2012 Fiscal Year Annual Research Report
室町~江戸期における写本と版本の関係についての総合的研究
Project/Area Number |
24242010
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
石川 透 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (30211725)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
屋名池 誠 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (00182361)
佐々木 孝浩 慶應義塾大学, 斯道文庫, 教授 (20225874)
堀川 貴司 慶應義塾大学, 斯道文庫, 教授 (20229230)
小川 剛生 慶應義塾大学, 文学部, 准教授 (30295117)
津田 眞弓 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (40390588)
佐藤 道生 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (60215853)
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Project Period (FY) |
2012-10-31 – 2017-03-31
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Keywords | 室町時代 / 江戸時代 / 写本 / 版本 / 比較研究 |
Research Abstract |
室町時代から江戸時代に作成された、写本と版本については、これまでばくぜんと、室町時代までの写本の文が、江戸時代の版本の文化へと置き換わっていったと、考えられていた。しかし、江戸時代前期に作成された奈良絵本・絵巻を見るだけでも、明らかに 版本から写本へ作られたものが、相当数存在している。そして、写本と版本の両方を作る人物として、仮名草子作家として著名な浅井了意や、日本史上初の女性絵本作家というべき居初つな等が存在することが明らかになってきたのである。本研究では、これまで、中世文学と近世文学の研究として別々に扱われていたために明らかにできなかった写本と版本の関係を、新しい資料を利用し、具体的に考察することによって明らかにし、文学作品の創作の問題へと迫りたいと考えた。 本研究を遂行するためには、まず、室町時代から江戸時代にかけて制作された、写本・版本のとらえ直しが必要である。それらの中でも、江戸時代前期に奈良絵本・絵巻にされた作品で、なおかつ、版本に作られている作品を比較するのが最も有効である。奈良絵本・絵巻は、現在では、御伽草子だけではなく、物語文学、軍記文学、和歌文学、漢籍等、さまざまなジャンルの作品が見付かっている。それらをそれぞれの担当者が調査し、分析するのである。そのためには、具体的に奈良絵本・絵巻等の原資料を、日本国内はもちろん、海外の機関においても調査する必要がある。それらの過程で判明した重要な作品は、研究誌等に紹介し、内外の研究者を集めたシンポジウム等でも報告することとする。 この方針の下に、本年度は、各自の研究環境を整えることと、海外での最大級の資料保存場所である、イギリスの大英図書館に合同調査に赴き、調査。研究を行った。また、全体の公開講演会兼シンポジウムとして、2013年3月に、慶應義塾大学において、写本・版本国際集会を開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年度は、秋に採択が決まり、実質的に3ヶ月程度の活動しかできなかった、というのが現状である。そこで、各年度、海外で開催しようとした国際集会は日本の慶應義塾大学で行うこととし、合同での調査をイギリスの大英図書館で行うこととした。大英図書館は、海外においては最も豊富な写本と版本を所有している機関である。 わずか3ヶ月では大きな成果は期待できないと考えていたが、大英図書館だけの調査でも、各自において、かなりの成果が出ていた。石川透が担当した奈良絵本・絵巻と版本との関係では、いずれも大英図書館が所蔵する、奈良絵本『青葉』の筆跡が版本『西行四季物語』と一致することが確認できた。これは、両者とも居初つなの筆跡であって、それらを現物で確認できる機関は少ない。 このように、わずかな期間でも、重要なことはわかり、それらの成果は次年度へと続けて調査し、成果も国際集会等で、発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、同じやり方で、多くの資料を調査するというのが基本である。この研究は、多くの数の実物の作品を調査・研究するしかないのである。また、資料の調査は、所蔵機関の受け入れ体制を考えるなら、一度にまとまって行動することが良いと思われる。今後は、所蔵機関での調査と同時に、国際集会を開催すれば、経費の出費としても効率的となる。それが行える場所は少ないが、できうる場所を探して、今後も研究体制を整えたいと考えている。
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Research Products
(3 results)