2012 Fiscal Year Annual Research Report
法的サービス供給をめぐる紛争の構造―専門家の視角と利用者の視角の交錯を通じて
Project/Area Number |
24243002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
樫村 志郎 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (40114433)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 昌樹 大阪市立大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10244625)
高橋 裕 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (40282587)
菅野 昌史 いわき明星大学, 人文学部, 准教授 (70379494)
佐藤 岩夫 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (80154037)
山田 恵子 京都女子大学, 法学部, 講師 (80615063)
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Project Period (FY) |
2012-10-31 – 2017-03-31
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Keywords | 基礎法学 / 法社会学 / 紛争処理 / 法専門職 / 法的サービス / 事例研究 |
Research Abstract |
交付内定を受けた平成24年秋以来、研究メンバーによる数回の研究打ち合わせ会合を実施し、研究の進め方、資料保存と共有方法、対象事例の選定、基礎的研究視角の確定等について、決定した。(1) 法専門職と法に関する現在の市民の意識の調査を実施して、司法改革後の社会的意識の現状を確認すること、(2) 法専門職と市民の間の紛争の解決について制度の発展が見られるイギリスの状況を訪問調査の方法で明らかにすること、を優先して順次実施する方針を決定した。 (1) については、平成24年12月から平成25年1月にかけて調査票等を作成し、インターネット調査会社3社にそれぞれ委託して、平成25年2月から3月にかけて、3度にわたって市民意識調査を実施し、結果を得た。これらの調査は、法専門職(弁護士と司法書士)についての市民の意識と経験の傾向を知ること、調査質問の差異により回答に差が現れるかどうかを検討することを目的とした。 (2) については、研究メンバー2名が2013年2月中旬にイギリスを訪問して、イギリスにおける法専門職と顧客との紛争解決制度の概要を調査するとともに、イギリス中部地区(ヨーク・リーズ)の法専門職教育機関(College of Law)および法律事務所の訪問調査を行い、知見を得た。 また、法専門職と依頼者の間の紛争の構造、その基礎にある専門職責任の法理論、この種の紛争の処理のための手続について、理論枠組みを検討するため、次の作業を行った。司法改革後の法専門職の状況の認識・理論枠組みの構築のため文献を購入し、研究の準備と遂行に必要な理論書、先行研究を検討することとした。また、近年の法専門職と顧客の間の紛争事例を新聞記事等を素材として収集共有した。これらを基礎として、研究組織メンバーによる理論および方法にかかる検討を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度には、(1)司法改革後の日本各地の状況を公式統計等により整理すること、(2)法専門職と依頼者の間の紛争事例を収集し、論点整理を行うこと、(3)法専門職と依頼者の紛争およびその処理に関する諸外国の制度と実態の調査を実施すること、(4) 法専門職と依頼者の紛争の背景となる社会意識と紛争経験についての大量調査を実施すること、(5) 法専門職責任に関する専門研究者ないし実務家の見解を聴取すること、(6)その他研究遂行上必要な機器の購入その他の環境整備をはかることを目的とした。これに対して、(1) については、1地域について整理方法を試験したにとどまった。(2)については、紛争事例の集積を行い共有したが、まだ事例数や種類について整理するにいたっていない。(3)(4)(6)については十分に達成できた。(5)については、英国の複数の実務家の見解を得ることができたが、その他の国については文献を収集したにとどまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 本年度に実施した大量調査の結果にもとづき、その実効性について評価し、また、継続して調査を実施するための方策について検討する。(2) 同結果を統計分析して、専門職に対する市民意識の特性について把握を継続する。大量調査の結果を統計分析し、法専門職の認知度、市民の態度等について、整理し公表する。(3)専門職責任についての比較および相互影響関係の検討を拡大・継続する。(4) 専門職ー依頼者紛争事例を一定数選定し、紛争の一般的な記述と分析の枠組みを整備する。(5) 質的事例調査方法論の文献を検討して、本研究の基盤となりうる理論を見いだし、発展させる。(6) 統計情報を収集継続するとともに、研究リソースについてのホームページを通じて、インターネット上で統合的に構築、発信する。(7) 事例研究に着手する。(8) 海外法制の調査を1、2か国について実施する。
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Research Products
(12 results)