2012 Fiscal Year Annual Research Report
デフレ・円高・財政危機:バブル経済の後遺症に関する包括的理論・実証分析と政策対応
Project/Area Number |
24243044
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
上東 貴志 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (30324908)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北野 重人 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (00362260)
小林 照義 神戸大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (10387607)
敦賀 貴之 京都大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (40511720)
地主 敏樹 神戸大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (60171089)
高橋 亘 大阪経済大学, 経済学部, 教授 (70327675)
立花 実 大阪府立大学, 経済学部, 准教授 (70405330)
柴本 昌彦 神戸大学, 経済経営研究所, 講師 (80457118)
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Project Period (FY) |
2012-10-31 – 2015-03-31
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Keywords | 金融論 / 財政学 / 経済理論 / バブル / 財政危機 |
Research Abstract |
現在日本経済が直面しているデフレ・円高・財政危機という深刻な問題は90 年代初頭のバブル崩壊に原因を求めることができる。本研究では、バブルの発生・崩壊、さらにデフレ・円高・財政危機といったバブル経済の後遺症を理論・実証の双方向から包括的な分析を進めている。平成24年度は、80 年代以降の日本を中心に、欧米・新興諸国、両大戦間期の日本も含み、適応性・普遍性の高い理論・実証結果を導き出せるよう、「貨幣・政府債務は本質的にはバブルである」との認識に立ち、バブル・貨幣・政府債務に関する統合的な理論の構築を目標に取り組んだ。 また、活動としては、以下の研究会・ワークショップを開催した。 平成25年2月15日(金)研究会:上東(代表者)、敦賀・小林(分担者)報告、3月11日(月)ワークショップ:吉野直行(現:アジア開発銀行研究所 所長、当時:慶應義塾大学 経済学研究科 教授)、高橋(分担者)報告、4月5日(金)・8(月)・15日(月)ワークショップ共催(RIEBセミナー/六甲フォーラム):Jonathan H. HAMILTON(フロリダ大学 ウォリントンカレッジ 教授)報告、5月17日(金)ワークショップ: 深尾光洋(慶應義塾大学 商学部 教授)、柴本(分担者)報告、5月28日(火)ワークショップ共催(RIEBセミナー/神戸大学金融研究会): Markus K. BRUNNERMEIER(プリンストン大学 教授)報告、6月21日(金)ワークショップ共催(RIEBセミナー/神戸大学金融研究会/神戸大学社会科学系教育研究府):清滝信宏(プリンストン大学 経済学部 教授)報告、6月24日(月)~25日(火)ワークショップ:清滝信宏(プリンストン大学 経済学部 教授)、高槻泰郎(神戸大学 経済経営研究所 准教授)、上東(代表者)、柴本(分担者)報告。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24 年度は、バブル・デフレ・通貨高・政府債務に関する理論モデルを構築し、現代の日米欧・新興国および両大戦間期の日本における金融・財政政策に関する実証分析を、理論・実証グループの各リーダー主導の下以下の個別プロジェクトを開始した。 理論プロジェクト(趣旨:バブル・貨幣・政府債務の統合理論へ向けた個別理論の構築) ① 政府債務、金融・財政政策、財政破綻に関する理論分析(上東、北野)② 開放経済におけるデフレと為替の相互関係に関する理論分析(小林、敦賀、上東)③ 世界的金融危機と開放経済におけるバブルに関する理論分析(北野、小林)④ バブル、金融システムの安定性、マクロプルーデンス政策に関する理論分析(敦賀、小林) 実証プロジェクト(趣旨:金融・財政政策の新たな理解へ向けた独自の実証研究) ⑤ 日米欧のバブル崩壊におけるバランスシートの毀損、消費需要への影響の推計(地主、高橋)⑥ 非伝統的金融政策のデフレ・為替・実物経済への影響に関する実証分析(立花、柴本)⑦ 日本の両大戦間期における金融・財政政策に関する実証分析(柴本、立花)⑧ マクロプルーデンス政策としての金融政策に関する実証分析(高橋、地主) 上記プロジェクトが予定通り進んでいることから、おおむね順調に進展しているといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に開始した個別プロジェクトに引き続き取り組むとともに、各プロジェクトで得られた分析結果に基づき、以下のプロジェクトを行う予定である。 ①政府債務の上限に関する実証分析(柴本、上東、立花、北野):財政安定化ルールに基づき各国の財政余地を推計した先行研究はあるが、同様の手法で日本経済の持続可能性を検証した研究からは、定まった結果が得られていない。本プロジェクトでは、財政安定化ルールに基づく日本の債務上限と、政府債務、金融・財政政策、財政破綻に関する理論モデルから得られる内生的債務上限を推計・比較・検証する。 ②バブル・貨幣・政府債務に関する統合理論の確立(上東、北野、敦賀、小林):これまでの分析結果に基づき、バブル・貨幣・政府債務の相互関係を分析する。特に、バブルの発生・崩壊が金融市場の安定性に影響し、バブル崩壊後にデフレ・通貨高・政府債務の増大が起こるような開放経済モデルを構築する。さらに、バブル崩壊後の最適な金融・財政政策の性質を明らかにする。 ③デフレ・通貨高・財政危機に関する包括的実証分析(高橋、地主、立花、柴本):これまでの実証分析と既存研究に基づき、金融・財政政策がデフレ、為替、政府債務、実物経済、金融市場の安定性に与える影響を、地域・時代に共通する普遍的傾向とそうでないものに分けて整理する。 ④デフレ・円高・財政危機に対する包括的金融・財政政策(構成員全員):政府債務の現実的上限を踏まえ、理論モデルにおける政策効果を現実的なパラメーター値の下で数量的に評価する。そこで得られた評価と実証結果を照らし合わせ、デフレ・円高・財政危機に対する包括的金融・財政政策の具体案を作成する。さらに、国内外の関係者・政策当局等と意見交換を行い、有効性と実現性の高い包括的政策パッケージを完成させる。
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