2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24243028
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
西條 辰義 高知工科大学, 経営学部, 客員教授 (20205628)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
春野 雅彦 独立行政法人情報通信研究機構, その他部局等, 研究員 (40395124)
上須 道徳 大阪大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (50448099)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 社会的ジレンマ / 実験 / 制度設計 / ニューロモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
セカンド・ソート(他者の意思決定をみて,自らの意思決定を変更しうる制度設計)を社会的ジレンマに導入したところ,ゲームの利得構造そのものが協力にとって有利となることを発見している.さらには,何らかの理由で,いったん非協力を選んでも,セカンド・ソート・ステージで変更可能となるのがセカンド・ソートである.つまり,セカンド・ソートは均衡からの乖離に対してもロバストな仕組みである.これらの理論的性能を明らかにするとともに,様々な被験者実験を通じてその効果が非常に有効であることを観測している.セカンド・ソートは静学的なゲームにおける新たなディバイスであるが,将来世代と現代世代の間のジレンマ関係(現代世代が化石燃料を消費すると将来世代は温暖化に直面)などを解決するにあたっては,将来世代が存在しないため,アプルーバル・メカニズムは使用できない.そこで,現世代の中に将来世代のことのみを考える集団(仮想将来世代)を作り,彼らが現世代と交渉するという枠組み(将来省)を構築し,討議実験を試みたところ,仮想将来世代がいない場合と比べて,非常に有効は手段であることを発見している.経済学では人々の利得に関する評価構造は安定的であると暗黙のうちに仮定しているが,仮想将来世代を演じる被験者は評価そのものを変えてしまうことを発見している.また,ジレンマ状況において,ナイト的な不確実性に直面する被験者の行動については,被験者実験を継続中である. 脳科学系の研究では,協力行動において,不平等と罪悪感を主に処理する脳の部位が異なることを発見している.具体的には,不平等には扁桃体と側坐核が、罪悪感には右背外側前頭前野が関わることを示したのである.さらに,右背外側前頭前野へのtDCSにより不平等感には影響を与えずに、罪悪感のみ変えられるという因果関係も証明している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
社会的ジレンマの解決にあたって,従来のゲーム理論で考案された複雑なメカニズムではなく,非常に簡単なメカニズム(たとえば,アプルーバル・メカニズム,ミニマム・アプルーバル・メカニズム,セカンド・ソートなど)をデザインすることにより,被験者実験でもこれらのメカニズムが機能することを発見している.また,脳科学研究においても,協力の源泉を発見しつつある. 加えて,当初は想定していなかったのだが,世代を超えた協力が起こるためのディバイスも発見しつつある.つまり,現世代に仮想将来世代を導入することが非常に有効であることも見いだしている.
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Strategy for Future Research Activity |
静学的なジレンマの解決に関する主要なメカニズム・デザインと実験研究が順調に進んでいるので,現世代と将来世代にまたがるジレンマ研究に軸足を少しずつ移す予定である.数世代にわたるジレンマ問題の理論および実験研究,仮想将来世代と現世代の交渉の可能性を実験室のみならず実践の場で実施するためにクリアせねばならない問題点の洗い出し,共有地(common pool resources)の安定性分析などが当面の課題である. 脳科学研究においては,右背外側前頭前野へのtDCS刺激により脳内ネットワークで起こっている変化を明らかにし,同時に罪悪感と不平等感を考慮したより良い社会制度の設計への貢献を目的とした実験研究を継続する予定である.
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Research Products
(12 results)