilum, Cricotopus属では、水質変化に対応した同属内での種別出現パターンが解明されつつあるが、多くの種が属する他属、Tanytarsus, Rheotanytarsus等に関しては、さらに多くのデータ集積が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
標本採集をため池・湖沼・河川で並行して進める。これまでに十分に調査できていない環境とすでに採集が行われたが、標本分析が良好に達成されなかった地点での調査に重点を置く。これまでの研究により存在が明らかとなった隠蔽種は、生物顕微鏡レベルでの種固有形態の有無をあらためて探索し、新種記載等の報告を行う。ため池では平成24年度調査池の中で標本のDNA分析が成功しなかった池があるため、追加調査を行う。そのうえで、統計学的種区分により求められた池毎の多様性と環境条件との関係に焦点を当てて多様性解析を実施する。湖沼では、ヤマトユスリカ類の系統分類学的解析を進める。ヤマトユスリカ類には低地型・高地型・Chironomus fujitertiusが含まれるが、3者の系統学的差異を明らかにするために遺伝子解析を行う。具体的には、富士五湖においてヤマトユスリカ類を採集し、3者の関係を再検討した上で、環境条件と生息量との関係の実態を明らかにする。 河川では、ケブカユスリカ亜科、オオヤマユスリカ亜科、ヤマユスリカ亜科の標本収集のために、高緯度・高標高・清澄水域を集中的に調査する予定である。また、Tanytarsus, Rheotanytarsus属に関してさらに多くの種の データを得るためには、全国各地の多様な環境条件の水域での調査を実施することに加え、幼虫飼育条件の改善も試みる。さらに、今年度試みた自動販売機等の灯火を利用した採集法や夕刻等に発生水域周辺で形成される蚊柱を採集する方法等、より効率の良い雄成虫採集法を試みる。 これまでに蓄積されたDNAバーコードについては、英語版データベースの公開により国外研究者との情報交換・研究交流が円滑化されたため、広分布種群を対象に、国外研究者、とくにアジア地域ユスリカ研究の関係者との交流を図る。
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Research Products
(21 results)
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[Presentation] DNA barcoding of Japanese chironomids2014
Author(s)
N. Kondo, R. Ueno, K. Takamura
Organizer
Unraveling Biodiversity from DNA - From the Management of Databases to the Use of Next Generation Sequencers -
Place of Presentation
国立環境研究所(茨城県つくば市)
Year and Date
2014-09-19 – 2014-09-19
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