2012 Fiscal Year Annual Research Report
大学教育の質的高度化のための財政的基盤についての実証的研究
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24243076
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金子 元久 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (10185936)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水田 健輔 東北公益文科大学, 公益学部, 教授 (30443097)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 高等教育 / 高等教育財政 / 大学経営 |
Research Abstract |
当初の計画に従って、三つの分野で作業を進めた。 第一はマクロ分析である。主要国の高等教育に対する資金フローの基本的な比較を行った。特にアメリカについては、1980年代以降の、高等教育財政への市場メカニズムの導入について、詳細な分析を行った。その成果の一部は、金子元久「高等教育財政の展望」、『高等教育研究』15(2012年)、pp9-28に発表した。 第二はメゾ分析である。この分野では特に、日本の国立大学法人制度の特質を、各国の類似制度との比較で分析した。その成果は、“Japanese Higher Education and the State in Transition,” in Roger Goodman, Takehiko Kariya and John Taylor eds. Higher Education and the State, 2013, Oxford: Symposium Books, pp.171-198.などにおいて発表した。 第三はミクロレベルにおける、個別大学の資源配分とその効果についての分析である。これについては、前におこなった『全国学生調査』、『大学教員調査』のデータを再分析し、その結果を理論的に解釈することに努めた。その結果は『大学教育の再構築』(玉川大学出版会、近刊)、“Transformation of College Education Backgrounds and Prospects,” Education Forum and International Conference on School Development, Beijing Capital University 16-18 June,2011. Beijing, China、などに発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は三年度にわたって行う計画であり、今年度はその第一年度にあたる。基本的には文献調査あるいはこれまでの研究成果を整理し、それらから得られる知見を理論的に整理し、その成果を中間成果として発表することに努めた。 また特にミクロ分析については、とくに教員の時間配分と、学生の学習時間との関係について、『全国学生調査』のデータを詳細に分析することによって、日本の大学の主要な特質を確認することができた。 さらに以上の知見にもとづいて、諸外国、とくにアメリカとの比較を行うために、専門家との意見の交換を行い、資料の収集をおこなった。 今年度に予定していた外国調査の一部は、他の調査に付随して行うことができたので、本研究費からの旅費支出は当初計画より少なくなった。また本年度に予定していた、大学についての実態調査は、費用の規模の観点から平成25年度に行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
以上の基礎にたって、本年度は以下の作業を行う。 第一に、個別大学における、資源配分の特質を分析するために、全国的なアンケート調査を行う。またそれに基づいて、とくに数大学を選んで、ケーススタディを行う。とくに教育への資源配分の特質を把握することを中心とする。 第二に、大学の財政支出について、アメリカにおけるDelta-Projectによる全国データの収集と分析について、二次分析を行い、日本での結果と比較分析を行う。あわせて、アメリカにおける大学教育のコスト上昇問題について、最近の動向を分析する。 第三に、以上の作業にもとづいて分析結果をまとめるとともに、各国のこの分野での専門家を集めて、国際会議を行う。とくに、①財政支出構造とその効果のミクロ分析、②契約型の財政配分の評価、そして③マクロ財政構造の国際比較、を焦点とする。
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