2013 Fiscal Year Annual Research Report
2次元クーロンポテンシャルによって相互作用する無限粒子系の確率幾何と確率力学
Project/Area Number |
24244010
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
長田 博文 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (20177207)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
種村 秀紀 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40217162)
舟木 直久 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (60112174)
白井 朋之 九州大学, 学内共同利用施設等, 教授 (70302932)
熊谷 隆 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (90234509)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 無限粒子系 / 無限次元確率微分方程式 / ランダム行列 / Airy点過程 / Ginibre点過程 / クーロンポテンシャル / 確率解析 / 対数ポテンシャル |
Research Abstract |
平成24年度に、無限次元確率微分方程式の強解の存在と強一意性を証明するための一般論を思いつき、平成25年度はそれを種村とともに論文の形にまとめることを一つの目標にしたが、2つの長い論文の形で、九分通り完成した状態までこぎつけた。また、長田はこれらの結果について、平成25年12月の確率論シンポジウムを初め、Courant研究所、Bonn大学のセミナー、ベルリン工科大学の研究集会「Random Media」、ライプテヒ大学の日独確率論研究集会などで講演した。更にこれらの結果を中心とした業績に対して、Ito prizeを受賞し、研究集会「36th Conference on Stochastic Processes and their applications」でplenary講演を行った。長田と白井は、Ginibre点過程のPalm特異性のpreprintを作成した。更に長田は、Ginibre点過程のPalm分解と、復活密度公式を発見した。これらは、Ginibre点過程の幾何的rigidityの一端を表すもので、きわめて興味深いが、更にそれを用いて、対応する無限次元確率力学のrigidityを証明した。 舟木はヤング図形の集合上で,空間的な一様性のない保存量から定まるカノニカルなアンサンブルを考え,サイズを大きくする極限の下でのアンサンブル同値を示した。熊谷は2次元uniform spanning tree (UST)上のランダムウォークの収束について考察した。ランダムウォークのスケール列から収束する部分列が取れる事を示し、さらに極限過程の熱核の詳細な評価を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究で、最大の目的であった、Airy点過程に付随する無限次元確率微分方程式の形を究明しすることに成功し、更にそれを解くことができた。これは本来、研究代表者の最近の一連の研究で開発した、無限次元確率微分方程式を解く方法の、重要な例への一つの応用として企画されていた。ところが、幸運にも、当初の目的を達成しただけではなく、本年度の研究で、確率微分方程式の通常の意味の解のみならず、はるかに強く良い解である、強解の一意的存在まで証明することができた。その手法は、このモデルに特化したものではなく、極めて汎用性が高く、無限次元確率微分方程式を、無限個のconsistentな有限次元確率微分方程式に書き換え、さらに平衡分布のtailの一意性の問題に帰着するという、アイデアに基づくものである。 応用として、マルチンゲール問題の一意性、Dirichlet形式の一意性が考えられる。、更に、確率力学の構成という基本的な問題に対して、従来、逆温度βが2の場合は、代数的な方法で無限次元確率力学系の構成がなされていたのだが、それと本研究課題で新たに開発した手法による構成とが一致することを証明された。尚、βが1と4の場合は、従来の、時空間相関関数による代数的な方法では、確率力学は構成されていない。更に平成25年度には、Ginibre点過程の幾何的rigidityについて、いくつかの強い結果を得た。これらを用いて力学的rigidityを証明することに成功した。 これらの結果は、この課題研究の出発時点である平成24年度当初の段階では、想像もしなかったレベルである。
|
Strategy for Future Research Activity |
今まで想定以上に研究が進展し、多くの結果が得られたが、それを論文の形にすることが進んでいない。平成26年度はまず、それを第一に考える。 一方、現時点の結果を進展させれば、例えば、Gaussian 解析関数(整関数)の零点からなる点過程など、様々な応用があると思われる。それについても、時間があれば取組みたい。
|
Research Products
(14 results)