2013 Fiscal Year Annual Research Report
実証的マルチエージェントモデルによる国際関係分析法の開発
Project/Area Number |
24243023
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
山影 進 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (10115959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阪本 拓人 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (40456182)
遠藤 貢 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (70251311)
光辻 克馬 東京大学, 総合文化研究科, 研究員 (30647441)
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Project Period (FY) |
2012-10-31 – 2016-03-31
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Keywords | 分析方法論 / シミュレーション / 安全保障 / 内戦 / 国際規範 |
Research Abstract |
本課題の申請者を中心とした共同研究グループは、これまでも、実証性を志向する分析を世界に先駆けて開始し、マルチエージェント・シミュレーションと実証研究とを結合できることを示してきた。本年度においても、国際関係におけるさまざまな現象の実証分析にマルチエージェントモデルを適用すべく計画を進めることができた。(以下のA-Dは研究実施計画に対応しています) (A)方法論の検討作業:近年の数理的計算的手法における著しい進展の成果を吸収するため、定期的に研究会を行い、新たな手法を社会科学における分析に適用するための批判的検討を継続的におこなった。複雑系研究、生命科学、群集流動研究(渋滞学)、経済学等、さまざまな分野において志向性を同じくする新しい研究動向について幅広く検討した。 (B・C)実証分析およびモデル分析:国内政治、国家間政治、国際制度のそれぞれの分析レベルについて、実証分析と結びついたマルチエージェントモデルの構築と分析を進めた。国内政治レベルにおいては、東アフリカ諸国の統合と分離のモデルに加え、国内の住民集団の生活および環境の持続可能性を探求するための基礎的モデルの構築に着手した。国家間政治レベルについては、国際政治経済についてのモデル構築作業を進めるとともに、第一次世界大戦前夜の国家間関係を分析するためのモデルを構築し、欧州諸国間の連携関係形成についての実証分析をおこない、研究成果として発表した。国際制度レベルについては、国際社会における政策拡散や規範普及を想定したネットワークモデルをもちいたネットワークの形状と政策拡散の関係について研究を公表することができた。 (D)ツールの開発と改良:シミュレータとGIS(地理情報システム)を連動させるためのツールの開発を順調にすすめることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画のどの方面においても当初の計画以上の進展がみられる。(以下のA-Dは研究実施計画に対応しています) (A)方法論の検討においては、経済学や文化人類学等、さらに幅広い分野から大学院生や研究生が、方法論の検討や探求に参加することとなり、社会科学的な背景をふまえて、実証研究のためのモデル構築および分析をおこなうことのできる人材の育成をすすめることができた。また幅広い分野からの参加により、マルチエージェント技法の社会科学への適用について、より深いレベルでの方法論的批判や検討をすすめることができた。 (B・C)実証分析およびモデル分析においては、国家間レベルの分析において、第一次世界大戦前夜の欧州諸国間関係を分析するためのモデルを構築し、基礎的な検討をおこなうことができた。国内政治レベルおよび国際制度レベルにおいて、最終的に実証分析を行うことを想定し、極めて普遍的なロジックを用いたモデルを構築、あるいはそのモデルにおける系の振る舞いについての検討を行うことができた。どのレベルのモデルもシンプルなロジックの組み合わせから生じる系が興味深い挙動や自己組織性あるいは高い再現性を示しており、本技法が社会科学分析に有用であることを示している。 (D)ツールの開発と改良については、開発者と緊密な協力関係を築き、シミュレータとGISを連動させるためのツールの開発を順調に始めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのところ研究計画は順調に実施されているので、今後とも速やかに計画を実施し、さらなる成果をおさめることをねらう。どの方面においても当初の計画以上の進展がみられる。(以下のA-Dは研究実施計画に対応しています) (A)方法論の検討においては、本技法の適用が期待される幅広い分野からの参加を受け入れ、社会科学や国際関係論の背景をふまえた上で、実証分析のためのモデル構築およびモデル分析を促していく。また分野横断的な視点で、マルチエージェント技法の社会科学への適用について検討を行う。自然科学における進展をただ模倣するのではなく、社会科学研究一般に貢献できる分析手法の構築を行う。 (B・C)実証分析およびモデル分析においては、国内政治、国家間、国際制度の各レベルにおいて、基礎的でかつ発展させることによって実証分析に適用できるモデルの構築をさらにすすめることとする。それと同時にどのようなモデルを構築することが実証分析につながるのかを知るため、事例についての経験的実証的研究も同時並行にすすめることとする。各分析レベルにおいて、これまで構築されたモデルを発展されることや新規にさまざまなモデルを構築することによって、マルチエージェントモデルを用いた分析と経験的事例についての実証分析を結びつけていく。 (D)ツールの開発と改良については、開発者との緊密な協力関係を基に、シミュレータの可能な範囲での機能改善と、とりわけシミュレータとGISを連動させるためのツールを開発する。
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